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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
20.反乱

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その4

(さて、一難去ってまた一難って所か……)

 黄昏時に、マイルスターは、一人で甲板上にいた。


 エリオ艦隊は、一足早くカイエスの帰路へと就いていた。


 一仕事終えた後に、また一仕事。


 本来ならば、エリオがぼやいている所である。


 その当の本人は、既に自室に引き払っていた。


 なので、マイルスターは、一人仕方なくぼやいている所だと言いたい所だが、実態はそうではない。


 マイルスターは、総参謀長ではあるが、自分をある意味、傍観者だと思っている節があった。


 エリオが困難に直面した時に、どう切り抜け、反撃するかを楽しみに観察していた。


 今回もそうだと思いたいのだが、いつもと明らかに違っていた。


 その理由は考えるまでもなかった。


 エリオにとって、大事な人間が危機に陥ろうとしていたからだ。


 こう言う時、マイルスターの仕事はほとんど無くなる。


 と言うのは、マイルスターの存在は、エリオにサボらせないように監視する役割が大部分だったからだ。


(自分が手持ち無沙汰になる事はいい事だと思っていたが、案外そうでもないんだな……)

 マイルスターは、和やかな表情でそう考えていた。


 でも、まあ、事態はそんなにのんびりしたものではなかった。


 当然、その事は、マイルスター自身もよく分かっていた。


 とん!


 マイルスターの後ろで、何かが落ちる音がしたので、振り返ってみた。


 すると、そこにはシャルスがいた。


 どうやら、マストに登っていたらしく、そこから飛び降りた音だった。


 シャルスは成人になっても、どこかに行く癖が完全に抜けていないようだった。


 しかしながら、業務に支障を来す事はなかったので、誰も注意はしなかった。


「シャルス、何か新たな報告は?」

 マイルスターは、何だか少し安心したような気分になっていた。


 普段、こういう事態はエリオを責っ付いていればいいのだが、今回ばかりは違った。


 なので、、少しでもいつも通りの行動をしているシャルスを見て安心していた。


「取りあえずの所はありません。

 残留部隊の撤退準備は順調に進んでいるようです。

 ですので、帝国の援軍とは遭遇する事はないようです。

 本国の方ですが、新たな報告が今の所ありません」

 シャルスは、聞かれた事をすらすらと答えた。


 やはり、ちゃんと仕事はしているようだ。


「取りあえず、現状はこちらの想定通りという事か……。

 これはいい事なのだろうか?それとも悪い事なのだろうか?」

 マイルスターは、考え込んでしまった。


 現状は把握できた。


 だが、単に把握できたに過ぎなかった。


 マイルスターは、戦略的な考え方が出来る方ではあったが、まあ、エリオ程ではない。


「……」

 シャルスの方は、黙っていた。


 マイルスターの疑問に対して、何か言ってもいい所だと思うが、やはり、黙っていた。


「貴官はどう思う?」

 マイルスターは、堪らず聞いてみた。


「どうと言われましても……」

 シャルスは言葉を濁した。


 シャルスは地頭がいい方である。


 勉学というカテゴリーでは、エリオを凌ぐ程である。


 なので、現状把握は出来ており、不味い方向に進んでいる事も分かっている筈だ。


 だが、感想らしきものがないどころか、焦ってもいなかった。


 いつも通り、感情がフラットなままだった。


「最悪の場合、我々は10倍以上の敵を相手にしなくてはならない」

 マイルスターは、言いたくはない現状を口にした。


 相手は、まあ、書くだけ野暮だろう。


「はい、仰る通りだと思います」

 シャルスは、何の迷いもなく、マイルスターの言った事を肯定した。


 流石のマイルスターも苦笑する他なかった。


「閣下は、その事に対して、方策はお持ちなのだろうか?」

 マイルスターは、議論を深めるべく、質問してみた。


「さあ……」

 シャルスの返した言葉は、マイルスターの完全に予想したものだった。


「まさか、そのまま突っ込む事はないだろうな?」

 マイルスターは、暖簾に腕押しと感じていたが、更に質問を重ねた。


「陛下の危機と見れば、そのなるでしょうな」

 シャルスは、今度は他人事のようにあっさりと答えた。


「……」

 マイルスターは、絶句してしまった。


 シャルスの答えは自分との予想と全く違いが無かったからだ。


 なので、その光景までもが想像できてしまった。


(不味くはないか……?)


 マイルスターの思いとは関係なく、艦隊はカイエスまでの最短距離を突き進んでいた。


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