表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宗教上の理由  作者: 儀間朝啓
第二章
27/38

その一

 「で、鹿沢さんは学生時代、どんなアルバイトをしてたんですか?」

「うーん、普通にコンビニとかですけど」

「あー、本当に普通ですね」

「普通はふつうですけど、コンビニって大変なんですよ? やること多いし」

「いや、それはわかりますよ。公共料金の支払いだの宅配便の受付だの、唐揚げとかの調理だの、やる事多いでしょ?」

「はい。だから二年生終わる時にやめましたけど」

「やめたんかいっ!」

「いやだって、アナウンサーって就活、早く動かなきゃいけないじゃないですか。だから決まったシフトでバイト入るの、キツいなあって思って」

「いや分かるけど、でも就活ともなればお金もかかるし、何もしないわけにもいかないでしょ?」

「ええ、だから不定期のバイトやってました」

「あー日雇いバイトというか、短期バイトみたいな? それは、何をやってたんですか?」

「え? まあ、言っていいんですかね?」

「放送で言えないような闇の仕事でも?」

「……いやそうじゃなくて! つーか、子どもの夢を壊さないかなーって」

「あー平気、こんな時間に子どもは聴いてないから」

「そうですけど。でもあの、他局の話していいんですか?」

「どういうことよ?」

「えーと、あの、まずかったらカットしてくださいね?」

「編集してないからなー、いつも」

「いやいや、まあいいや、言っちゃいますよ?」

「どぞ。なんかまずかったらピー乗せるから」

「ピーってなんか、まいっか、あのう、ピュアピアって、ご存知ですよね?」

「ええ、子ども向けのアニメですよね。オモチャ屋で働いたとか?」

「というわけでもないんです。結構珍しいアルバイトでした」

「珍しい? そう、それ待ってたんですよ。変わったアルバイト経験ほど番組的に面白いから」


 ……ふぁぁ、ねむっ……。


 おっと、イカンイカン。このはなFMの超人気DJ板谷楓さんは、その人気にあぐらをかかずに日々精進すべく、全国の人気ラジオを聴いて話術を取り入れているのです! 少々の眠気はガマンなのです!


 この番組は一人のアナウンサーを取り上げ、その生い立ちから現在までを深掘りして聞いていくという趣向。聞き役のベテラン社員の突っ込みが鋭く、話し手のアナウンサーがついつい色々としゃべってしまい本音とか素の自分とかをさらけ出してしまうので、ラジオマニアの間では人気も高い。

 本日出演の鹿沢アナウンサーは、コノハナの隣の村の出身で、東京の大学に進んだのち、さらに別の地方の放送局に就職、アナウンサーになった。一年目のアナウンサーだからまだ活躍の場は少ないけれど、我が郷土の話をしてくれたら良いPRになるんじゃないかと、わたしはひそかに期待しているのだ。


 それにしても、鹿沢さんからピュアピアなんて言葉が出てくるなんて意外。わたしの知る限り、鹿沢さんはアニメや漫画に余り興味を示さないような……。

 ピュアピアって言ったら、むしろ真耶さんを思い出しちゃうなあ……、いい歳して子ども向けアニメ大好きだったし、結局それが高じて……。


 ……ぐぅ。


——


 ふあぁ……。


 あちゃー、ぼくってば、またしても真耶さんとサシ飲みしてる間に寝ちゃったんだ。あの人、一滴も飲めなさそうな顔してて、飲み始めると止まらないもんなー。

 しかもその真耶さん、二日酔いとかしたのを見たことがない。今日も仕事のはずだけど、とっくに出かけたのだろう。夕べのこの部屋で宴があったとはとても思えない、酒瓶やグラスなど全て片付けてある。

 真耶さん一人にさせてしまったのは申し訳ない。


 というか今日って、土曜じゃなかった?

 ということは、平日に行ってるエステサロンの仕事じゃない、もう一つの方なんじゃないの?

 あっちの仕事、朝がむっちゃ早いのに、よく起きられたよなー、あんなに飲んで。欧米民族はアルコール分解酵素を日本人より多く持っている人が多いから、その血を引く真耶さんも、そうなんじゃないかとは思うんだけど。

 でも何よりも、大好きな仕事だから早起きも苦にならないんだろうな。平日だってぱっちり目覚めて準備万端、心をビシッと引き締めてお出かけしてるけど、今日の真耶さんは、今にもスキップしそうなルンルン気分でお出かけしていったんだろうな。なんだか目に浮かぶ。


——


 「ふあ、おはようございま……わ、わ、真耶さん、カワイイ〜!」

「だよねだよね、こういう服でも全然あざとく見えないの、さすがだよね〜」

「やっぱ真耶さん、オシャレ番長ですよね、どんな時でも手抜きしないんですから」

 うわぁ〜、恥ずかしい恥ずかしい、やめて〜。

「真耶ちゃーん、恥ずかしがってるのが顔に出てるよー? つかほめられてるんだから、素直に喜びなよー」

え、あ、そうだった、褒めてくれてるのにイヤイヤしてちゃ、かえって悪いってば。

「あ、ありがと」

と、言ってはみたけど、やっぱ恥ずかしい。いや、もっと恥ずかしい。


 「あーあ、恥ずかしさが倍増して、下向いちゃった」

「リーダーリーダー、仕事モードに入っちゃえば切り替えると思いますよ、真耶さんは」

「まあそうだね、んじゃ人数確認……と。よし、全員いるね。それじゃ、せーのっ」


 「ピュアピア班、行動開始!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ