その4
虫の知らせというものがある。
そう確信してしまったのだった。
エリオは、その夜、浅い眠りの中、夢を見た。
「エリオ、リ・リラの事を頼みますよ」
ラ・ライレがエリオに、きっぱりとそう告げた。
「はい、お任せ下さい」
エリオは、普段では絶対言えない言葉をきっぱりと言い切った。
そこで、これは夢だという事が、夢の中で分かった。
ラ・ライレは、エリオの言葉を聞くと、微笑みながらゆっくりと頷いた。
とても安心した笑顔だった。
そして、踵を返すと、白い靄の方へと歩き始めていた。
エリオは、何処に行くのかと思いながら、それを見送っていた。
と言うか、自分の体がこの空間にないという認識があったので、その後を追う事が出来なかった。
エリオは、ラ・ライレの行動を止めたかった。
だが、動けないし、もう、声も出せなかった。
焦ってきたが、もがく事さえも出来なかった。
すると、靄の一部が晴れた。
そこには、父サリオと母ディアナが、ラ・ライレを出迎えるようにいた。
その他にも、出迎えるようにしている人が一杯いた。
やがて、ラ・ライレはその人達と合流した。
合流と同時に、サリオがエリオに目配せをしてきた。
しっかりやれという事なのだろう。
そして、白い靄が再び濃くなると同時に、ラ・ライレとその人々が見えなくなった。
エリオは、全てを悟ったかのように、目を覚ました。
(この一連の気が晴れないような気分は、この事だったんだ……)
エリオは、目を覚ましたが、とても起き上がる気にはなれなかった。
茫然自失。
この言葉が最も似合う状況だった。
だが、彼の思考と性格がそれをさせなかった。
「陛下とのお約束を果たせねば!!」
エリオは、自分を鼓舞するように言うと、起き上がった。
(今は一刻も早く、王都に帰還する!!)
エリオは、そう思うと、行動を開始した。
それが、訳の分からない命令へと繋がっていた。




