その18
「さて、そろそろサラサが合流する頃だが……」
オーマは目の前の砲撃戦を見ながらそう呟いた。
娘の才能に関して、全く疑っていないといった感じだった。
筋金入りの親バカとも言えるが、事はオーマの思惑通りに進んでいるので、問題はないだろう。
ただ、最初の思惑通りとは行かずに、修正に修正を重ねた結果、こうなったと言う事を付け加えておこう。
それだけ、フランデブルグ伯爵は厄介な敵だったのだろう。
或いは、徹底的に攻勢を仕掛ければ、打ち負かせた相手かも知れない。
だが、失敗したときのことを考えると目も当てられない。
よって、そのようなリスクを回避した結果とも言える。
とは言え、撃ち合ってみて、相手の力量が徐々に分かってきていた。
その意味では、リスク回避に走った事は間違いではなかった。
「閣下、サラサ様と合流後、攻勢に出ますか?」
ヤーデンがオーマにそう聞いてきた。
合流と言っても、フランデブルグ艦隊を挟撃する位置取りに2艦隊はいるのは明らかだった。
よって、明らかにこちら側が有利である。
ヤーデンは、リスクを回避したお陰で、現在の戦況にあると考えていた。
なので、この機会を積極的に利用しようと考えているようだった。
「いや、それは止めた方がいいな」
オーマは即答だった。
「はぁ?」
ヤーデンは、思わぬ言葉が返ってきたので、固まってしまった。
そんなヤーデンを見ても、オーマは何の反応を示さなかった。
敵艦隊をぼうっと見ているのかと思っていたが、意外ときちんと観察しているようだった。
まあ、エリオじゃないので、当たり前なのだが……。
「しかし、閣下、攻勢のチャンスかと思われます。
また、攻勢に出ない場合、敵に主導権を握られますぞ」
ヤーデンは、自分の職務を果たすべく、アドバイスを行った。
それを、ヘンデリックは、真剣に見ていた。
ヘンデリックの考えは、ヤーデンと一緒のようだった。
「簡単にやらしてくれる敵なら、それもいいだろう。
今回の砲撃戦といい、ワタトラへの攻撃方法といい、見くびっていい相手ではない。
現に、我々は、想定より早く仕掛けなくてはならなかった」
オーマは、ゆっくりと反論した。
サラサが、仕掛けが早かったと思ったのは、間違いではなかった。
その理由は、ワタトラへの攻撃が、想定より早く都市部に掛かりそうだったからだ。
陸砲の損害は覚悟していたが、都市部まで攻撃されるとなると、看過は出来ない。
なので、オーマは攻撃を早く仕掛けたのだった。
その事から、考えると、敵の能力は優れていると考えて間違いなかった。
「しかし、閣下、それでも、やはり、攻勢を仕掛けるべきです。
そうでないと、主導権を握られます」
ヤーデンは、尚も自分の意見を主張した。
「敵は恐らく撤退するだろう。
それを妨害する必要はない」
オーマはそう言い切った。
「!!!」
ヤーデンは尚も意見しようとした。
が、今回の戦略目標を考え直すと、本当に撤退するのなら、それでいいと思い、それ以上意見するのを思い止まった。




