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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
18. 激突 エリオvsルドリフ

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その7

「敵旗艦の撃沈を確認」

 シャルスは、エリオにそう報告した。


「うん」

 エリオは頷くだけで、特にルドリフを倒した感想はなかった。


 エリオらしいと言えば、それまでだ。


 だが、自分を宿敵と思っていた相手が倒れたのだから何かあってもいいかとも思う。


 ただ、このような態度は別にルドリフを過小評価している訳では無い。


 近しい人間なら分かるのだが、外野からは絶対にそうは見られない態度でもある。


「掃討を行いますか?」

 マイルスターは、確認を取った。


 エリオは、それに答える前に、シャルスを見た。


「敵残存兵力は既に行動不能になっております」

 シャルスは、エリオの聞きたい事を答えた。


「よし、それならば、全艦隊を再集結させよ。

 次の段階へ移行する」

 エリオは、そう命令を下した。


 シャルスは敬礼をした後に、兼ねてからの作戦通りに、指示を伝令係に出した。


 マイルスターは、その光景を横目で見ながら、エリオの方を見た。


(もう既に、次の段階へと頭が切り替わっていらっしゃるのだな)

 マイルスターは、感心したような、呆れたような、いつもの感情でいた。


 恐らく、ルドリフを倒した感想を述べなかったのも、その次の段階がある事が大きく影響していた。


 余計な感傷で頭の回転を鈍らせるより、目の前の課題に全力で取り組むと言った所だろう。


 少なくとも、マイルスターにはそう感じていた。


「閣下、第2軍を動かしますか?」

 マイルスターは、戦況の変化に伴い、また確認を取った。


 第2軍とは、リーラン王国陸軍所属の第2軍だった。


 指揮官は、ミモクラ侯爵クルス。


 この軍は、当然海上で戦うものではなく、陸上で戦う兵力である。


 持って回った言い方をしてしまったが、要するに、揚陸作戦を行う為のものである。


 目的は、サキュスの拠点機能の破壊であった。


 ルドリフのリーラン王国への侵攻シミュレーションは、かなりのパターンを想定していた。


 どんな場合でも、クライセン艦隊の全力出撃、リーラン王国に達する前に迎撃する事を旨としていた。


 対する敵の想定も全力出撃を覚悟していた。


 幸いにも、今回の場合は、想定しうる最大戦力ではなかった。


 でも、まあ、現実的に考えると、これが用いられる最大戦力であるのは間違いなかった。


 エリオは、意外にも戦いの基本に忠実で、敵を各個に撃破を図る事を作戦の基本としていた。


 今回も敵の全艦隊が集結するのを阻止する事を第一目標とした。


 その為には、大遠征も厭わなかったし、その為の準備はしていた。


 そして、結果として、今回は功を奏した事になった。


 だが、まだ作戦の初期段階が成功したにすぎなかった。


 今回の最終目標は、敵の攻め手を無くす事であり、前述したように、それがサキュスの拠点機能の破壊である。


 壮大すぎる作戦である事は、間違いがなかった。


 現在は、その始まりにすぎなかった。


「作戦は順調に進んでいるので、このまま行く。

 3男爵の艦隊は一旦、後退し、補給を受けよ。

 揚陸部隊は、現状維持。

 我が艦隊は、サキュスの港に攻撃を仕掛ける」

 エリオは、テキパキと命令を下した。


 シャルスは敬礼後、長い命令を片付けに掛かった。


 エリオ艦隊は北上し始め、他の3個艦隊から離れていった。


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