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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
18. 激突 エリオvsルドリフ

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その2

 太陽暦535年11月、ルドリフは帝都に預けていた艦隊を率いて北上した。


 リーラン王国王都カイエスへ侵攻する為だった。


 リーラン遠征への可否の結論は意外に長く掛かってしまった。


 フレックスシス大公を始め、軍の大勢は消極的だった。


 それに対して、積極派はルドリフ、そして、皇帝だった。


 こう言った時には、皇帝は口を挟む事はしないのが通例だった。


 そして、今回も通例通り、口を挟まなかった。


 だが、皇帝の意向と、ルドリフの粘りに粘った交渉は徐々に遠征可の方向へと向かっていった。


 消極派の方も、積極的に反対するという訳ではなかった。


 ルドリフの言う通りに、戦果が望めるのなら、やらせてもいいのではないかという雰囲気にもなっていった。


 ただ、フレックスシス大公は、リスクとリターンが噛み合っていないと感じていた。


 遠征にはかなりの負担が生じる訳である。


 今回の場合は、カイエスを占領する事は目的としてはいない。


 敵国の王都に損害を与える事により、その屋台骨を揺さぶろうというのが目的となっている。


 なので、リターンを大きくする為の方策が必要だと思ったのだろう。


 大公は、予てからのツテを持ち出そうとしていた。


「閣下、意外に時間が掛かりましたね」

 エンリックが、ルドリフにホッとしたような不安そうな複雑な表情でそう話し掛けてきた。


 艦隊は順調に北上しており、まずは母港であるサキュスへと向かっていた。


 そこで、全ハイゼル艦隊が揃う予定だった。


「大公が意外に頑固でな。

 結構、手間取ったよ」

 ルドリフは、やれやれと言った感じで、それに応じた。


「それはやはり、我が艦隊への牽制とみるべきでしょうか?」

 エンリックは、不安にの持っている事を聞いてみた。


 遠征そのものより、国内の権力闘争を気にしているようだ。


「それもあるとは思うが、大公はどうもに慎重さが目立つからな。

 戦場に出てこない分、不安が大きいのかも知れぬな」

 ルドリフは、更にやれやれと言った感じになっていた。


「しかし、閣下、戦場を知らない者が、無理な作戦を押しつけてくるよりはマシなのでは?」

 エンリックは、ルドリフとは異なる気持ちでいるようだった。


「!!!」

 ルドリフは、エンリックの思わぬ言葉に、ハッとした。


 そして、腕組みをした。


「成る程な、確かに、そちらの方が全然マシであるな」

 ルドリフは、そう言いながら深く頷いていた。


「それで、今回、我が艦隊だけではなく、バルディオン王国第2艦隊にも声を掛けたと言う事ですな」

 エンリックは、納得してくれた指揮官に対して、更に言葉を続けた。


「そう、今回の遠征は我が艦隊とワタトラ伯の艦隊で、合計70。

 敵艦隊は、30隻余り。

 倍以上集めれば、大公も安心という事になったのさ」

 ルドリフは、してやったりと言った表情になった。


 サラサは今回も手伝い戦に駆り出される事になった。


 とばっちりを受けた格好になったが、本人はどう思っているのかは今は想像ができなかった。


 まあ、サラサの思惑はともかくとして、全艦隊が一度サキュスに集結し、そこから、カイエスへに傾れ込む手筈になっていた。


 これは、バラバラに行って、各個撃破されないようにする為である。


 各個撃破は、エリオが最も得意とする戦法で、それをまずは封じようとしていた。


「第3次アラリオン海戦以来の大海戦になりますな」

 エンリックは、なるべく冷静になろうとしていた。


 とは言え、軍略家としては、大海戦は楽しみなものである。


「そうだな。

 だが、我が艦隊の方はそうでも、向こうはそうではないな」

 ルドリフは、ニヤリとしながらそう言った。


 第3次アラリオン海戦の時は、ほぼ同数。


 だが、今回は、ウサス・バルディオン連合軍の方が遙かに数的有利だった。


「……」

 エンリックは、ルドリフの言葉に、無言で力強く頷いた。


「それにしても……」

 ルドリフは、急にしみじみとした表情になった。


「!!!」

 エンリックは、珍しく見せる指揮官の表情を見て、びっくりしていた。


「これで、ようやく父上の仇が討てる……」

 ルドリフは、感極まっている様子だった。


「……」

 エンリックは、無言で、再び力強く頷いた。


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