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6話



(何で私がこんな思いしないといけないの)


少し寝て、落ち着いていた怒りの炎が再び沸々と燃え上がる。彼らのことを考える時間すら無駄と分かってるのに、引きずってはいけないのに。直ぐには割り切れないのだ。


「…そうだ、由美に報告しないと」


由美のトーク欄をタップし、今日会ったことを簡潔に文字にまとめる送る。出来るだけ感情を交えず、ただ事実だけを書き出した。


すぐには返信は来ないだろう、と陽毬は化粧を落とすため、さっぱりするため浴室へと向かった。




温かいシャワーを浴びて身も心も少しスッキリし、タオルで濡れた頭を拭きながら部屋に戻る。ルームウェアに着替えてテーブルに置いたスマホを手に取ると由美からメッセージが届いている。


かなりの長文が送られてきて、その大部分が龍司と佳奈に対する怒りで占められている。何なら陽毬より彼らに怒ってくれていた。


『付き合いが長い友達を裏切ってたことも、彼女の友人に手を出すのも理解出来ない。なのに陽毬が悪いみたいな言い方するとか、どんな思考回路してるの?』


(あ、やっぱり私がおかしいんじゃないんだ)


由美の抱く嫌悪感が伝わってくる文章に自分の感覚がおかしくないと知り、ホッとする。


『そんな常識無い人達とは連絡断った方がいいよ、今すぐ。合鍵回収して、それが難しいなら鍵を変えてもらいなよ』


合鍵、陽毬の持ってたやつは返したが向こうに渡した鍵は回収してない。合鍵を返してもらいに龍司にまた会うのは嫌だ。だが、万が一部屋に押しかけられても面倒だ。由美の助言通り、近いうちに鍵を変えよう。


『その友達って前会ったあるよね、クールな見た目で溌剌な印象を受けたけど、そんな陰湿なことするなんて…人は見かけによらないんだね。同じ会社なんだよね、絡まれないよう気をつけて』


『絡むって、龍司とはきっぱり別れたしもう向こうだって関わりたく無いでしょ』


『油断は駄目、人の恋人取るような人はね、その人が不憫で可哀想な目に遭うほど優越感が満たされるの。まだ終わらないと思うから、注意して』


怖、と文章を読む陽毬は息を呑んだ。友人だった時の佳奈と恋人だった時の龍司はさっぱりとした性格で、良く言えばおおらか、悪く言えば大雑把。そんな執念深いともとれる行動に出るとは思えない。彼らのせいで陽毬の自尊心とプライドは傷付いているのに、まだ何か仕掛けると言うのか。


だが交友関係が広く、同じ24なのに人生経験の豊富な由美の言うことだ。信憑性がある、と忠告に耳を傾けることにした。


由美の忠告が杞憂では無かった、と知るのは週明けのこと。


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