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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
14.リーラン王国沖 エリオ艦隊vsサラサ艦隊
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その6

 太陽暦535年4月、エリオ艦隊とサラサ艦隊のトロイドス沖海戦(?)は、まずは睨み合いから始まった???


 既に、睨み合い(?)は、数時間に及んでいた。


 どちらの艦隊も身動ぎしない。


 まるで、動いた方が負けといった感じだった。


 そう、睨めっこである、間違いない!!


 まあ、尤も、それで勝敗が付く訳はないのだが……。


「閣下、このままでは埒が明きません。

 やはり、ティセル男爵に来援を求めては」

 マイルスターは参謀長らしい事を口にした。


「うん……」

 それに対して、エリオは反応薄だった。


 予想はしていたものの、それ以上の反応薄に、マイルスターは力が抜け、更に魂までも抜ける思いだった。


 エリオはジッとサラサ艦隊を見ていた。


 ただ、数時間ジッと見ていた訳ではなく、時折、困ったような表情で目を逸らしたり、頭を掻いていたりしていた。


 敵を目の前にして、この落ち着き振りは、周りに影響を与えない訳はなかった。


 緊張感を持て、惚け茄子!!


 水兵達からはそう言ったプレッシャーが掛かっているのは明らかだった。


 とは言え、そのお陰で、緊張しすぎてはいないが、程よい警戒感が艦隊を支配していた。


 この空気こそが、即応できるエリオ艦隊の強さなのだろう。


「……」

 マイルスターは、その空気に飲み込まれるように、エリオからの返事を諦めた。


「まあ、今は動く必要はないよ……」

 エリオは、かなり遅れて、マイルスターの進言にボソッと答えた。


「はぁ……」

 マイルスターは、タイミングをかなり外されたので、何の反論も出来なかった。


 ただ、これだけ鈍い反応を示すという事は、敵の攻撃は全く考慮しなくていいという事でもある。


 こういう勘というか、感性というか、戦いの流れを読む事に関しては、艦隊全体からの絶対的信頼感があるエリオだった。


 その為、警戒態勢は維持しているものの、平時より少し警戒すればいいという空気になっていた。


「今、動くと、面倒な事になる。

 それは、ティセル男爵にも迷惑だろう」

 エリオのは珍しく、マイルスターへ追加説明が成された。


 まあ、でも、これは追加説明と呼べるものかは、怪しい。


 それに、「戦い=面倒事」とは、如何にもエリオらしかった。


 マイルスターの方は、動いた後の事を頭の中に描いていた。


 当然、それは戦端が開かれるイメージであったのは言うまでもなかった。


 セッフィールド島沖海戦の報告書をマイルスターも読んでいたので、そのイメージ自体は良いものではなかった。


「成る程、そうですか……」

 マイルスターは、歯切れが悪いながらも納得せざるを得なかった。


 だが、総司令官がこんなにボケッとしていて、いいのだろうか?という疑問が新たに湧いてきた。


 まあ、ボケッとしているのはいつもの事なのだが、敵を目前にして、これはありなのだろうか?と言う思いが、流石のマイルスターにも湧いてきた。


 とは言え、エリオはただボケッとしていた訳ではなかった。


 どちらかと言うと、サラサとの神経戦を戦っていた。


 下手に動けないでいた。


 先に動けば、それを利用されて、強烈な返し技を食らう恐れがあった。


 実際、エリオもサラサがこう動けば、こう対処する、ああ動けば、ああ対処するというシミュレーションが頭の中で完成していた。


 だが、先に動いた場合はいずれも、上手く行かないシミュレーションしか出来ていなかった。


 そんな考えが頭の中を駆け巡っており、フル回転で頭を働かせていた。


 ただ、残念な事に、一生懸命思考しているのにも関わらず、傍目から見ると、エリオは、ぼけらっとしているようにしか、見えなかった。


 本当に、残念である。


 そして、それはデフォルトでもある。


 まあ、尤も、本当にぼけらっとしている時も同じ表情なので、見分けが付かない。


 それは同情に値するかと言えば、そうなのかも知れない。


 ただ、フル回転しているより、ぼけらっとしている方が圧倒的に多い……。


 なので、そういう風に見られるのは仕方がない事である。


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