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22話



自分を呼ぶ声が聞こえ、ゆっくりと目を覚ました陽毬は朔夜に寄りかかって眠っていた状況に瞠目し、急いで離れた。




「ご、ごめん」




「謝らなくていい」




「でも涎とか化粧とか付いてない?」




陽毬は男物の服について詳しくないが、彼の着ている服が安くないのは分かる。汚していたら、と思うとゾッとした。朔夜はただでさえ白い肌が更に白くなる陽毬に「汚れてねぇから」と安心させるように陽毬が顔を擦り付けていた箇所を見せる。目視した限り汚れてない。




「良かったー」




「大袈裟だな」




漸くホッとした陽毬は下ろしてもらったキャリーバッグを引いてホームへと降りた。




新幹線改札を抜け、在来線の改札口へと向かい掲示板を見て乗れそうな電車を調べる。




電車に乗り揺られること30分、陽毬達は自宅最寄駅に到着した。電車の窓からも見ていたが、駅から降りると目の前に広がるのは一面の銀世界。




「うわー、積もってる」




そして吹き込む冷たい風に陽毬は身体をブルブルと震わせる。




「さっむー」




「確かに寒いな」




そう言いながらもあまり寒そうに見えない。陽毬と同じコートとマフラーを装備してるのに平然としてる。




「いいな、寒さに強くて」




「お前が弱すぎなんだろ」




「朔兄が強すぎなの、本当に寒いんだから」




ハー、と少し赤くなった両手に息を吹きかける。一瞬だけ暖かい、と思ってると横から伸びていた腕に手を取られた。




「あー、確かに冷たいな」




突然のことに陽毬は固まった。今、朔夜に左手を握られている。




「…何?」




「何って、寒い寒い言うからどれだけ冷たいのか気になったんだよ、お前冷え性?」




「…少し」




「ふーん、手袋しろよ」




「わ、忘れた」




朔夜が「お前さぁ…」と少し呆れてるのが分かる。寒がりなのに手袋忘れたのは馬鹿だと思う、自分でも。




「…そんなに寒いなら手繋いでやろうか」




「…?」




「少しは暖かいだろ」




彼の手は陽毬よりは暖かい。繋いだらより暖かくなるだろう、けど。




「やだよ、恥ずかしい。子供じゃないんだけど」




考えるより先に言葉が口から飛び出していた。だが、前なら即断っていたのに一瞬悩んだ。結局羞恥が勝って断ったけれど。




朔夜も冗談で言ったのだ、陽毬が断ったからすぐ手を離す。




そう思っていたのに。朔夜は握った手を離さない。寧ろ握られた手に力が籠る。




「あの、」




「俺寒いから、このまま繋いでて」




「へ」




思いもよらぬ返答に呆気に取られる陽毬に「行くぞ」と声をかけて、雪が溶けかけて少し歩きづらい道をズンズンとと進んで行く。




寒さに強いはずの朔夜の行動に陽毬は戸惑いを隠せず、どういうことだ、と視線で訴える。田舎だから、通行人にすれ違うことは少ないがそれでも男女が手を繋いでいるとチラ見される。それが居た堪れない。




しかし朔夜は全く気にも留めない。逃がさないと言わんばかりに手を握られている。陽毬より大きくて、少しだけ暖かいゴツゴツと骨ばった手。




陽毬が本気で嫌がれば彼は無理強いはしない。なんなら無理矢理手を振り解くことも出来るのに。




陽毬は結局、自宅まで約10分の道のりの間ずっと手を繋いでいた。



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