表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
14.リーラン王国沖 エリオ艦隊vsサラサ艦隊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/173

その4

「何で、こんな所で、とぐろを巻いてるのよ!!」

 サラサは、エリオ艦隊発見の報告を受けて、大声を張り上げた。


(やれやれ……)

 バンデリックは、報告する前からこうなる事を察していた。


 で、その通りになったので、特に感想はないと言いたいが、察した通り過ぎて、呆れる他なかった。


 まあ、それはともかくとして、エリオ艦隊が、明らかにここにいる必然性がない。


 エリオ艦隊がマライカンを出港し、東方に向かうらしいと言う報告を受けていた。


 それから、位置を予測すると、ここにいるのはおかしかった。


 そして、戦略的・戦術的にも意味がないと思われた。


「あいつは、あたし達を待ち構えていたって事!!」

 サラサは、また大声を張り上げた。


 激怒はしていたが、サラサは冷静にエリオ艦隊の布陣を観察していた。


 そして、更に、サラサを怒らせる事となる。


 エリオ艦隊は、海岸を背に布陣していた。


 背陸の陣だ。


 艦隊なので、陸は進めない為に、こう言った表現になる。


 まあ、また、それはともかくとして、どう見ても不利な陣形を敷いていた。


 数的有利、地の利と重なり、激高しているサラサ。


 だが、これで、突撃する条件が整っていた。


「全艦、停止!!」

 サラサは、激高したまま、怒鳴り声を上げた。


「全艦、停止」

 バンデリックは復唱して、伝令係に指示を出した。


「???」

 伝令係は、すぐに各艦に伝令すべく、走り出そうとした。


 が、一歩踏み出した所で、固まってしまった。


 この伝令係だけではなく、周りの水兵達も固まっていた。


 あれ?


 サラサの命令にもの凄い違和感を感じていた。


 何せ、態度と、出している命令がまるで噛み合っていなかったからだ。


 なので、何を命令されたのか、分からなくなってしまった。


「何をしている、司令官閣下の命令を速やかに、実行させよ。

 全艦停止だ」

 バンデリックは極めて冷静に、伝令係に指示を出し直した。


 伝令係は、バンデリックから改めて命令を聞いて、聞いた命令が間違いではなかった事を確認した。


 そして、速やかに実行するように、各所に伝令を出しに行った。


 ただ、妙な空気が漂い続けていた。


「閣下、よろしいのですか?」

 バンデリックは妙な空気の中、口を開いた。


 サラサの意図は分かってはいたが、この雰囲気は不味いと感じたからだ。


 サラサは、激おこぷんぷん丸な状況なのに、真逆な命令が下っていたからだ。


 しかも、ぷんぷん度合いは、収まるどころか、急激に上昇しているように見えた。


「よろしいも何も、こんな見え透いた手に引っ掛かる方がどうかしているでしょ!」

 サラサは、更にヒートアップしていた。


 視線は、エリオ艦隊を捉えて離さず、睨み付けていた。


(やれやれ……)

 バンデリックは、そう思う他なかった。


 とは言え、激高しながら、正しい判断が出来るサラサを流石だとも思ってはいた。


 でも、まあ、まだ妙な空気は続いていた。


 なので、バンデリックは、敢えて言葉を続けなくてはならなかった。


「閣下、注意すべき事はありませんか?」

 バンデリックは、抑制の効いた副官らしい口調でそう聞いた。


 らしからぬ声を聞いたサラサは、一瞬戸惑った。


 サラサは、バンデリックをまじまじと見た。


 そこには、副官をしているバンデリックがいた。


 サラサは、それを不思議そうな目で見た。


 バンデリックは副官なので、副官の仕事をしているのは当たり前なのだが……。


 でも、まあ、サラサはそれで、激おこぷんぷん丸から抜け出す事が出来た。


「敵のペースに合わせる必要はないわ。

 けど、軽挙妄動を避ける事。

 特に、海岸に近付いて、座礁する事のないように」

 サラサは、いつもより柔らかい口調でそう命令を出した。


「了解しました」

 バンデリックはそう言うと、伝令係に早速指示を出していた。


 怒ってたとは言え、冷静な思考が出来ないでいた訳ではなかった。


 出した命令も、今までの思考パターンから来たものだった。


 ただ、妙な空気になっていたので、バンデリックが気を利かせた。


 そして、それによって、艦隊の一体感が蘇った感じになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ