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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
14.リーラン王国沖 エリオ艦隊vsサラサ艦隊
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その7

 さて、沈着冷静・・・・とエリオに評されたサラサである。


 エリオに評された通りに、サラサは沈着冷静に事の成り行きを見守る訳はなかった。


 まあ、要するに、エリオは人を見る目がないという証左である。


 心情的には、今すぐ砲撃を仕掛けたい所はある。


 セッフィールド島沖海戦の鬱憤をエリオ艦隊にぶつけたい衝動も大いにある。


 表情も苛ついており、激発寸前のように見える。


 だが、そう言った態度でもう数時間の時間が経っていた。


 なので、太陽暦535年4月、サラサ艦隊とエリオ艦隊は、トロイドス沖で睨み合いを続けるようだった。


「敵の総旗艦艦隊の足止めに成功しましたね」

 バンデリックはなるべくいい面を探し出して、進言したのは言うまでもなかった。


 まあ、進言ではないのだが……。


「えっ、まあ……ね……」

 サラサは意外な反応をした。


 バンデリックの言葉に対して、歯切れの悪い反応をしていた。


 とは言え、それが意外という訳ではなかった。


 いや、それもそうなのだが、どうも何かに気が付いたようだった。


(つい、頭に血が上ってしまって、ここまで来てしまったけど……)

 サラサは、当初の切っ掛けを思い出して、何とも気まずい思いになった。


 幸い、周りにはバレていないし、しらっとしてれば、バレないという思いが脳裏をよぎった。


 でも、まあ、目の前にいる人物にはそれはバレバレだった。


 沈着冷静とエリオに評されたサラサだったが、エリオの行動に対しては、そうも行かなかった。


 どうも、エリオは他人を怒らせる才能だけは、誰に対してもどうしようもないと言った所か?


「敵、総旗艦艦隊の目的はともかくとして、ここに数日間、足止めに成功しましたので、もうよろしいのではないでしょうか?」

 バンデリックは、引くに引けなくなったサラサに助け船を出した。


 それに対して、サラサはムッとした。


 とは言え、バンデリックの言い分は尤もだった。


 ここで引くべきなのだろうが、相手は果たして、簡単に見逃してくれるのもかと言う問題が新たに持ち上がった。


 サラサはムッとしたものの、すぐに冷静になった。


 そして、もう一回、エリオ艦隊を見直した。


 まじまじと見ていると、ここで撤退しても、追撃はしてこない確証はあった。


(でも、あいつは何しに出てきたのかしら?)

 冷静になったサラサは別の考えが思い浮かんできた。


 ウサス・スヴィア紛争の直後なので、新しい何かを仕込むには絶好のタイミングである。


 これは、リーラン側から見たらという事である。


「うーん、でも、あいつは何かしようとしているのよね……」

 サラサは考え込むように、その言葉を口に出してみた。


「仰る通りだと思います……」

 まだまだ歯切れの悪いサラサに合わせるかのように、バンデリックも歯切れが悪いながらもそう同意した。


「それって、やっぱり、邪魔する必要があるわよね……」

 サラサの口調は、相変わらず歯切れが悪かった。


 とは言え、この言葉を聞いたとしたら、エリオは一気にぐにゃーんと嫌な表情になる事は間違いがなかった。


「はぁ……」

 バンデリックは、サラサが命令を下してはいなかったので、何と反応していいか、分からなかった。


 だが、確実に嫌な予感はしていた。


「う~ん……」

 サラサは考えるような仕草をした。


「……」

 バンデリックはそれを見詰めていたが、もう結論は出ていると感じていた。


「我が艦隊は、敵艦隊の監視をこのまま続ける」

 サラサはそう結論を出した。


「了解しました」

 バンデリックは、サラサが決断した以上、敬礼を持って答える他なかった。


 エリオ艦隊とサラサ艦隊の初の直接対決は、意外な形で推移する事となった。


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