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宗教上の理由  作者: 儀間朝啓
第二章
28/38

そのニ

 「それでは早速、教えていただきましょう、新人アナウンサー鹿沢志保さんが大学時代にやっていた、ピュアピア関連のバイトとは?」

「……」

「黙らないの! ラジオなんだから、放送事故になっちゃうでしょ?」

「……あ、はい。でも、恥ずかしいですねー」

「いや、恥ずかしがらずに、言ってみなさいって」

「わ、分かりました。あのですね、なるんです」

「なるって、何に?」

「……ピュアピアに」


 うわー、また寝落ちしちゃった。やっぱ放送時間が遅いんだよなー、この番組。ま、アプリ使えば聴き逃してもあとから聴けるし、良いんだけど。

 ゆうてわたしも、これから自分のラジオ番組を始めるんだから、ゆっくり他人のラジオ聴いてる場合じゃ無いっちゃ無いけど。最後まで聴けるかどうかビミョウだけど、ギリギリまで聴こうっと。


 「なる、とは、どういうこと?」

「まあその、変身、と言いますか、入る、と言いますか。中に」

「……あー、やっぱりねー。いや俺も子どもが小さい頃はよく観に行ってたけどね、どうしても行きたい行きたいって言うから」


 へえー、鹿沢さん、やってたんだ。ピュアピアショーのお仕事。


「でも大変じゃないですか? ああいう仕事って」

「大変は大変ですね。まず、暑いですし」

「まー暑いですよね」

「はい。暑さだけでも大変なのに、他にも大変なことを挙げ出したら、キリがないと思います」

「でもそんなに大変な仕事、どんな人がやってるんですか?」


——


 変わったなあ。

 私がこの会社に入った頃には、色んな立場の人が集まって来てた。でも今は、会社の方針で求人先を絞っちゃってるから。


 私がキャラショーに初めて関わったのは、ふるさとの信州だった。新入社員として就職した会社がエンタメ関係を手広く扱っていて、その中の一セクションがキャラショーや遊園地やイベントへのキャスト派遣を行っていた。

 正直、そこに配属された時は不満があった。ローカルタレントのマネジメントやイベントの企画といった仕事がこの会社の花形部署なんだけど、当然そういう部署の競争率は高く、私はキャラショーに回る事となった。

 だが、そこで仕事を続けているうちに、楽しくなってきた。それに慣れてくると、ショービジネスは媒体が違うだけでやることは共通な部分も多い。

 そうなれば小さな会社なので、他の部門の手伝いもこなさなければならず、入社した頃の希望部署にもヘルプという形で関わることが出来た。


 ところが、転機が訪れた。事業見直しにより、会社は実質タレントやモデルの事務所になった。私の居たキャラクターショー部門からは撤退することとなった。

 有り難いことに、会社からは残った部署への異動を私にすすめてくれたが、私はこの仕事が好きだから、丁重にお断りし、東京にあるこの会社に移ってきた。 この会社は、以前から私たちの会社とは交流があり、おかげで転職はスムーズに進んだ。縁をつなげてくれたのは、いま車の後部座席で台本とにらめっこしている嬬恋真耶さん。

 私も彼女も木之花村で育った。知り合ったきっかけは中学校の職業体験。その時に来てくれた嬬恋さんとそのお友達は、すっかりうちの会社が気に入ってくれて、今でも年賀状などの交流がある。

 特に嬬恋さんは律儀な性格も相まって、上京してからキャラクターショーのお仕事についた事を喜びの絵文字いっぱいのSNSメッセージで教えてくれた。そして彼女が村に帰って来るたびに、自主学習と言って私たちの関わるショーを観に来てくれた。

 もちろん彼女は私への挨拶も欠かさない。そして次第にキャストの子とも面識が出来て仲良くなる。その子たちの中にも進学や就職で上京する子は何人かいて、その子たちがショーの仕事を続けたいという時には、嬬恋さんが仲介の労をとってくれた。

 次第に二つの会社の間で交流が深まっていった。


 ただ、キャラクターショーに対するスタンスは、この会社でも大きく変化している。その理由はひとつでは無いけれど、少子化による人手不足が大きな影を落としていることは否めない。

 おそらく、同業他社でもキャスト集めには苦労しているだろうと思うし、でもそれぞれの会社なりの方法で乗り切っているはず。でもうちの会社は、特に思い切った改革を行なった。

 キャラクターショーの種類は大きく二つに分けられる。特撮を題材としたアクションショーと女児向け作品や童話などを素材としたメルヘンショーに分けられる。

 ほとんどのプロダクションが、その両方、そしていくつものショーを手掛けているのだが、我が社は逆で、ショーとして直接運営するのはピュアピア一本に絞ってしまった。


——


 「色んな人が居たみたいですよ、キャラショーとかに出る人をスーツアクターって呼ぶんですけど、それを専門に極めようとする人もいますし」

「あ、専門職なんだ、やっぱり俺はてっきり、芸能人が下積みでバイトも兼ねてやってるのかなって」

「そういう事も、あるにはあったみたいですよ。ワタシが入ったときには、募集の仕方が変わってましたけど」

「どんな?」

「ワタシと同じ学生が多かったですね、あとは学生時代にバイトしてた先輩たちが結婚して主婦やりつつ、お仕事に戻って来たりもしてました。大学に求人票を出して、そこから採用するかたちになったんです」

「ほう。それまた何故に?」

「キャラショーの会社って、普通は色んなアニメのショーをやるんですけど、うちはピュアピア専門だったんです」

「え? それで経営は大丈夫なの?」

「あ、ショーはピュアピアだけですけど、他にも単体でご当地キャラを着たりする仕事はありました。あとその会社の入ってるビルが社長さんの持ってるビルで、テナントの賃料とかの収入もあったみたいで」

「なるほど、自分の持ち物なら賃料タダだもんね」

「で、ピュアピアって基本、女の子しか出てこないじゃないですか、主要なキャラって。だから女子大に集中的に求人をかけてたんです」

「あなた、大学、共学でしょ?」

「あ、ワタシはそうですけど、女子大に通ってた友達から紹介されたんです。大変なお仕事だけど、楽しいよ、って」

「その人はアニメとかが好きな人?」

「うーん、そうでもないですけど、やっぱ同じ年代の子が集まるから、サークルみたいな雰囲気になるんですよ。ショーが終わったら打ち上げ行ったり、自主練もよくやりましたよ」

「へえ。でも大変は大変だったんだよね? そっちの話も番組の盛り上がり的には聞きたいけど」

「もちろんありますよ、わんさか」

※2026年1月30日、文中の「関わる」を「直接運営する」に書き換えました。なんか辻褄合わなくて(汗

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