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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
14.リーラン王国沖 エリオ艦隊vsサラサ艦隊
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その3

「閣下、ルディラン第2艦隊がこちらに向かっている模様です」

 シャルスがそう報告してきた。


 その報告に対して、エリオはげんなりした。


 エリオ艦隊は王都カイエスを出港し、マライカンを経由していた。


 そして、そのマライカンを出港したばかりで、東方のティセルへと向かっていた。


 兼ねてからの構想段階にあった計画を実行に移す為であり、珍しく意気揚々としての出発だった。


「……」

 エリオは水を差された格好になったので、無視したかったので、無言だった。


「……」

 シャルスはシャルスで、報告はきちんと成されたといった感じで、特にその後の言及がなかった。


(やれやれ……)

 マイルスターは2人を見て、いつもながら呆れていた。


 事が順調に進む分には、自分の役割がない。


 だが、都合が悪くなると、途端に事が全く進まなくなる。


 こう言う時に、決断を促す役割をしなくてはならない。


 それが、マイルスターの役割だと自覚していた。


「で、如何なさるのですか?閣下」

 マイルスターはいつもの言葉をいつもの和やかな口調でそう言った。


 和やかだが、そこにはすぐに決断するように迫るプレッシャーがあったのは言うまでもなかった。


「……」

 エリオはそれでも尚も抵抗するかのように、マイルスターに不満そうな表情を見せながら無言を貫いていた。


「第2艦隊は、我が艦隊の動きを察知しているのは明らかだと思います」

 マイルスターは更に決断を迫るように、柔やかにそう付け加えた。


「ふぅぅぅ……」

 エリオは大きな溜息をついて、うな垂れた。


 人生で何度もないだろう意気揚々とした感じのエリオに、突如降りかかった問題である。


 気持ちが分からない訳ではなかった。


 だが、そこまで落ち込むかと言った感じだった。


「現状、このまま東に進めば、第2艦隊と接触する前にティセルに出来るのではないですか?」

 マイルスターは柔やかにそう言いながら、シャルスに目で確認した。


「はい、参謀長閣下の仰る通りだと思います」

 シャルスは、マイルスターの意見に賛同した。


 2人は意見が一致した所で、エリオに注目した。


「はぁぁぁ……」

 エリオは違う大きな溜息をついた。


 プレッシャーが倍になったからだと言いたい所が、2人からのプレッシャーなんか、へっちゃらだった。


「進路、そのまま。

 第2艦隊との接触を避けるという事で、万事解決ですね」

 マイルスターはこの話はもうお仕舞いとばかりに、和やかにそう言った。


 ……。


 しばらく、沈黙が訪れた。


 エリオの抵抗は頑強かと思われた。


「ふう、そうも行くまい……」

 エリオは消え入りそうな声でそう言った。


「……」

「……」

 マイルスターとシャルスは、エリオに対して、何の反応も示さなかった。


 甘やかすのは良くないのである。


 エリオは、イヤイヤながら地図を広げている机の前に立った。


 2人がそれに続いた。


「敵第2艦隊の現在の推定位置は?」

 エリオはそう聞きながら、自分達の艦隊の位置に駒を置いた。


「恐らくこの辺だと思います」

 シャルスが、地図の上にサラサ艦隊を示す駒を置いた。


「バルディオン王国はどれくらいの諜報網を持っていると思う?」

 エリオは全く関係ないような質問をした。


「申し訳ございません。

 何とも言えません。

 ただ、我が艦隊の動きを察知した所見ると、侮れないと思います」

 マイルスターはそう見解を述べた。


「まあ、そうだろうな……」

とエリオは納得したような言葉を発してはいたが、腕組みをして、

「とは言え、我が艦隊の目的地を察知していたら、あそこからは我が艦隊を捕捉できないのは明らかだと思うのだが……」

と考え込むように付け加えた。


「目的地までは察知できなかったのでは?」

 マイルスターはエリオの言葉に対して、そう言った。


「そんなあやふやな情報で向かってくるかな……」

 エリオは納得できないでいた。


「ああ、それは閣下が出撃なさったので、突っかかってきたのでは?」

 シャルスはあっけらかんと言い放った。


 ああ!!


 マイルスターを始め、周りの水兵達もシャルスの言葉に誰もが納得した感じだった。


 無論、その中で、エリオただ1人だけは頑なに納得できないでいた。


 妙な空気というか、いつもの空気になったというか、まあ、そんな事はどうでもいいか……。


「で、閣下、如何なさいますか?」

 マイルスターは、当初の目的を見失わずに、柔やかにエリオに決断を迫った。


「トロイドス沖に艦隊を進め、しばらくそこで滞留し、様子を見よう」

 エリオはようやく決断をした。


「了解しました」

 シャルスは敬礼をすると、早速伝令係に指示を出した。


「あちらさんは我が艦隊を見付けてくれるでしょうか?」

 マイルスターは何気なくそう質問してみた。


「どうだろうね。

 でも、それで、バルディオン王国の諜報能力が測れる事は確かだね」

 エリオもまたマイルスターの質問に対して、何でもない風に答えた。


 とは言え、流石にこの辺は強かである。


挿絵(By みてみん)


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