その十二
ヘルメットの中から現れたのは、キラキラと輝く金髪。染めたものではない、根っからの天然色。耳も隠さないくらいのショートカットなので、ふぁさとはならないが、しっかりとキューティクルが光を反射して輪を使っている。
花耶さんが育った嬬恋家は日本古来からの神々に仕える家柄でありながら、その一族はしばしば外国にルーツを持つ配偶者を迎えてきた。花耶さんの髪が金色、そして瞳がブルーなのもそういう理由。
日本に避暑とか別荘とかいう概念が根付いたのは明治以降だと考えられる。それまでにも暑さを避ける旅や自宅以外にも居を定めることはあったわけだが、現代につながるイメージの避暑や別荘は近代になってやってきた欧米の人々によると考えてよかろう。
それまでは冬も夏も寒く、米はもちろん、その他の作物もろくに育たない痩せた土地が、避暑の適地として脚光を浴びた。それらの地に別荘を創り始めたのも主に外国人だった。
冷涼な高原に属するこのはな村も、その例外ではなかった。わずか十数戸の集落にすぎなかった村に、その何倍もの戸数をかぞえる別荘が出来上がった。
別荘にやってくる外国人たちと、もとからこの地に住まう人々との交わりは、とても友好的なものだった。
神の名のもと山村でつつましく暮らしてきた人々は、遠方から神への祈りをささげにやってくる人々を助けることが務めであると、もとより心得ていた。その態度は、遠い海の彼方からやって来た人々に対しても変わらない。あくまでも丁重でありながら、神のもと生きる者として恥じない堂々とした振る舞いを崩さない。
遠い国からやってきた人々もまた、それにふさわしい態度で応じた。こうして「開国」以来ほんの半世紀足らずの日本に、数多の国々に出自をもつ人々が共存する村が生まれた。
このはな村に来たとき、誰にでも開かれた巨大な扉があるかのように感じた。
たとえば、身体に障害をもつ楓さん。医療用具製造会社の社員として職人としての腕を磨いている一方で、地元コミュニティFMのラジオDJとしても活躍している。
そして天狼神社を守る希和子さん。女性の神職自体は珍しいことではないが、ここでは代々の宮司に女性を優先して指名することが多いのだという。
さらにその希和子さんの姪、花耶さんは外国人の血を引くけれど、血筋としては天狼神社の神職についてもおかしくないので「青い目の神主」にだってなれるということ。
多様な出自を持つ人々が、のびのびと暮らしている村、このはな村。自分で自分を「ぼく」なんて呼ぶ女子くらい余裕で受け入れてくれる。




