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28話



自室に戻って、特に何をするでもなくのんびりとベッドでゴロゴロしているとドアがノックされ、酒が抜けきれてないのか少し顔色が悪い兄が顔を出す。




「お兄ちゃん、どうしたの」




「ちょっとお前に話があってな」




「話?」




さっきもリビングで顔を合わせていたのに、態々部屋にまで来たということは両親、そして朔夜に聞かれたくない話。明るい話ではないの明白だが、陽毬も兄には聞きたいことがあったので丁度良かった。




朔夜と同じクッションに座ってもらった兄は単刀直入に訊ねた。




「お前朔夜に告られた?」




「なっ!」




「あ?マジか?あのヘタレが、やる時はやるんだな」




昨夜のことを思い出し、顔を赤くしながらわなわなと震える陽毬。兄はケラケラと笑いながら感心したように呟く。兄は普段はぼんやりしていて、マイペースな性格だ。しかし変なところで鋭い。今回も遺憾無く、無駄に鋭い感の良さを発揮していた。あっさりと言い当てられた陽毬は狼狽えるしかない。




「な、なんで」




「お前が彼氏と別れたって知ったアイツが、おとなしくしてるとも思えなかったからな。鎌かけてみたんだが、案の定」




確証があったわけでない。まんまと引っかかった自分が情けなく肩を落とした。




「お兄ちゃん、知ってたの?朔兄が、その」




「知ってたぞ?アイツがずーーっと彼氏が出来ても、しつこくお前のこと好きなこと」




「知らなかったの私だけ…」




「だな、まあアイツも悟られないよう隠してたからお前が気づかないのも無理はない」




ずっと朔夜の気持ちに気づかなかった陽毬を兄は励ます。が、陽毬の表情は固いままだ。




「…私朔兄のこと傷つけてたのかな」




朔夜には色んなことを話した。彼氏が出来たことも無邪気に報告し喧嘩した、うまくいかないと相談したこともあった。デリカシーに欠けた行為だ。知らなかったでは済まされないと思う。




「何言ってんだ。気持ち伝える勇気もない、そのくせいつまでも引きずる道選んだのは朔夜だ。陽毬に責任はない」




だが落ち込む陽毬の言葉を兄は一蹴する。




「ま、鈍いのは否定しないが」




兄の言葉に下降していた気持ちが上を向き始めたのに、最後に落としてくる。肩を持つなら最後まで責任を持って欲しい、と切実に願う。陽毬はジトっとした目で兄を見る。




「んな目で見るなよ、お兄ちゃんが色々相談に乗ってやろうと思ってるのに」




「…相談?」




ちゃんと相談に乗ってくれるのか、と胡乱な目で見上げた。




「…あからさまに嫌そうな顔するな。ふざけたりしないから安心しろよ」




「…」




「お前のことだから悶々としてるんだろ?兄貴分としてしか見てなかった奴に告られたんだ、無理もない」




「…うん。どうすればいいのかな、って」




眠れずにほぼ夜通し考えていたことだ。朔夜の熱意を前につい頷いてしまったところがある。勿論いい加減な形で承諾したわけではないが。それでも、本当に自分の選択が間違ってなかったのか不安になるのだ。




「どうすれば、ねぇ…取り敢えず朔夜と交流してみろよ」




「交流…」




「朔夜のこと異性として見れるか、好きになれるかなんてすぐには分からないだろ?暫くアイツと過ごしてみて、どうしても無理ならキッパリ断ればいい。しつこいようなら俺から釘刺してやるよ」




兄の言葉を受けて、陽毬は一理ある、と思った。1人でうだうだ悩んでいても結論は出ない。告白されたことで朔夜に対する「意識」を変えざるを得なくなった。その状態で彼と交流すれば、自分の納得のいく答えを出せる。真剣に気持ちを伝えてくれた朔夜に対して、生半可な気持ちで向き合いたくない。陽毬は俯いていた顔をゆっくり上げた。




「そうだね、そうしてみるよ」




「まあ、なんだかんだ言ってお前絆されると思うけどな」




よし、と決意した陽毬の勢いを削ぐことを兄は言い出した。




「陽毬、片思い拗らせまくった挙句吹っ切れた男のしつこさ、知らないだろ」




脳裏に「覚悟しろ」と不敵に笑った朔夜の姿が蘇る。兄の言葉に背筋はゾクッとした。何をしてくるのか、想像して恐ろしくなる。




「俺が今の、あ、もう元彼か。元彼とこのまま行けば結婚するかもなーって煽ったせいかもな。その未来が無くなって、反動が来てるんだろう。なりふり構わず陽毬を落としにかかるだろうなー、まあ、せいぜい頑張れ!」




グッと親指を立てて、他人事な態度を取る兄に陽毬はイラッとして思い切り肩を叩いた。いって、と兄は肩をさする。




「何で煽るの?」




「だって、アイツ本当に諦め悪いからさ。色んな女と付き合ってた癖にいつまでも妹のこと引きずられてるんだ、それくらいしたくなるだろ」




朔夜の切羽詰まった様子には兄にも原因の一端があったらしい。兄は朔夜と、とても仲が良いが彼の女性関係について思うところがあったのだ。




「そろそろアイツ来そうだから、お邪魔虫は退散するわ」




そさくさと兄は部屋を出て行こうとするので引き留めた。




「待って、朔兄が何」




「何って、告った奴がすることなんざ一つだけだろ」




遠回しな言い方をした兄はさっさと部屋を出て行った。



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