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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
19.サキュス沖海戦 エリオvsサラサ

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その15

「閣下、6番艦が撃沈されました」

 バンデリックは、本当に残念そうに報告した。


 敵に側面を叩かれた格好だった。


 優位に立ったと思ったら、すぐに引き戻される。


 正に一進一退という言葉通りの展開だった。


「徹底しているわね、全く!!」

 サラサの方は、本当に忌々しそうにそう言った。


 撃沈された2艦は元の位置では隣同士だった。


 そこが、サラサ艦隊の陣形を維持する為に、重要な所だった。


 それを1度ならずも、2度までも叩かれた格好だ。


 そこは、サラサもサラサであった。


 先程は、後退する格好になった。


 だが、今回は、逆に前進する事ですぐに艦列を立て直していた。


 そう、すぐに攻勢は続行された。


(流石に、お嬢様だ!)

 バンデリックは、感心すると共に、誇りにさえ思えた。


 損害が出ているものの、数的不利な状況で、主導権を渡さずに戦えている。


 サラサが指揮を執っている以上、負けないと。


 だが、決定的な攻勢には至らない。


 クライセン艦隊の攻撃の去なし方が、時間を追うごとに巧みさを増していた。


 激戦の中、

「敵味方の位置がひっくり返りましたね」

とバンデリックは、机上の艦隊位置を見ながら、ふとそう言った。


 サラサ艦隊は南に位置し、エリオ・アスウェル艦隊は北に位置していた。


「欲が出てくるのは分かるけど、そんな馬鹿な事はやらないわよ」

 サラサは、バンデリックが考えた一つの可能性を言う前に否定した。


 それは言うまでもなく、サキュスへ進路を向ける事だった。


「はははっ……」

 バンデリックは、考えたいた事を見抜かれたので、力なく笑った。


 とは言え、それを積極的に意見しようとは思ってはいなかった。


 エリオ・アスウェル艦隊に背を向ければ、たちまち包囲殲滅されるのは目に見えていたからだ。


 それが見えているから、本来ならサキュスへ来援に向かうべき所をそうしないでいた。


「こっちは、数的不利を承知で、敵の半数近くを引き受けているのだから、向こうは向こうで、しっかりやって貰わないとね」

 サラサの言い分はある意味、味方である帝国北方艦隊を突き放す言い方だった。


「……」

 バンデリックは、サラサの意見に全く同意する者だった。


 その一方で、北方艦隊に同情していたので、無言だった。


 まあ、言い分としては正しいが、心情的にはやはりかわいそうだと感じたのだろう。


「忘れているかも知れないけど、当初の作戦は、もう、とうに、破綻しているのよ」

 サラサは、今一納得していない様な感じのバンデリックにそう言った。


「!!!」

 バンデリックは、サキュスへ向かった目的を思い出した。


 サキュスへの移動は、リーラン王国王都カイエス攻撃の為に、集結するのが目的だった。


 その作戦は、今や、見る影もなかった。


 現状は、その作戦を完全に逆手に取られ、各個撃破の憂き目に遭っている状況だった。


(流石に、お嬢様だな。

 本来の目標を見失ってはいない)

 バンデリックは、サラサに感心の目を向けた。


 とは言え、それだったら、サラサ艦隊は速やかに撤退すべきだったのだろう。


 既に、当初の戦略目標は完全に失われたのだから……。


 しかしながら、エリオとは違う事情がある。


 エリオも同情したとおり、同盟関係、しかも不利な同盟関係の為、サラサ艦隊はこの海戦を戦っていた。


「馬鹿の一つ覚えみたいだけど、今は兎に角、攻勢あるのみ。

 目の前の敵を押しまくるわよ」

 サラサは、艦隊行動がフラつかないように、再度、自分の考えを示した。


「了解しました」

 バンデリックは、一際大きな声で、それに同意した。


 それにより、艦隊の雰囲気が一層しまった感じになった。


(予想していたとは言え、これ程激しい戦いになるとは……)

 バンデリックは、副官なりに、そう思わざるを得なかった。


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