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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
16.対面

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その6

 出会い頭という言葉がある。


 その後に続く言葉として、最も思い浮かぶものは、事故かも知れない。


 まあ、それはともかくとして、エリオ一行は島の西側へ向かっていた。


 目的地は温泉地。


 そして、この超展開について行ける人間は本当に選ばれし者だろう。


 そう、筆者の能力がないので、こう言った超展開になる。


 とは言え、モルメリア島上陸後のエリオは、いつも以上に気が抜けていた。


 それを書いても致し方がないのであった。


 筆者のことはさておき、この処置は、エリオの妙な雰囲気を慮っての事である事は言うまでもなかった。


 そう、マイルスターとマナラックが主導したのだった。


 そして、当然、その理由はエリオには知らされなかった。


 とは言え、エリオ自身は自分の態度故にこうなった事に気付いてはいた。


 しかしながら、エリオ自身、自分がどうしてこのような浮かない気分でいるのか、未だに分からなかった。


 そして、納得もしてはいなかった。


 なので、気分を変える為にも、全く興味がない温泉へと行く事にした。


 それにしても、温泉に興味がないとは、やはりエリオなのだと思う。


 そんな状況なので、エリオ一行は残念オーラを纏いながら、島の名前の由来となったモルメリア山へと向かっていた。


 「漢のロマン」と「温泉」


 ハイテンションになってもいい所だが、まあ、一生縁がないだろうと思わざるを得ない。


 港町フォールマから温泉街までは、一応道はあるものの、人工物はほぼなかった。


 海岸線沿いから島の奥に入り、森林地帯を抜けると、草原地帯へと入った。


「えっ!?」

「えっ!?」


 どちらとも、驚きの声が上がった。


 要するに、出会い頭の事故みたいなものが起きたのだった。


 稀代の策略家も、銀の死に神(?)も、この事態は予想外だったらしい。


 稀代の策略家は、強張った表情でその場に固まった。


(その存在は、脅威にならないような事を言っていたけど……)

 稀代の策略家の随伴者は、呆れた表情で、傍らに立っていた。


 銀の死に神(?)の方は、焦った表情を浮かべたのは一瞬で、すぐに平静を装った。


 そして、ゆっくりと稀代の策略家の方へと近付いていった。


(ええっと、遠目から観察するのではなかったのですか?)

 銀の死に神(?)の随伴者は、戸惑っていた。


 いや、どちらかと言うと、「ああ、やっぱり」と言った感じで、仕方なく一緒に近付いた。


 3人グループはその場で立ち止まり、2人グループは3人グループの前まで来て立ち止まった。


 ぴゅーうぅぅぅ……。


 5人の間には、いざ決戦といった感じで、風が通り抜けていった。


 ……。


 沈黙が訪れてしまったので、決戦とは行かないようだった。


 緊張したような空気と言いたい所だが、この5人が集まってしまったので、必ずしもそれだけではなかった。


 ぴゅーうぅぅぅ……。


 間抜けた空気になりそうになった所で、再び風が通り過ぎてくれた。


「……」

 銀の死に神(?)サラサは困った表情で、バンデリックの方を見た。


(そんな目で見られても……)

 バンデリックは、久しぶりに本当に困った表情のサラサを見た。


 だが、こんな時に頼られても、何ともし難かった。


 逆に、サラサ以上に困惑の表情を浮かべていた。


(お嬢様の意思で近付いたのではなかったのですか?)


 バンデリックの心の声が聞こえたのか、サラサはムッとした表情でバンデリックから視線を外した。


 そして、サラサは相対している3人グループを観察した。


 空気読まないシャルスは、どこ吹く風と言った感じで、その場に突っ立ていた。


 第3者になりきり、これから起こる事を楽しみにしている雰囲気さえあった。


 エリオに苦言を言いたいマイルスターは、取りあえず自然体でその場に立っていた。


 稀代の策略家エリオは、唯一警戒し、いつでも逃げ出そうという姿勢を取っていた。


 傍から見ても、エリオの「逃げ出すぞ、逃げ出すぞ」と言う態度は明らかだった。


「あ、いや、別にここで事を構えるつもりはないから……」

 サラサは、エリオから受ける妙なプレッシャーを受けて思わずそう口走っていた。


 そして、腰にあった剣を鞘に収めていたまま、右手で鞘を持ち、エリオの方に突き出してしまった。


 それに釣られて、バンデリックも仕方なく、サラサの行動に従った。


 自ら武装解除してしまった……。


(しま……)

 事の成り行きからそうなってしまったのだが、そう思う暇も無く、2人の剣が消えていた。


 まるで魔法のようだった。


 ピュー!!


 2人の間に疾風が駆け抜けた。


 そして、2人は思わず、疾風を追うように、後ろを振り向いた。


 すると、後ろには、2人の剣を抱えたエリオが、2人の来た方向へ走り出していた。


「……」

「……」

 サラサとバンデリックは、その様子を何も考えられずに見守っていた。


 エリオは、ある程度離れると、2人の剣を丁寧に道端に置くと、瞬時に戻ってきた。


 エリオは安心したのか、得意気な表情になっていた。


「……」

「……」

 サラサとバンデリックは、それを見て、お互い顔を見合わせる他なかった。


 エリオの傍らで、シャルスは笑いを堪えていたし、マイルスターは頭を抱えていた。


「それでは、一方的にこちらが不利では?」

 サラサは、呆然としながらも抗議らしき声を上げた。


 いや、状況を完全に把握しようとしたら、こう言わざるを得なかったと言う方が正しいか?


「!!!」

 エリオは、サラサの言葉を聞くと、ハッとした。


 すると、マイルスターとシャルスの腰にある剣を一瞬で奪い去った。


 そして、剣を抱えたまま、自分達が来た森林地帯へと向かって走り出していた。


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