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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
18. 激突 エリオvsルドリフ

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その6

「閣下、敵、総旗艦艦隊の位置を捕捉しました。

 1時方向です」

 ステマネが、揺れまくる艦上で、疲れ切った表情でそう報告した。


 ばっちゃん、ぐらぐらぎぃぎぃ、バキバキ……。


 ここまで粘ってきたが、もう集団としての機能はほぼ失われつつあった。


 10隻が既に海の藻屑となり、残りの11隻も戦闘機能を維持するのが限界に近付いていた。


 何とか、必死に戦線を支えている状況だ。


「全艦、1時方向に進路変更!」

 ルドリフは、珍しく冷静に命令を下していた。


 ステマネが敬礼後、それを伝令係に指示していた。


「届きますかね……」

 エンリックは、それを言った瞬間、ハッと我に返って、口を噤んだ。


「……」

 ルドリフは、それに対して、ニヤリとしただけで、何も言わなかった。


 もう届くとか、届かないとか言うレベルの話ではなくなっていたからだ。


 だが、これでも良将と評されているルドルフが率いる艦隊である。


 進路が定まると、一気に攻勢が強まった。


 そして、その攻撃は、アスウェル艦隊とティセル艦隊の連結部分を集中的に襲っていた。


 巧みで見事な集中攻撃だった。


 アスウェル艦隊とティセル艦隊は、圧倒的な有利な状況だった。


 なので、まともに攻撃を受ける事はしなかった。


 帝都駐留艦隊の乾坤一擲とも呼べる攻撃を受け流しに掛かったのだった。


 それにより、艦隊間の隙間が大きくなった。


 その隙間に帝都駐留艦隊が殺到した。


 殺到する事により、更に隙間が広がる。


 これで、帝都駐留艦隊は包囲網を突破できる形にはなった。


 だが、突破中に、両側面からアスウェル艦隊とティセル艦隊の攻撃があり、更に悪い事に、後方から突き上げられるようにアトニント艦隊の攻撃に遭った。


 これにより、帝都駐留艦隊は一気に戦線が瓦解した。


 満身創痍だったが、これで決定的なダメージを受ける事になった。


 それでも、すり抜けた艦が3隻あった。


 いや、この艦を突破させる為に、他の艦が犠牲になったと言うべきだろう。


「皆の働きに感謝する」

 ルドリフは姿勢を正してそう言った。


 傍にいたエンリックとステマネはハッとして、司令官に習った。


 そして、後方で燃え盛る味方艦達に思いを馳せた。


 3隻は前進し、エリオ艦隊を目前に捉えた。


 進路には邪魔する敵はなく、視界良好と言った所だ。


 しかも相手はたった5隻。


 無論、今の自分達より数は多いのだが、包囲網に参加していた敵艦隊はちょうど80隻。


 それに比べれば、大した事はないように感じたかった。


「ふん!!」

 ルドリフは、エリオ艦隊の全貌を見ると、苦笑する他なかったようだ。


 今まではそんな事を全く感じなかった。


 だが、ここまで追い込まれると、流石にエリオ艦隊の力量を感じざるを得なかった。


 異常なプレッシャーである。


 先程の3個艦隊の攻勢など、比べるべきではないと感じていた。


「全艦、敵、総旗艦に向けて、突撃!!」

 ルドリフは、味方を鼓舞するように、叫んだ。


 うぉーっ!!


 ルドリフの鼓舞に呼応するかのように、周りも叫んでいた。


 そして、間もなく有効射程に入る所でだった。


 ドッカーン、ひゅーん……。


 敵が先に撃ってきた。


 と思うと、先頭の2隻に直撃した。


 どーん、バキバキ!!


 2隻の足が止められたと持った瞬間、第2撃が更に襲った。


 ドッカーン!!


 轟音と共に、あっさりと2隻が沈んでいった。


 ルドリフの旗艦はそれを避けるように、前進。


「砲撃開始!!」

 ルドリフは、沈みゆく味方艦の間でそう命令を下した。


 ドッカーン!!


 命令はすぐに実行された。


 だが、命令した本人も撃った砲撃手も遠い事は認識していた。


 そして、敵の第3撃。


 ルドリフ達の砲撃は、エリオ艦隊に届かず、エリオ達の砲撃は、ルドリフの旗艦を的確に捉えた。


 どーん!!


 爆発音と共に、ルドリフが吹き飛ばされ、甲板に叩き付けられていた。


 余りの痛みに声さえも上げられず、もう身動きも取れなかった。


 そして、止めの第4撃が直撃した。


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