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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
16.対面

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その5

 5隻のサラサ艦隊は、エリオ艦隊の入港から1週間後、ようやくモルメリア島近海に到着した。


「成る程ね。

 北上すると、潮流の関係で、従来のコースより早く東大陸に着けそうね」

 サラサは、快活そうにそう言い、納得した。


 エリオとは偉く違う表情だった。


 元々、快活なサラサと残念なエリオを比べる方が間違っていた。


 とは言え、現在、いつもより、その差は大きくなっていた。


 片や、相手の邪魔が出来るとウキウキしている人物と、得体の知れないプレッシャーを受けている人物。


 その差が、足された格好になっていた。


「モルメイア島は、中継地点としては最高の立地という事ですね」

 バンデリックは、サラサの言い分に賛同した。


 流石に、商人の流れを汲む家系だけあって、その辺の目利きは確かなものだった。


 戦力さえ十分であれば、クライセン一族より、ルディラン一族の方が、より効率的な商売が出来ていたのは言うまでもなかった。


 なので、バンデリックはクライセン一族の事を羨ましく感じていた。


 そして、それは、バンデリックだけではなかった。


「力さえあれば、やりたい放題と言った感じね」

 サラサは、バンデリックの言葉を受けて、何時になくネガティブな感じになっていた。


 先程までの快活さは何処へ行ったと言いたいが、エリオみたいにどんよりと言った感じではなかった。


 どちらかと言うと、反発心が勝っていたように感じられた。


 とは言え、エリオだって、やりたい放題やれている訳ではない。


 相対的な海軍力は確かに、バルディオン王国を上回っていた。


 それも結構圧倒的に。


 だが、だからと言って、それだけでは、何もかも思い通りに行く訳ではなかった。


 傍目から見ていると、中々それに気が付かない。


 そう、あれで、結構、エリオも苦労しているんですよ。


 とは言え、選択肢はサラサ達に比べると、多いのは確かである。


 それ故に、やりたい放題と言った言葉が出てくるのだろう。


「はっはっ……」

 バンデリックはその諸々な思いを含めて、苦笑する他なかった。


 当然、サラサにもその辺の事情は分かっていると感じたからだ。


「閣下、やはり、クライセン公は、帝国から東方貿易の権益を奪い取る気でいるのでしょうか?」

 バンデリックは、真面目な顔に戻って聞いてきた。


「その気でいるでしょうね」

 サラサは、端的に忌々しそうにそう答えた。


 その様子を見て、バンデリックは再び苦笑する他なかった。


「とは言え、あの島だけでは、そう簡単に上手く行かないでしょうね」

 サラサは、見えてきたモルメリア島を見据えながらそう言った。


「そうですね」

 バンデリックは、同じくモルメリア島を見据えながら同意した。


 ……。


 2人はしばらく黙って、近付いてくるモルメリア島を見ていた。


「えっ、と言う事は、バリア島へ侵攻する為の下準備って事ですか?」

 バンデリックは、ワンテンポ遅れて、気が付いた事を聞いてきた。


 ちなみに、バリア島は、モルメリア島の南東にあり、位置的には西大陸と東大陸のほぼ中間地点にある島である。


 この島は、ウサス帝国が領有宣言していた。


 そして、この島は、中間地点にあるが故に、現在は大陸間の中継貿易地として、栄えている。


「ああ、今回はそうじゃないでしょうね」

 今度はサラサが苦笑する番だった。


「……」

 即答で、否定されたので、バンデリックは怪訝そうで、困ったような表情になった。


「如何にリーラン王国が豊富な海軍力を有しているかと言って、そこまで、艦隊を派遣するかは疑問が残る所ね。

 現状ではね」

 バンデリックの困った表情を見たサラサは、補足をした。


「成る程……」

 バンデリックは腕組みをしながら現状を頭の中に思い浮かべた。


 そして、納得した。


 ウサス帝国とリーラン王国、海軍力は現状は拮抗しているように思える。


 それを崩す行為をすると、付け込まれる恐れがある。


 そう言った愚策をエリオがするとは思えなかった。


「さてと……」

 サラサは、今までの話題をガラッと変えるような感じで伸びをした。


「???」

 バンデリックは、目が点になりながら、警戒せざるを得なかった。


 碌でもない事を言う前触れだった。


「艦隊転針!

 一旦、島から離れる」

 サラサは、司令官口調でそう命令を下した。


「……」

 バンデリックは、呆然としていた。


 無論、「一旦」という言葉に思いっ切り引っ掛かっていたからだ。


「何しているの?

 命令を実行しなさい」

 動こうとしないバンデリックを、サラサが叱咤した。


「はっ、了解しました」

 バンデリックは、そう言って、敬礼すると、伝令係に指示を飛ばした。


「ああ、それと、島から離れたら、夜まで待機」

 サラサは、ややリラックスして次の命令を下した。


「その後は何をなさるつもりですか?」

 バンデリックは不安そうにそう聞いた。


「上陸できそうな所は確認できたしね」

 サラサは、そう言うと悪戯っぽく笑った。


 いや、サラサはごく真面目に言っているのだが、バンデリックには悪魔の微笑みに見えた。


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