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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
18. 激突 エリオvsルドリフ

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その10

 エリオは面倒臭いと思いながらも、更に話を進める必要があった。


 まあ、面倒臭いと思わない方が希なのであることは、突っ込まないで頂きたい。


 しかしながら、今回は面倒臭いというより、戸惑っているといった方がいいのかも知れない。


「実際の作戦行動中に、何か感じた事はありませんか?」

 エリオは気を取り直して、聞いた。


 2人は答える前に、また顔を見合わせた。


 何やら、不穏な空気を感じているようだ。


 不穏という言葉は、はっきり言うと、違う。


 どちらかと言うと、テストされているような感じを受けていた。


「奇襲の掛け方は見事でしたね。

 砲撃のタイミングといい、こちらの陣形もきっちりと嵌まっていました」

「それと、それを行う為に、正確な情報が如何に大事かを思い知らされました」

 2人はお互いに言う事をうんうんと頷きながらそう言った。


「……」

 エリオは尤もな答えが帰ってきたので、ポカーンとしてしまった。


 あ、いや、奇抜な答えが返ってくるとは思っていなかったので、ちょっと違う。


「数的有利でもきちんとした陣形を取らないといけない事も実戦でよく分かりました」

「確かに数的有利でも強引に攻めていたら、負けないにしても損害が馬鹿にならなかったでしょうな」

 2人は尤もな事を言い続けてきた。


(手応えを感じていいのでは……)

 エリオは、喜んでいい場面であるのにも関わらず、複雑な心境だった。


 クライセン一族は西大陸でも有数の海軍力を有している。


 だが、問題がない訳ではなかった。


 その最大とも言える問題は、人材難だった。


 艦隊を指揮統率する指揮官が少なすぎる。


 エリオと3男爵の内、一人でも戦死したら、たちまち瓦解しかねない位、深刻であった。


 そこで、一番期待が掛かるのが、この2人である。


 クライセン惣領家に連なるので、血統は申し分ない。


 エリオが気になるのは、この2人、自分を持ち上げすぎる事である。


 同年代でこんなに持ち上げられる事はないので、どう頑張っても2人に対して、穿った見方をしてしまう。


 そう、この2人は決定的な欠陥を持っているのではないかと……。


 ただ、エリオから離れて(?)、客観的に見れば、今の所、この2人は指揮官としては合格である。


 しかし、エリオを持ち上げすぎる点が、かなり残念なのである。


 とは言え、若いエリオには、人は誰しも残念な面がある事は知らないのであろう。


 ま、要するに、客観的に見れば、エリオの取り越し苦労であるように思える。


「しかし、閣下は流石ですな。

 うちの親父をあんなに手懐けているんですから」

「うちの親父なんか、閣下の命令をしっかりと実行する事に、躍起になってましたよ」

 2人は羨望の眼差しをエリオに向けた。


 それに対して、エリオは何とも気まずい思いをしていた。


 幼少の頃から、大人に触れる機会が多かった。


 子供は、大人が気を遣ってくれているから、上手く事が回っている事には気が付かない。


 そう、多少ワガママを言っても、大人がきちんと対処してくれるのである。


 じゃないと、事が上手く回らない。


 大人の場合、事が上手く回らない方が問題なので、子供のワガママと思って、捨て置いてくれる。


 こっちの世界で、子役が大人になると、全く相手にされないのは、これに気が付かない場合が多い。


 いつまで経ってもワガママ放題で通じると思って、そのまま行ってしまい、いずれ干されてしまう。


 だが、エリオはその逆で、気を遣ってくれている事に気が付いてしまう。


 その為、2男爵も気を遣って、自分を立ててくれているものと解釈している。


 という事で、意外に、自分の評価が客観視できてないのかも知れない。


 逆よりはいいのかも知れないが、度が過ぎると、ただただ残念な人間になってしまう。


 という事は、この結果は必然になる。


 そう、やはり、エリオは変な子なのである。


「それに、あのアスウェル男爵閣下も絶対服従だものな」

「うんうん」

 2人は、エリオを「兄貴」と呼んでいた頃に、戻っていくようだった。


 そう感じたエリオは更に居心地が悪くなってきた。


 取りあえず、事情聴取的なものは終わった。


 後は、次の段階で、きちんと任務をこなしてくれる事を願うばかりだった。


 だが、盛り上がりを見せ始めた2人に対して、エリオは終わりを切り出せなかった。


「閣下、そろそろ、次の段階へと移らないとなりません」

 真後ろにいたマイルスターは、エリオに助け船を出した。


「そうだな」

 エリオは、助かったとばかりに、後ろを振り向いた。


 そこには、笑いを堪えたマイルスターがいた。


 エリオは、途端に不機嫌にはなったが、表情には出さなかった。


「お2人とも、次の任務へ移って下さい。

 我が艦隊も、ここを一旦離れて、次の作戦に移行する」

 エリオは、総司令官として、やっと命令が出せた。


「了解しました」

「了解しました」

 マキオとサキオは、ハモるようにそういうと、敬礼した。


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