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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
20.反乱

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その11

「陛下、カカ侯爵閣下がお見えになったとの事です」

 リーメイは、リ・リラにそう報告した。


 今は、侍女であるリーメイが副官代わりになっていた。


 ロジオール公が出陣し、第2軍も、近衛兵も忙しい状態であった。


 その為、リ・リラの周りにはこれと言った人材が残っていなかった。


 と言うより、事態収拾の為、残らず、迷わず、惜しみなく投入した成果であった。


 でも、まあ、リーメイはクライセン一族に連なる者なので、適任と言えば適任なのだろう。


 それはそれとして、このような兵力の投入の仕方はエリオと事前に打ち合わせたものではなかった。


 エリオは当然、近衛だけではなく、ロジオール公も残留した第2軍も全て、リ・リラ周辺に留め置くようにアドバイスしていた。


 当然、言い合いになったのだが、珍しくエリオが譲らなかった。


(まあ、ここで、言い合いしても仕方がないわね。

 事態の推移次第って事で。

 その時は、エリオはいないのだから……)

 リ・リラはそう思いながら、渋々エリオの提案を受け入れたように見せ掛けた。


 なので、いざ、事が起きると、当然のように、すぐに兵力を投入し、事態の早期収拾を図っていた。


 そして、それはエリオも予想していた。


 だから、エリオは焦って慌てて、王都に戻っている最中なのだった。


 と言う事で、話を戻そう。


「カカ侯は1人なの?」

 リ・リラは、まずは、リーメイにそう聞いた。


「はい、お1人だそうです」

 リーメイは、表情を曇らせながらそう答えた。


「そう……」

 リ・リラは、それを聞いて、全てを悟ったような表情になった。


「それに、侯爵閣下らしからぬ、風体だそうです」

 リーメイは、言い辛そうにそう続けた。


「ここに通しなさい」

 リ・リラは、リーメイにそう言った。


「リ・リラ様……」

 リーメイは、ちょっと戸惑っている様子だった。


「緊急事態につき、多少の事は大目に見ます。

 なので、至急、侯爵をここに通しなさい。

 一刻も早く、事情を聞く必要があります」

 リ・リラは、リーメイの不安を払拭させる為に、矢継ぎ早にそう言った。


「畏まりました、リ・リラ様」

 リーメイは、そう言うと、執務室の扉を開けて、外に、カカ侯を連れてくるように指示を出した。


 しばらく時間をおいた後、ヤルスが執務室へと入ってきた。


 そして、部屋に入ると、ヤルスはすぐに平伏した。


 いつもきちんとした身なりをしているヤルスとは違い、薄汚れていて、所々にドス黒い模様が付いていた。


 入ってきた表情も、いつもの無表情を保つ事が出来ないくらい、疲労していた。


「カカ侯、今回は大変な事に巻き込まれましたね」

 ヤルスが口を開く前に、リ・リラが口を開いた。


「!!!」

 ヤルスにしては珍しく、驚いた表情で顔を上げた。


「わたくし達も手を尽くしたのですが、貴公達を発見できませんでした」

 リ・リラは、ヤルスの反応に構わず、話を続けた。


「滅相もございません」

 ヤルスは、恐縮しまくっていた。


「侯爵、1人で戻ってきたとなると、ヘーネス公は……」

 リ・リラは、ヤルスの気持ちを慮るようにそう言った。


「はい、陛下、お察しの通りで、ございます」

 ヤルスは、父親の最後を思い出していた。


 ヘーネス公は、剣技に関しては、息子程ではなかった。


 文官の一族なので、ヤルスの存在の方が特異と言えよう。


 その為、ヤルスの足手まといにならないように、そして、人質にならないように、自決していた。


「そうですか、それはとても残念です。

 即位早々に、反乱だけではなく、重臣を失うとは。

 わたくしの至らなさを詫びるばかりです」

 リ・リラは、心痛な表情を浮かべながらそう言った。


「陛下、とんでも御座いません。

 今回の事は、我が家の不始末が絡んでおります。

 如何なる処罰も覚悟しております」

 ヤルスは、平伏した状態のまま、更に頭を下げた。


「カカ侯ヤルス」

 リ・リラの口調が、女王そのものになった。


「はっ!!」

 ヤルスは、頭を下げたままの状態で、答えた。


「今は事態の収拾が第一です。

 貴公の手腕に期待しています」

 リ・リラは、まずは現状の打開を優先させた。


「承知致しました」

 ヤルスは、決意を持ってそう答えた。


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