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34話




週明けの昼休み、いつものように遥香と昼食を取るために準備をしている。今日は遥香は弁当を持ってこなかったので、外で食べることにした。




向かった先は会社近くの定食屋。リーズナブルな値段でボリュームもそこそこなので、サラリーマンに人気がある。時間が時間なので混んでいたが、回転が速いため早くに席に案内された。




席に通された遥香はメニューを開く前に、こう聞いてきた。




「そういえば実家どうだった?」




「寒かった、雪積もってたし」




「良いなー、うちの地元雪あんまり降らないからさー」




彼女の言う地元、とは高校時代を過ごし両親が現在も住んでいる静岡だ。雪国育ちからしたら雪は降ってほしくないものだが、馴染みのない人達からしたら羨ましがられるものらしい。




寒いし歩き辛いし、滑って転ぶと暫く身体が痛い。子供の頃は喜んでいた白い雪も、今は面倒なものとしか思えない。




「そんな良いもんじゃないよー」




「そうなの?…あ、そういえば幼馴染どうよ?」




「ん?告白されたよ」




遥香は手に持っていたメニューをテーブルに落とした。口をあんぐりと開けて、目も見開き驚いているのは明白だ。




「ん?ん?ん?何急展開すぎる詳しく教えて告白って何」




困惑しきっている遥香は矢継ぎに言葉を重ねた。興味津々で、やや前のめりだ。


陽毬は年末に朔夜と帰省したことから実家で過ごしたことを話した。途中の朔夜がしたこと、話したことを説明すると「あっま…」とゲンナリしていたが何とか聞き終えた後。




「幼馴染…戸塚さんだっけ?決心した後の行動力がえげつない。今まで何もしなかったのは何だったのって感じ」




遥香も暗に朔夜をヘタレだと揶揄していた。もう彼がヘタレだという印象が付いてしまった。




「陽毬は戸塚さんのこと今のところは好きじゃないんでしょ?」




「うん」




「でも、いくら幼馴染とはいえ全く気持ちが無かったら告白された時点で突っぱねてるんじゃない?チャンスを上げた時点で多少は好意を抱いてる、と私は思うよ?」




「…やっぱりそうなのかな」




「あくまで私の考え、だからね。引き摺られないで、ちゃんと自分で考えなよ」




そう言うと遥香は改めてメニューを開く。話は一旦終わったとばかりに陽毬も何を食べようか、とメニューを眺めながら考える。




店員を呼び、それぞれ日替わり定食を頼むと遥香が再び話題を戻してきた。




「戸塚さんからは連絡あるの?」




「朔…夜が帰ってから1日に1回はメッセージが届くよ」




今までは忘れた頃に送られてきたので、朔夜のトーク欄に頻繁にメッセージが送られてくるのに慣れてなくて変な感じがする。




「まめだねー。普通男の人面倒臭がりそうだけど、戸塚さん陽毬に構いたくて仕方ないんだ、愛だね」




キメ顔で恥ずかしいことを言う遥香にこっちが恥ずかしくなる。




「やめてよ」




「事実でしょ?その感じだと休日に遊びに誘いそうだよね」




「…何で分かるの」




早速朔夜からは今週の日曜、ドライブに誘われたばかりだ。予定もなかったので断らなかったが。




「告った相手落としたいのにデートに誘わない馬鹿はいないでしょ?それに戸塚さんタカナシ勤務だっけ。うちの最寄りからそれほど離れてないし、その気になれば仕事帰りに誘えるよね」




「そこまで」




「するんじゃないかなー。押されまくってるうちに陽毬絆されそう」




「…有り得そうで怖い」




「怖い?なんで?」




「裏切られて傷ついてる時に優しくされたから好きになったら、利用したみたいにならない?そもそも純粋に好きになったのか分からないよ」




柄にもなく難しく考えている陽毬に遥香は顔を顰めて、少し怒ったように声を上げた。




「考え過ぎ!良いじゃん絆されても。向こうもそれ狙ってるだろうし、戸塚さんは陽毬に利用されても怒らないでしょ。聞くだけでも陽毬のことを本当に好きなの伝わるもん。熟成された恋心の重さだわ」




「…」




「そこで顔赤くしないでよ、こっちも照れる。やっぱ戸塚さんのことちょっとは好きだよね」




「好き…では」




「頑なだね。そんなスペック高くて自分のこと大事にしてくれそうな彼氏出来たって奴らが知ったら、地団駄踏んで悔しがりそうなのに」




「奴ら」




「元彼と宮原佳奈のことよ」




「…あ」




「え、もしかして忘れてた?マジ?」




「この1週間、朔夜のことばっか考えてたから…」




無意識のうちに頭の片隅に追いやっていた。信じられない、という顔をする遥香に陽毬は思わず縮こまる。が、ブッ!と吹き出し腹を抱えて笑い出す。




「あっはは!傑作だわ。向こうからしたらいつまでも陽毬に自分達のこと引きずってて欲しいだろうに、忘れられてるんだから!」




「笑いすぎ」




「だって面白いんだもん。あー、佳奈に教えてあげたい」




「やめてよ、絶対突っかかってくる」




「分かってる、余計なことはしないよ…佳奈も今のところは大人しいし、ずっと陽毬に構うわけないとは思うけどね。元彼からは連絡来ない?」




「うん、電話も着信拒否にしたしメッセージもブロックして鍵も変えた」




「そっか、でも油断した頃に来るかもしれないから気をつけて。佳奈に嫌気が差して陽毬に戻ってこようとするかもだから」




今更戻って来てもビンタして追い返してやる、と陽毬は企んでいる。




「分かってるよ」




とは言ったものの、実はこっちに戻ってすぐマンション前を彷徨く怪しい男を目撃していた。龍司である確証はないが…伝え聞く限り佳奈と上手いことやってるらしいが…変なことが起きなければ良いな、と陽毬は祈っていた。




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