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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
20.反乱

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その15

「いたぞ!捕らえろ!」

 リ・リラ達が執務室から出ると、血走った目の集団がこちらに走ってきたいるのが見えた。


「逃げましょう!」

 リ・リラが、そう叫んで走り出した。


 その後を、リーメイとヤルスが追った。


 しかし、リ・リラはすぐに立ち止まった。


「何しているの!あなた達も、わたくし達と逃げるのよ!」

 リ・リラは、敵を食い止めようとして身構えている2人の扉番に叫んだ。


 思わぬ言葉に、2人の扉番は顔を見合わせた。


 人数的に、時間稼ぎにもならないのは明白だったので、リ・リラはそう声を掛けた。


 とは言え、すぐにはその命令には従えなかった。


「早く!!」

 リ・リラが更に促すと、2人の門番は、3人の方へ走り出した。


 それを確認すると、リ・リラ達3人も再び走り出した。


「待てぇぇぇ!」

 お決まりの台詞が、追っ手から掛かった。


「それで止まる馬鹿はいないでしょうに」

 これまたお決まりの台詞が、リ・リラから出ていた。


 がちゃがちゃ……。


 5人はそのまま廊下を疾走していったが、T字路の差し掛かった辺りで、進行方向とは違う左側から甲冑を着て、走ってくる集団の音が聞こえた。


(挟み撃ちになる!!)

 リ・リラは、そう思いながら、走りを止めなかった。


 他の4人も、それに気が付いていたが、リ・リラが走りを止めないので、それに続いた。


 そして、5人は間一髪、その集団より早くT字路を通り抜けられた。


「陛下!!」

 その集団から、一斉に叫び声が上がった。


 リ・リラは、聞き慣れた声が複数したので、立ち止まって振り返った。


「よくぞ、ご無事で!!」

 集団からは、所々、感激して泣きそうな声が聞こえてきた。


 声の主は、大蔵省大臣スリアン候だった。


 他にも、民部省大臣マルチアン候、刑部省大臣フロイトン候、宮内庁長官ローア伯、神祇庁長官スワリトン伯、大学庁長官モリソン伯と内政トップの面々が勢揃いしていた。


 それどころか、彼らの子息、そして、その部下達も大勢駆け付けていた。


 リ・リラの人望と、アイドル性によるものであろう。


 戦いには不向きかも知れないが、別の意味の親衛隊であり、人数は追っ手の数を遙かに凌いでいた。


「ここは我らが食い止めます!

 陛下は脱出なさって下さい」

 スリアン候から、これまたどこかで聞いた台詞が聞こえてきたが、必死になる人間達はやはりどこか似てしまうのだろう。


 別親衛隊はそう言うと、持ってきた大きな盾を廊下に並べて、防御陣地を築いた。


 それに、対して敵集団は攻勢を仕掛けてきた。


 がんがん、ばらばら……。


 別親衛隊はどう見ても、不慣れである。


 だが、狭い回廊を利用し、盾を複数人で支える事で、その攻勢に対応していた。


 と同時に、数的有利と、ドルオタパワー並みの不思議な力でそれに対抗していた。


 また、幸いな事に、追っ手に剣豪というレベルの者はいないようだった。


 寧ろ、レベルが低いように感じられた。


(ホルディム伯は、どんな訓練をさせていたのだろうか……)

 リ・リラが、こんな変な事を思ってしまうぐらいのレベルだった。


「陛下、彼らの好意を無駄にしてはいけません」

 ヤルスは、意外な光景に感心しながら、リ・リラに離脱を促した。


「分かりました」

とリ・リラは、ヤルスにそう頷くと、

「皆さん、感謝します」

と別親衛隊に声を掛けると、踵を返して、走り出した。


 それに、リーメイとヤルスが続いた。


「我らはここで、閣下達を援護致します」

 2人の扉番は、そう言うと、同時に、別親衛隊の前面に躍り出た。


 彼ら2人は、戦いのプロであり、状況判断が出来る人間である。


 その為、別親衛隊の抵抗力が格段に上がった。


「頼みます」

 リ・リラは、そう言うと走り始めた。


(なんと有り難い事か!

 彼らには逃げるという選択肢があったのに)

 リ・リラは、彼らの好意を噛みしめながら、闘争を続けるのだった。


 これにより、とりあえずの危機は回避できた……。


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