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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
16.対面

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その3

 ゆらゆら、ゆら……。


「で、どうするのです?」

 一夜明けてから、バンデリックは、サラサに質問した。


 選抜された5隻の艦隊は停止していた。


 なので、バンデリックが珍しく有利であるのは間違いがなかった。


 そう、現状は、進路に迷っていると言った所だった。


「……」

 サラサは、無言で机上の地図をジッと見ていた。


 バンデリックの声が聞こえない訳ではなかった。


 バンデリックが有利な状況なので、無視を決め込んでいる訳でもなかった。


 現在位置以東の海域は、バルディオン王国の哨戒網はないので、エリオ艦隊を捕捉できなかった。


 要するに、エリオ艦隊が何処へ向かったかはよく分かっていないのが、現状だった。


 まあ、そのぉ、困っているのだった。


(ははーん、お嬢様でも、困る事があるんだな……)

 バンデリックは、勝ち誇ったように、サラサを生暖かく見守っていた。


 サラサは、地図を指でなぞりながら、思案しているかのように見えた。


 いくら、サラサでも不可能な事はあるものだ。


 ……。


 2人の会話がなくなり、沈黙の時が流れていった。


 周囲は、それをジッと見ていた。


 何だか、暗雲が立ち込めてきたようだった。


 心なしか、サラサの表情も強ばっているように見えた。


(そんなに考えても、無駄な事は無駄だと思うのですが……)

 バンデリックは、更に得意気な感じで、生暖かい視線をサラサに送っていた。


 そんな中、サラサは、

「さてと……」

とタイミング良く、声を上げた。


(撤退ですね……)

 バンデリックは、ようやく降参するのかと思った。


「このまま東に向かうとしても、問題は、やっぱり、リーランの哨戒網よね」

 サラサは、まとまった考えをぽつりぽつりと話し始めたようだった。


「いっ!?」

 バンデリックは、サラサの予想外な言葉を聞いて、表情を強張らせた。


「たぶん、このコースで行けば、哨戒網には引っ掛からずに進めると思うけど、あいつ、性格悪いからねぇ」

 サラサは、独り言のように、更に自分の考えを話し続けていた。


 エリオは、性格が残念と言われるが、悪いとは言われる事はあまりないかも知れない。


 いや、敵にしてみれば、確かにあれ程、性格が悪い人間はいないかも知れない。


 まあ、それはどうでもいい。


 それより、サラサの考えに、周囲どころか、バンデリックさえも付いて来られていないのは明らかだった。


 得てして、天才などそんなものかも知れない。


「まあ、これ以上、机上で考えても無駄ね」

 サラサはサラサで、いつも通りのマイペース振りだっただけだった。


「……」

 バンデリックは、先程と打って変わって、いつもの驚愕の表情になっていた。


「進路は、このまま東に。

 後に、やや南に進路変更した後、回り込むように、北上」

 サラサは、指で地図を指し示しながら航路設定を説明していた。


 当然、周囲が全く付いて来られない状況が分かっていないようだった。


 その証拠に、仕事をやり切ったという満足感が滲み出ていた。


「閣下、何処に向かうおつもりですか?」

 バンデリックは、堪らず質問する他なかった。


 驚愕の表情から、いつもの呆れた表情に変わっていた。


「えっ?」

 サラサは、バンデリックの質問が上手く飲み込めていないようだった。


 意外と言った顔で、バンデリックを繁々と見ていた。


(いやいや……)

 バンデリックは、繁々と見られてもと感じていた。


 ただサラサの反応がない……。


「閣下、最終目的地をまだ、伺っていないのですが……」

 バンデリックは、仕方がなく、現状を説明した。


「あれ?そうだった?」

 サラサは、現状に驚いていた。


「はい……」

 バンデリックは、サラサの表情を見て、呆れる他なかった。


 とは言え、ここまで、サラサがのめり込むのも、あまり類がないことだった。


 それ程、エリオを重要視していることの証左だった。


 なので、バンデリックは一抹どころか、かなりの不安を感じざるを得なかった。


「最終目的地は、モルメリア島よ」

 サラサは、只ならぬ空気になってきたのを無視するかのように、あっけらかんと言った。


「モルメリア島ですか?

 あの火山島の?」

 バンデリックは、サラサの思わぬ答えにびっくりしていた。


 行き先もそうなのだが、ここまではっきりと最終目的地を言われると思わなかったからだ。


「火山島と言っても、最近は、『ドッカーン』とは行っていないようよ」

 サラサは、不思議そうな表情になった。


 いやいや、食い付く所はそこではないだろう。


「いえ、閣下、そうではなくて……、何故、敵艦隊がそこに向かうと確信なさったのですか?」

 バンデリックは、さっきから、驚いたり、呆れたりを繰り返していた。


 あ、まあ、いつもの事なのだが……。


「あれ?知らないの?」

 サラサは、また不思議そうな表情をした。


(だから何をです?)

 バンデリックは、噛み合わない会話に呆れていた。


 だが、それを口には出さなかった。


 そして、次の説明をじっと待った。


「最近、あの島を経由して、東方大陸に行く商人が増えているそうよ」

 サラサは、バンデリックの気持ちなどお構いなしだったが、予想通り、次の説明をした。


「ああ、そういう事ですか……」

 バンデリックは、サラサのこの説明で、全て納得したようだった。


 この辺は、流石に、元々商人の国、バルディオン王国の住民だと言えよう。


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