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45話



佳奈は少し潤んだ目で陽毬を鋭い目つきで射抜く。





「私は振られたのに、惨めなはずのあんたにはイケメンの彼氏が出来て…何でよ!」




そんな八つ当たり気味に文句をぶつけられても困る、と眉を下げた。嘗ては佳奈に惨めな思いをさせられ恨みはしたが、今は立場が完全に逆転してしまっていた。





陽毬は大きく溜息を吐き、燻っていた疑問を口にする。




「…この際だから聞くけど、佳奈は私のこと嫌いなの?」




自分への悪感情がなければ、こんな真似をしていないだろう。今まで彼女と過ごした時間すら嘘だったと認めたくなかったから、無意識に目を逸らし続けていた。




しかし、今は佳奈に対する友情がほぼ薄れてしまっているから真実を知ったとしても、ショックはそれほど受けないと思う。恐らく彼女との溝は決して埋まらない。これを逃せば聞く機会はないだろう。




佳奈は真正面から聞かれるとは思わなかったのか目を見開いた。が、彼女も陽毬と同じで以前のように戻らないと分かっている。だからか、あっさりと口を開いた。




「…打算で近づいたけど別に嫌いじゃなかった。でも、自分より地味で鈍臭いあんたを引き立て役みたいには扱ってた。なのに、あんた肝心な場面ではやけに要領良くて受験も就職も第一希望のところに受かって…私は失敗したのに」




佳奈は陽毬より偏差値の高い大学に通っていたが第一志望ではなかった。就職先も、大手の印刷会社は落ちたと笑いながら話していたが。彼女の抱えていた劣等感はずっと膨らみ続けていたようだ。




「私は付き合っても長く続いたことないのに、陽毬は長続きしてて羨ましかったし無邪気にダブルデートに誘うあんたにどれだけムカついたか、鈍いから気づかなかったよね。だから出来心で龍司さんに連絡先渡したの、あの人ベタ惚れぽかったから無駄だと思ってたけど」




佳奈はきっかけを与えはしたが、龍司が陽毬のことを相談したいという名目で連絡を取らなければ。いや、佳奈はその場で断ることも出来た。その選択をしなかった時点で、陽毬との道は別たれたのだ。




「…そう、分かったよ。これで用事は済んだ?帰って良い?」




今度は引き止められなかった。陽毬を見る佳奈の目には後悔が色濃く滲んでいる気がしたが、声はかけない。龍司と別れたからといってもう以前の関係には戻れない。




陽毬は罵倒も慰めの言葉もかけないことで、佳奈に対しての決別の意を示した。佳奈も何も言わず、ただ優位に立っていたと思ってた相手と立場が逆転した事実に打ちひしがれていた。




(…朔夜の目的ってこれだったのかな)




敢えて目立つリスクを負ってまで陽毬を会社まで迎えに来たのは、噂が佳奈の耳に入ることを見越して。友人の恋人を寝取るような人間は総じてプライドが高く、寝取られた側を見下している。




自分より下にいるはずの相手が、周囲から羨ましがられる恋人が出来て幸せそうに過ごしてる姿。




対して自分は友人との縁を切ってまで奪った恋人に別れを告げられた。あの日の龍司の言葉を聞いていた朔夜は、彼が遅かれ早かれ佳奈に別れを告げると踏んでいた。陽毬が彼らに復讐しようなんて気が更々なかったから、朔夜がほんのささやかな復讐を企んだ。




(聞いたところで答えないよねぇ)




陽毬を害するものに、少々苛烈になる幼馴染…今は彼氏に思いを馳せながら部署に戻って行った。






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