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15話



時間にして数分ほどだったはずだが、もっと長い時間のように陽毬は感じていた。朔夜と手を繋ぐなんて、小学生の頃にはあったかもしれない。が、子供の時と大人では同じ行為でも、感じ方が全く違う。




(何でこんなことに)




朔夜に引っ張られながら歩く陽毬は、何故こんなことになってるのか、そもそも何故朔夜がここにいるのか。聞きたいことが山ほどあるのに聞くタイミングを完全は失い、繁華街の喧騒の中を歩いている。




朔夜が人通りの少ない小道に入った時、やっと繋がれていた手が解放された。




やっと陽毬は肩の力を抜けた気がする。




朔夜はゆっくりと陽毬を見下ろすと、バツが悪そうに頬をかく。




「あー、悪かったな。あんな真似して」




「ううん、大丈夫。寧ろありがとう。どうすれば良いか困ってたんだ」




息を吐いた陽毬は慣れない緊張から解放されてホッとしていた。久しぶりに会ったのに、空白を感じさせない彼とのやり取りは陽毬を落ち着かせる。




「というか、なんでここにいるの?飲み会は?」




「この近くにあるバルを貸し切ってやってたんだ。さっき一次会が終わって、二次会に出ないで帰ろうとしたんだが、見覚えのある奴が男に絡まれてたから行ってみたら…久々に慌てた」




なんという偶然。朔夜は陽毬の状況を確認するとすぐさま駆け寄ってきてくれた。実際は絡まれたという表現が合っているのか微妙なところだが、正直なところあの場から連れ出してくれて助かった。




「よく分かったね、私みたいな髪型の人たくさんいるのに」




陽毬はナチュラルブラウンのセミロングを一つにまとめ、サイドの髪を垂らすというありふれた髪型だ。あの人通りの多さの中、よく陽毬だと分かったと感心してしまう。




「分かるに決まってるだろ、何年一緒にいると思ってるんだ」




朔夜は何当たり前のことを、という風に言ってのける。流石幼馴染と言うべきだろうか。




「そうだね、私も朔兄なら分かるかも。無駄に大きいし」




「無駄には余計だ…軽口叩く余裕があるなら大丈夫そうだな。それで、さっきの奴と何があったんだ」





朔夜はさっきのやりとりについて訊ねてくる。結果的に連れ出してもらったのに何も話さないのも失礼だと、陽毬は中川との間に起こった出来事を話すことにした。




「さっきの、中川くんが酔った私を心配して途中まで送ってくれることになったの。そうしたら…」




ここで言葉に詰まる。彼に告白されたことを話すには、陽毬が龍司と別れたことを言わなければいけない。こんな往来で話して良いのか、陽毬は悩んだ。




朔夜はそんな陽毬の心情を察したのか、「場所移動するか」と言い出して近くのチェーン店のカフェに入ることになった。朔夜は中川に近づいた時と違い、陽毬の歩幅に合わせながらカフェへと向かった。





店内の人は時間のせいかまばらだ。レジカウンターに並んだ陽毬は明日に差し支えるので普段飲むコーヒーではなく、ホットティーを頼む。付き合わせてしまったので自分が払うと言う陽毬に朔夜は難色を示したが「俺も同じやつ」と注文を待つ店員に伝えた。




ホットティーが2つ置かれたお盆を持ち、店内を歩く陽毬と後ろに続く朔夜は適当なテーブル席を見つけ先につく。




さて、と気を取り直して話そうとすると何やら視線を感じる。チラリと周囲を見渡すと店内にいる女性客全員が朔夜に熱い視線を、そして陽毬には妬みの籠った視線を送っていた。




龍司と付き合ってから朔夜と2人になることは控えていたし、兄と一緒にいる時陽毬は女子達の視界にすら入らず兄と朔夜を見つめていた。




久々の感覚に、学生時代に戻ったような懐かしい気持ちになる。




(流石のモテっぷり)




ホットティーを飲む朔夜を見ながら、年を重ねるごとに道行く女子達の熱視線すら一心に集める彼が何処までモテ街道をひた走るのか、何となく気になった。




マグカップを置いた朔夜は陽毬と視線を合わせる。




「ここなら落ち着いて話せるだろ」




陽毬は頷くと中川とのこと、そこに至るまでの経緯を出来るだけ感情を交えず話すことに決めた。



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