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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
21.ワタトラ急襲

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その2

「さてと、これで打てる手は全て打ったと言う事だな」

 オーマは、サラサに緊急伝令を発してからそう言った。


 その声は、珍しくやれやれ感満載だった。


 仕事を一通り終えたので、満足という訳にはいかないのだろう。


 何せ、危機が迫ってきているからだ。


「しかし、随分とタイミング良く、シーサク王国が攻めてくる事になりましたね。

 陸軍は結構の頻度で、西側の国境を脅かしていますが、海軍は初めてじゃないですか?」

 傍らにいたヤーデンが、そう言った。


「このタイミングは狙っていたのではないかな……。

 いや、と言うか、サラサが遠征する時期をじっと伺っていたと言うべきかな」

 オーマは、してやられたという感じがあるのだろう。


 だから、やれやれ感満載なのだった。


 エリオの場合、単に面倒臭いからやれやれなのだが……。


 そこが、当代一の名将との違いなのだろう。


「成る程、敵もさることながらと言った感じですな」

 ヤーデンの方は、感心していた。


「それに、シーサク海軍は、最近、増強を続けていたしな。

 我が国を攻めるには、好都合と見たのだろう」

 オーマは更に、悪い情報を口にしていた。


「力が強まれば、それを使いたがる。

 人間の性みたいなものですかな?」

 ヤーデンはしみじみと人間の業の深さを語った。


「いや、それは人によるのではないかな……」

 オーマは、考え込むように、ヤーデンの意見を否定した。


「!!!」

 ヤーデンは驚いて、オーマはまじまじと見た。


 まあ、人の業というものは、そう言うものだろうというヤーデンの認識の方が大半だと感じていたからだ。


「クライセン公はそう言う傾向にはないさ」

 オーマは、驚いているヤーデンに自分の意見の根拠を示した。


「し……」

 ヤーデンは、今回、先に動いたのはエリオの方だと指摘しようとしたが、手で制された。


「確かに、今回はクライセン公が先に動いた。

 だが、座して、不利な状況を受け入れる事をしなかっただけだ」

 オーマは、更に説明を加えた。


「仰る通りです」

 ヤーデンは、反対する気も失せるぐらい、納得した。


「と言う事だから、サラサも上手く切り抜けてくれればいいのだが……」

 オーマは、娘を思う親の気持ちを吐露していた。


 この時、オーマ達はサキュス沖海戦が終わっていた事はまだ知らなかった。


「まあ、サラサ様の事ですから、上手くやるでしょう」

 ヤーデンの方は、全く心配していないといった感じだった。


 なので、オーマはギロリと睨む形になってしまった。


 オーマも我が娘を心配する親である。


 ヤーデンの方もそれは重々承知なので、特に気を止める様子はなかった。


 こちらは年の功と言った所か……。


「確かに、サラサならば、そうかも知れない……」

 オーマは一転して、ヤーデンの言う事に納得したようだったが、歯切れが悪かった。


 ヤーデンは、オーマのその態度を見て、少し怪訝そうになった。


「相手は、あのクライセン公だ。

 苛烈な戦闘になるやも知れない」

 オーマは、懸念材料を口にした。


 と言うか、ご承知のとおり、激戦となった。


 まあ、2人共、まだ結果は知らないので、比較的落ち付いていた。


 とは言え、ヤーデンの方はオーマの言葉に、「あれ?」と言う表情になった。


 無駄な戦いを避けるエリオ。


 エリオに匹敵するだけの能力を有するサラサ。


 この2人が戦闘するとなると、今回の場合、決定的なダメージをどちらかが受ける海戦にはなりにくいと思っている節があった。


 だが、オーマの見識としては、才能ある同士がぶつかり、知らぬうちに、歯止めが掛からなくなるのを恐れていた。


 そして、今回は、オーマの意見の方が近かった。


 が、状況変化が分かると、息を合わせたかのように、エリオとサラサは戦いを止めてしまった。


 「宿命」という言葉が、似合いそうな2人の関係だった。


 物語的には、そんなにカッコいい言葉が出てくる度に、ケチが付きそうだが……。


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