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オーガストが戻ったのは、それから一時間後だった。
「クリュー・ソプラソスは、西の森に住んでいるそうじゃ」
宿の部屋の中、オルテンシア達は車座になってオーガストの話を聞いていた。
「西の森?」
オルテンシアが首を傾げると、オーガストは頷く。
「ご存知の通り、この辺り一帯は森じゃ。特に西の森は昔から聖域とされ、人の手が加わっておらん」
「そんな所に住むなんて、出来るのか?」
そう言ってジオーラが首を傾げる。
「守り人のようなものをしているようじゃと、長老は言っておった」
「てことは、長老さんとクリューさんは知り合いだったの?」
オルテンシアが言うと、オーガストは頷く。
「そのようじゃ。しかし、たまに文通するだけで、最近は会っておらぬという。その手紙というのも、忘れた頃に返事が届くくらい気長なものだそうじゃ。そして、かなり偏屈なので、儂らの話を聞いてくれるかは怪しいとのことじゃった」
オーガストの言葉を聞いて、皆は少し元気がなくなった様子だったが、オーガストはそこで、
「ただ…」
と言葉を続ける。皆が再びオーガストに目を向けると、オーガストは含むように笑った。
「クリューは珍しいものが好きで、エクリプスのことは興味を持っていたらしいぞ」
「じゃあ、私達には会ってくれるんじゃない?」
オルテンシアが目を輝かせると、オーガストは頷いた。
「儂もそう思って、長老に頼んで手紙を書いて貰った。早ければ一ヶ月程で返事が来るだろうとのことじゃった」
オーガストの言葉に、皆が歓声を上げる。未知だと思っていたエクリプスを人間にするという目標が、早くも現実に近づいた心地がする。
「よかったね!エクリプス」
オルテンシアが笑顔を向けると、エクリプスも嬉しそうに笑って「はい」と頷いた。
クリューからの返事が届いたのは、翌日のことだった。
一行が宿で朝食を食べていた頃、宿の主人が、長老がお呼びだと伝えに来て、食後すぐに長老の家に出向けば、早速、返事が来たという話だった。
「いつもは良くて一月、長くて半年で返事が届くのですが、今回はとても早かったので驚きましたよ。きっと、余程エクリプスが気になるのでしょう」
そう言って長老は可笑しそうに笑う。そんな長老は、確かに高齢に見える老婆だったが、とても百歳とは思えないほど、しっかりと明瞭に話していた。
「クリューとは古い仲でして。私がまだ若い時に、この村に自生している珍しいキノコが欲しくてやってきたのが出会いだったんです。それ以来ちょくちょく話すようになったのだけど、逆に私以外の村の者と交流することはなかったから、秘密の友達って感じでした。"友達"という言葉を使うと、クリューは怒るけれど、照れた顔をするから、面白いですよ。素直じゃないのよね」
そう言って長老は悪戯っぽく笑う。その様子から、クリューと長老の関係性が垣間見えて、オルテンシアは自然と笑顔になった。
「それで、手紙にはなんと?」
話が逸れ始めた長老に、オーガストがそれとなく修正をかけると、長老はハッとして口元に手をやった。
「ごめんなさいね。クリューの話が出来る人がいないものだからつい……そうですね。クリューの手紙には、"エクリプスだけになら、会ってやっても良い"とだけ書かれていました」
「エクリプス……だけ?」
オルテンシアが驚くと、長老は申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「そうなんです。先程も話しましたが、本当に人間嫌いが甚だしくて……それに、自分を知られるのもあまり好きでは無いのです。だから、エクリプスだけと言ってきたのではないかと…」
「そうですか……それなら、仕方ないですね…エクリプス、あなただけで…」
「構いません。みんなで行きましょう」
「えっ?」
オルテンシアの言葉を掻き消すように、エクリプスは言った。驚くオルテンシアを見つめては、エクリプスは笑った。
「クリューさんがどのような人物かは存じ上げませんが、皆さんは私の大切な仲間です。共に魔王を倒し、私の人間になりたいという我儘にも付き合ってくれている…だからこそ、全てを見届ける権利があります。誰であろうと、それを邪魔することは許しません」
きっぱりと言い切るエクリプスに、皆は驚きを隠せなかったが、やがて仲間たちは破顔する。
「だよな!ここまで来て、"結末は追って知らせます"なんて展開は、面白くないよな。良いこと言うじゃん!エクリプス」
ジオーラがエクリプスの背中を叩く。
「大切な仲間…ですか…エクリプスさんからそんな言葉が出るなんて、なんか、恥ずかしいですね。私、大して役に立っていないのに…」
ユースティティアが俯くと、エクリプスは目を丸くする。
「そんなことはないですよ。あなたには、いつもピンチを救ってもらっているじゃないですか」
これには、他の皆も同意した。
「そうだよ!ユースティティアさんが居なかったら私、教会でヴィシャスに殺られてたし…」
「そうだ、そうだ!なんなら、魔王の城に援軍を寄越してくれたのも、ユースティティアじゃないか」
「最近は薬作りも板についてきて、儂よりも多くの薬を作れるようになったな」
「そうそう!おかげで、風邪も怪我も怖くないよ」
「…み、皆さん……褒めすぎです…」
皆に褒められ、ユースティティアは顔を真っ赤にして、俯いてしまった。そんな様子に、皆は声を上げて笑う。
「エクリプスは、良い仲間に出会えたようですね。人は、一人では生きては行けませんし、一人でなんでも出来るわけではありません。けれど、それで良いのです。互いに手を取り、自分の持ち味を出し合うことで、一人でいる時には想像すら出来なかった、大いなる力を得ることが出来る……人間は、そういう生き物で、この世界も、そうやって様々な存在が影響し合って回っている……それが理解出来るなら、きっと望む世界を築けることでしょう。あなた方なら、きっとクリューも力を貸してくれると思いますよ」
長老はそう言って微笑んだ。
その後オルテンシア達は、長老にクリューの住処への地図を貰い、カザンを出た。地図と言っても、西の森の入り口へ至るまでのもので、西の森の内部については、長老でも分からなかった。恐らくは使いの者が出迎えに来るはずだと教えられ、一行は地図を頼りに道を行く。カザンを出てすぐは他の町へ行くための整備された道があったものの、途中からは獣道になった。目印になっている木や、花の群生地を確認しながら進むこと半日。休憩を挟みながら、やっと入り口に辿り着いた頃には、日暮れが近くなっていた。
「今日は森に入らず、野宿するか?」
ジオーラが空模様を見ながら言うと、オーガストも頷いた。
「夜の森歩きは危険じゃからな。この辺りで休んだほうが良かろう」
「じゃあ、テントを張ろう!」
オルテンシアはエクリプスと共にテントの用意を始めたが、その時ユースティティアが「あれ?」と声を上げた。
「どうしたの?」
オルテンシアが声を掛けると、「あそこにいるの、何でしょう?」と、ユースティティアは西の森の入り口を指差した。ユースティティアが指す先を見ると、何かが立っているのが見える。
「……え……熊?」
ジオーラが目を丸くする。
それは、熊…だった。人のように二足で立ち、前足でランタンを持っている。大きさは一メートル半といったところだ。その熊が、鼻を引くつかせながら、周りをキョロキョロと見回している。
「えーっと……熊って、ランタン持って立ってたりするもんだっけ?それとも、私の見間違い?」
オルテンシアが言うと、エクリプスが困ったように眉を下げる。
「私にも見えるので、見間違いではないかと……普通の熊は、そんなことはしないですよね…」
と、流石のエクリプスも困惑していた。
「どれ、少し話してみようかの」
そんな中、オーガストはそう言って、熊に向って歩き出した。
「お、おい、オーガスト!なんかヤバイ魔物だったらどうするんだ!」
ジオーラが慌ててオーガストを止めようとするが、オーガストは穏やかに微笑んでは首を横に振った。
「敵意は感じない。それに、何かを探しておるようじゃ」
「それはそうだろうけど…」
「大丈夫じゃ。いつでも逃げられるように、一定の距離を置くから」
オーガストは熊から百メートル程の距離まで近づくと、そこで止まった。ずっと辺りをキョロキョロと見ていた熊の視線が、オーガストを見つめて止まる。一行は固唾を飲んでその状況を眺めていた。特にジオーラは、いつでも助けに行けるように、剣の柄に手を掛けている。
「お主、クリューの使いの者か?」
オーガストが話しかけると、熊はパタパタと耳を動かし、鼻をひくつかせた。
(ああ、なるほど!もしかして、キエルさんの変身魔法みたいなものかも!)
オルテンシアがそう思っていると、熊は口を開け、話し出した。
「そうですが、あなたが、エクリプスさんですか?お手紙の様子から、すぐにでも来るかもしれないと見にきたんですけど…」
幼い子どものような、少し高い声だ。
「エクリプスは私です」
エクリプスが歩み出ると、熊は目をパチクリしては、小首を傾げた。
「お一人で来られた訳ではないんですね…」
「はい。出来れば、仲間も一緒にクリュー様にお目通りしたいのですが、難しいでしょうか?」
エクリプスが問うと、熊は困ったように頭をポリポリと掻いた。
「…なんか、かわいいな…」
ジオーラがポツリと呟き、オルテンシアもユースティティアも頷く。テディベアが動いたらこんな感じだろうかと、オルテンシアは思っていた。
「うーん……クリュー様、怒るかな……うーん…でも、来ちゃったし……ま、いっか!」
熊はパッと顔上げ、頷いた。
「たまには、お客さんがいっぱいのほうが楽しいだろうから、大丈夫ってことにします。みんなで行きましょう」
熊はそう言って、一行を手招きする。その仕草の愛らしさに、一行の表情が和む。互いに目配せし合っては熊に近づいた。
「えーと、一、二、三……みんなで五人ですね?じゃあ、家まで飛ぶので、みんなで輪になって、手を繋いで下さい」
熊の指示に従って輪になり、手を繋ぐ。熊はそうやって出来た輪の中心にランタンを置いて、自身も輪に加わった。オーガストとエクリプスの間に入り、二人と手を繋ぐ。
「熊と手を繋ぐなんて、初めてです……」
エクリプスが感慨深く繋がれた手を見ていると、オーガストも頷いた。
「儂もじゃよ」
と、こちらはなんだか楽しそうだ。
「え、この熊さん、変身魔法とかじゃないの?」
オルテンシアが問うと、熊は鼻をひくつかせた。
「僕はれっきとした熊ですよ。まあ、言葉を話して、料理も出来て、魔法を使える、ちょっと珍しい熊ですが」
と、なんだか得意そうに言った。
「へぇ~!そいつはすごいな!」
ジオーラが素直に褒めると、熊は嬉しいのか、先程より少し胸を張った。
「えーっと、では、気を取り直して……皆さん、目を閉じて、心を落ち着けて下さい」
熊はそう言って、皆が目を閉じたのを確認すると、静かに優しく、けれどもよく通る声で歌を歌い始めた。
深い、深い森の中。風がそよいで花薫る……
優しい風は我らが友。悪いものは吹き飛ばし、良いものは引き寄せる……
風よ、風よ、優しい風よ。今宵も休む時がやってきた。我らと共に、家へ帰ろう。我らを家まで連れて行っておくれ……
熊がゆったりとしたリズムでそう歌うと、ふわりと体が浮く感覚がして、オルテンシアが驚いて目を開ければ、目の前には、木で出来た小さな家が建っていた。
「どうやら、ワープしたようですね」
驚いていると、隣でエクリプスが言った。
「ワープ?」
「恐らく、今の歌は魔法の呪文だったのでしょう」
「へぇ~、すごい!」
「儂も初めて聞く類の呪文じゃった」
一行の様子を見て、熊は嬉しそうに鼻を鳴らす。
「クリュー様直伝の魔法ですよ。他の人は使ってません」
「ほう。それはますます面白いのう」
オーガストは嬉しそうに髭を撫でた。
「そうでしょ?クリュー様は凄いんですよ!……今、呼んできますね」
そう言って熊は上機嫌に家の中に入っていった。
「熊さん。クリューさんのことが大好きなんですね」
ユースティティアが言うと、ジオーラも頷く。
「そうだな。あんな可愛い熊に好かれてるんだ。クリューは悪い奴じゃない気がする。きっといい収穫があるな」
少しして、家の扉が開いて、熊がヒョコッと顔を覗かせる。
「お待たせしました。どうぞ、中へ」
一行は緊張しながら家の中へ入る。
家具は全て木で統一されていて、室内は木の香りで満ちている。何かの動物の毛で出来たラグや、毛糸で編まれたクッションなどが置かれ、全体的に落ち着いた雰囲気だ。熊は一行をラグの上に座るように示し、一度家の奥に消えた。少ししてお盆を手に戻ってくると、これまた木で出来たマグカップを一人一人に渡してくれる。
「庭で採れたミントを使ったミントティーです。良ければ、パウンドケーキもどうぞ」
そう言って笑う。パウンドケーキには、ドライフルーツやきのみが入っている。
そのすっかりおとぎ話の世界のような状況に、オルテンシアは頬が緩みっぱなしだった。それはジオーラも同じようで、「あたしはどうも、こういうのに弱いんだよなぁ〜」と困ったように笑っていた。
一行はしばし、何をしに来たのかも忘れて、お茶とケーキを楽しんだ。
「とても良い香りですね」
飲食をしないエクリプスは、それを楽しそうに眺めている。
「とってもおいしいよ!人間になったら、一緒に色んなものを食べようね」
「はい」
オルテンシアが笑いかけると、エクリプスも笑って頷いた。
「おいおい!これは何の騒ぎだ?」
すると突然声がして、一行は驚いて後ろを振り返った。一行の後ろ、家の奥から人がやってくる所だった。肩まである緑の髪は寝癖の為かボサボサ、髪色と似た翡翠色の瞳は、じっとりと一行を睨見つける。色白で細身の女性だった。年齢は二十から三十歳の間に見える。
「あ、クリュー様。おはようございます」
熊がペコリとお辞儀する。
(え、この人が?)
長老の友人だと言うから、もっと高齢な人物を想像していたオルテンシアは、驚いて理解が追いつかない。
「"おはようございます"じゃないっ!誰がこんな大人数を家に入れろと言った?おまけに茶菓子まで出して…」
クリューに怒られても、熊は萎縮するどころか、不思議そうに首を傾げた。
「エクリプスさんは呼んだでしょ?それに、エクリプスさんはお友達と一緒がいいって言ってたので、連れて来たんです。せっかくお茶やケーキを作ったのに、クリュー様は寝ているし、エクリプスさんは食べられないし、もったいないなぁーって思っていたから、ちょうど良かったでしょ?」
「なにが、ちょうどいいんだ!」
クリューはツカツカと熊に歩み寄ると、両手で熊の頬を引っ張って伸ばしたり戻したりする。
「いひゃい、いひゃい」
熊は堪らず悲鳴を上げるが、傍から見ると、なんだか微笑ましい光景だった。
「すみません。私が、我儘を言ったのです。熊さんをあまり責めないで下さい」
エクリプスが立ち上がってとりなすと、クリューは相変わらず不機嫌な様子ながら、熊から手を離した。
「…もう……ひどいなぁ〜。ほっぺたが戻らなかったらどうするんですか」
熊は前足で頬を撫でながら、ブツブツ言っていた。
「お前がエクリプスか……なるほど…」
クリューは上から下までエクリプスを眺めると、一人で納得していた。
「それだけの能力を持ちながら、あえて下等な人間なんぞになろうとする理由はなんだ?勿体ない…」
「私が、人間を好きだからです」
「……理解出来んな。お前、その気になったら魔王みたいなことが出来るだろ?不老不死だし、食事も睡眠もいらないんだろ?無敵じゃないか」
「それは…」
「それが、嫌なんですよ!」
オルテンシアは黙っていられなくて、思わずエクリプスの言葉を遮った。
クリューはオルテンシアを見て眉を上げる。
「エクリプスのマスターか……お前こそ、エクリプスを使って好き勝手出来るだろ。人間はそういうの好きだよな。それなのに、こんな便利な道具を手放せるのか?」
「エクリプスは魔王を倒しました。だからもう、道具である必要がないんです。エクリプスが人間になりたいなら、私は"友人"として、協力するまでです」
「ふぅ~ん」
クリューはそう言ってオルテンシアの目を見つめる。まるで瞳の奥に何かあるのではないかというようにじっくりと。オルテンシアは堪らず目を逸らしてしまいたくなったが、ここで逸らしては何かに負けるような気がして、オルテンシアもクリューの瞳を見つめ続けた。そのまま数秒の時が流れ、やがてクリューの方が目を逸らした。
「ま、口ではなんとでも言えるわな」
そう言っては気怠そうに息を吐いた。
「エクリプスを人間にする方法には心当たりがある」
クリューが言うと、皆身を乗り出してクリューに注目した。
「ただ、それには材料が必要だ。それも、なかなか手に入らない貴重な物ばかりだが、お前がエクリプスを人間にしたいっていう気持ちに偽りがないのなら、取ってこられるね?」
「はい!」
思わず返事をしてしまってから、オルテンシアは内心しまったと後悔した。なぜなら、クリューの顔が、どこか含みがあるように笑ったからだ。
「言ったな?じゃあ、そこのモグにメモを持たせるから、お前は仲間を連れて取りに行ってこい。ただし、エクリプスはここに置いていけよ」
クリューは熊を指差しながら言う。どうやら"モグ"というのが、熊の名前らしい。
「口を挟んで悪いが、どうしてエクリプスは置いていかなくちゃならないんだ?」
ジオーラが言うと、クリューは更に嫌そうな顔をしてジオーラを見た。フン!と鼻を鳴らしてから、
「もともと、私が用があるのはエクリプスだけだ。エクリプスと話がしたかったのだから、人間にする為の方法を教える交換条件だな。嫌なら、このまま帰ってもらっても構わない。どうする?私はどっちでも良いが?」
クリューは鼻で笑っては、手近にあった皿からパウンドケーキを摘んで食べた。
「ちょっとクリュー様!意地悪を言っちゃ、かわいそうですよ」
モグがそう言ってクリューの服を掴む。
「意地悪なもんか。こいつらが勝手にズカズカ入って来たんだ。当然だと思うが?」
「それは……」
モグは口籠る。
その間に、オルテンシア達は互いの顔を見ていた。
「どうする?」
ジオーラが問うと、オルテンシアが口を開く。
「いいよ。エクリプスは不安かもしれないけど、私達だけで材料を取りに行こう。クリューさんだって、言う通りにすれば、悪いようにはしないと思う」
「し、しかし……」
エクリプスは心配そうだったが、オルテンシアは笑って見せる。
「あなたを使っていない私は、たいした能力のない子どもだけど、物を取りに行く事くらいは出来るよ。みんなも協力してくれれば、だけど…」
「もちろん、協力するよ」
ジオーラが言い、ユースティティアもオーガストも頷いた。
「恐らくは簡単な物ではないじゃろうが、この辺りのものには詳しい自信がある。心配することはあるまいよ」
オーガストは穏やかに言っては、安心させるようにエクリプスの肩に手を載せる。
「……分かりました。私事に巻き込んでおいて、皆さんに託さなくてはならないのは歯痒いですが、よろしくお願いします」
エクリプスはそう言っては頭を下げる。
「うん!任せておいて!」
「はい」
明るく笑うオルテンシアを見て、エクリプスは安心したように笑った。