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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
19.サキュス沖海戦 エリオvsサラサ

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その13

「総司令官閣下はまた随分と慎重ですな。

 反転攻勢の好機のように思えるのですが?」

 ラルグからエリオの命令を聞いたヴェルスは、怪訝そうな表情になった。


「反転攻勢を逆手に取られる事を嫌ったのだろうな……」

 リンクが、エリオの気持ちを代弁した。


「しかし、反転攻勢、半包囲態勢にする好機だと思いますが?」

 ヴェルスは、リンクがエリオの命令に同調したので、余計に驚いていた。


「半包囲しようとした時に、艦列の薄い位置を攻撃されて、分断される」

 リンクは、サラサ艦隊を見詰めながらそう言った。


「まさか、そう言った高度な芸当が敵に出来ると?」

 ヴェルスは更に驚いていた。


「敵艦隊のあの動きを見て、出来ないと思うか?」

 リンクは、ヴェルスの質問に足して、逆に質問した。


「確かに……」

 ヴェルスは、サラサ艦隊の見事な動きに対して、納得せざるを得なかった。


「総司令官閣下は、先程の敵艦の動きを、こちらが出足を止めたのではなく、次の攻勢準備と読み取った。

 私もそう思う。

 だから、ここは、敵の攻勢に再度備えないとならない」

 リンクは、とくとくと説明をした。


「!!!」

 ヴェルスは、言葉がもう出ないと言った感じで、頷く他なかった。


「全艦に通達!

 敵の攻勢が来る。

 決して、打ち負かされるな!」

 リンクは、やや緊張した面持ちで、命令を下した。




「どうかした?」

 サラサの方が、珍しくバンデリックに声を掛けた。


「!!!」

 バンデリックも珍しかったので、どう答えていいか、戸惑った。


 確かに、リーラン艦隊の方を見て、怪訝そうな表情で見てはいたのだが……。


「なに?」

 サラサは、バンデリックに引っ掛かっているものを吐き出させようとしていた。


 傍目から見ると、サラサが圧迫を加えているようには全く見えない。


 だが、バンデリックにとっては、敵以上のプレッシャーを感じていた。


「敵はなぜ反転攻勢を掛けてこないのでしょうか?」

 バンデリックは、思っていた事を白状した。


 現状、サラサ艦隊の足が止まり、陣形を組み直していた。


 攻勢の好機といえば、好機だと言える。


「乱戦になるのを避けたいんじゃない?」

 サラサは、まるで他人事のように言った。


 と言うより、エリオの心情をはっきりと読み取っているようだった。


 その為、ぶっきら棒に言ったのだった。


 要するに、エリオを相変わらず、忌々しく思っているのだろう。


 と言う事は、サラサにとって、今、一番やって欲しくない事をエリオは実行していた事になる。


「一気呵成という感じになると思うのですが……」

 バンデリックは、味方が不利になる事なので、あまり口にはしたくはなかった。


「そう言う考えもあるでしょうけど、どちらかと言うと、こちらが局面で数的有利を作りやすい状況になりやすくなる。

 それを避けたんでしょうね」

 サラサは、なるべくさらりと説明しようと努めていた。


 表情から、忌ま忌ましさは抜けていなかったが……。


「???」

 バンデリックは、今一理解できていないようだった。


「今は、距離を取った撃ち合うの方が、数的有利を活かせるから、わざわざ乱戦に持ち込まなくてもいいと言う考えよ」

 サラサは、ここまで、説明しなくてはならないのかという忌ま忌ましさが込み上げてきているようだった。


 まあ、要するに、エリオを褒めたくはないのだろう。


 とは言え、敵を褒めたくないのは普通の感情の筈だ。


「しかし、クライセン公の力量ならば、乱戦でも問題ないのでは?」

 バンデリックの脳裏には、スワン沖海戦の情景が浮かんでいた。


「全艦が、直属艦隊並の艦隊運動が出来れば、それもありでしょね」

 サラサは、そう言うと、苦笑いしか浮かんでこないようだった。


「うっ……」

 バンデリックは、その光景を思い浮かべると、絶句する他なかった。


「でも、まあ、敵としては、こちらを殲滅する必要がないからね。

 数的有利な状況を長く続けたいんでしょうね」

 サラサはそう言うと、最早忌々しく思っている事を隠せなくなっていた。


「はぁ……」

 バンデリックは、今度は溜息しか出てこなかった。


 サラサの言う通りで、現状、こちらが不味い状況である事を思い知らされてからだ。


「よし、再び攻勢に出る!

 全艦、このまま密集隊形のまま、敵左翼に突撃!」

 サラサは、命令を下した。


 ある意味、それは、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすかのようだった。


---艦隊配置---


       As

 SR    EC As

     As As

     As


EC:エリオ艦隊、As:アスウェル艦隊

SR:サラサ艦隊


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