表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
19.サキュス沖海戦 エリオvsサラサ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/173

その18

「敵艦隊、後退しています」

 バンデリックは、サラサに戸惑いながらそう報告した。


「???」

 サラサの方もそれには気が付いていたが、何でか分からなかった。


(ここで、引く意味って、何?)

 サラサは、罠に対する警戒をした。


 と言うより、その意味をを強制的に考えさせられた。


「攻勢を中止。

 現在の位置を保ちつつ、警戒せよ」

 敵の思わぬ行動に、命令が遅れる所だが、サラサはすぐに命令を下した。


 これにより、艦隊行動が徹底され、陣形が乱れる事や、過度の追撃がなかった。


 やはり、サラサは優秀な指揮官だった。


 とは言え、エリオの意図が解せないのは、そのままだった。


(罠とみるべき?)

 サラサは、珍しく結論を出すのを躊躇った。


 これまで、五分五分の戦いをしていた。


 それなのに、いきなり敵は引いた。


 数的有利なので、戦線を維持するだけで、いずれは敵側有利になるこの状況で引いた。


 もしくは、罠を仕掛けて、一気に勝敗を決する為だと疑うのは、無理も無い事だった。


(そんなリスクを負う必要があるのだろうか?)

 サラサは、益々首を傾げる他なかった。


 どう見ても、エリオの行動は、リスクとリターンが見合わないからだ。


 得る利益は同じなのに、リスクを高める戦法をとる意味が分からなかった。


「閣下、侯爵閣下より、緊急連絡です。

 『可能ならば、速やかにワタトラに帰還せよ。

 シーサク王国海軍が進軍している模様』との事です」

 バンデリックは、焦る思いを極力抑えながらそう報告書を読み上げた。


「!!!」

 サラサは、予想もしない急な報告に驚いた。


 とは言え、すぐに、

「くっ、向こうもその報告が入ったって事ね」

と机上にある地図を両手で、引っ掻くように握りつぶしながら、当然、悔しそうに言った。


(とは言え、これで、戦いを終わらせる事が出来る……)

 バンデリックは大いに安心した。


 互角以上の戦いをしていたので、傍目から見ると変かも知れない。


 だが、このまま戦いが推移すると取り返しの付かない事が起きそうで気が気でなかった。


 と同時に、サラサにとっては、これがどれ程屈辱的かも分かっていた。


 まあ、皆様もこれから盛り上がる所に水を差されたので、不満タラタラだろうが……。


 しかし、ねぇ、この世界情勢では仕方がないでしょうと言い訳をしておきたい。


 それはともかくとして、バンデリックは、この機を逃す訳にはいかないと考えた。


「閣下!」

 バンデリックは、大きな声で、一言、そう言った。


「分かってる!」

とサラサは、バンデリックに一旦、八つ当たりしてから、

「全艦、戦場を離脱し、至急ワタトラに帰還する!」

と命令を下した。


 こうして、エリオとサラサの直接対決はまたもや消化不良で終わるのであった。


 え、あ、まあ、エリオの方は、消化不良とは全く思っていないのは言うまでもない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ