32話
2日後の5日、お正月休みが明けた仕事始め。年始は忙しく、朝から次々と雑務が持ち込まれてくる。総務部総出で処理にあたり、昼食ですら昼休みに取ることが出来ずやっとありつけたのが15時。
午後も忙しさは変わらず、備品のあれが足りない、あの郵便物が届いてない、あの書類を纏めて欲しい、と一息着く暇もなく、漸く片付いたのが20時近く。年明け早々の忙しさに、皆がグッタリしている。
陽毬も例外ではない。が、今日はどうしてもやらなければいけないことがある、と隣…中川の席に視線を移す。
中川には年明け前の返事をするつもりだ。そして前もって今日の終業後、話があるから少し付き合って欲しいとメッセージを送り、彼からも「分かりました」と返信をもらっている。
こんなに疲れてる時にするべきではないか、とも思ったが今更予定を変更するわけにもいかず。それにこういうことを先延ばしにすると、もっと言い出し辛くなる。覚悟を決めた陽毬は首を回し、肩を伸ばして凝り固まった身体を気休めでほぐす。スマホを操作すると、中川に「エントランスで待ってる」とメッセージを送る。彼は今席を外しているので、戻ってきたらメッセージを確認するだろう。陽毬はひと足先にカバンに荷物を持って部署を出た。
エントランスのソファーで待っていると、小走りで中川がやって来た。
「すみません、待たせてしまって」
「こちらこそ、呼び出してごめんなさい」
ソファーから立ち上がった陽毬はチラリと周囲を確認する。時間が時間なので人の出入りはない。が、話の内容が内容なのでここでするのは気が引ける。万が一誰か通りかかり、中川と陽毬のことが面白おかしく吹聴されても困る。
「中川くん、ここだとちょっと…時間があるなら場所を移して話したいんだけど」
中川も会社の人間に聞かれる恐れがある場所で話すのは不安があったらしく、陽毬の提案に笑顔で頷いてくれた。
入ったのは会社から少し離れたところにあるカフェ。お互いコーヒーを頼み、窓側のテーブル席に座る。中川は陽毬の話の内容、それに対する陽毬の返事を察してるのか浮かない顔だ。
それでも陽毬はちゃんと彼に伝えないといけないのだ。コーヒーを一口飲み、マグカップを触りながら、少し冷えた指先を温める。言い出すタイミングを見計らっていると、「あの」と切り出される。
「この間の話、ですよね」
「うん、まずはあんな形で帰ってしまってごめんなさい。あの場で返事をするつもりだったのに、待たせてしまって」
メッセージでも謝ったが、直接謝る必要もあると思った。
「いえ、俺のほうこそ本当にすみませんでした。藤原さんが困ってるの分かってたのに、あんな強引な真似して。酔ってたからって言い訳はしません」
中川は深々と頭を下げる。本当に心から謝罪してると陽毬は受け取った。陽毬としては怒ってはいない。寧ろこちらが謝らなければいけない立場だった。互いに頭を下げあって、収拾が付かなくなりそうな予感がする。
「顔を上げて中川くん」
陽毬が促すと、ゆっくりと中川が顔を上げる。




