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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
15.新東方貿易ルート構築

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その10

 ラ・ライレの予想通りに展開になった。


 エリオとリ・リラは、出された課題のみを完璧にこなしてきた。


 その間、2人の間柄に大きな変化はなかった。


 それでも、ラ・ライレは諦める事はしなかった。


 エリオが王都にいる時には、2人っきりになるように仕向け続けた。


(しっかし、ここまで仕向けても、変化がないとは……)

 ラ・ライレは、ほとほと困り果てていた。


(とは言え、幼い頃からずっと一緒にいる事が当たり前なんだから、今更そんなに変わる事はないのかも知れませんね)

 ラ・ライレは、ここが思案の為所だと感じていた。


 ただ、変化がない訳ではなかった。


 2人に、実務そのものの課題を与え続けたお陰で、後々の行政業務がスムーズに行く切っ掛けとなっていた。


 まあ、それは後々の話である。


 それは、国にとっては、有益極まりない話なのだが、今のラ・ライレにとっては些末な話である。


 次にどう言う手を打とうか、考えなくてはならない。


 でも、まあ、ここまで手間を掛けるのなら、いっその事、女王命令を出せばいいのではないかと思わなくはない。


 当のラ・ライレもそれは何度も思っていた。


 だが、これから長い人生を考えると、余計なお節介により、2人のスタートを壊してしまう方が不味いと思っていた。


(ならば、環境を激変させるのもいいのかも知れませんねぇ……)

 ラ・ライレは、そう思うと、ふと、一つの計画書が目に入った。


 それは、提出されたものの、長い間放置されていた「新東方貿易ルート」だった。


 ラ・ライレは、それを手に取ると、「これだ」と思った。


 そういう事で、エリオはモルメイア島へ派遣され、リ・リラは王都で留守番という事になったのだった。


 どういう事でそうなったかというと、近付けてもダメなら、いっそこの事、遠ざけてしまおう作戦だ。


 そうすれば、お互い、如何に大事な存在かが身に染みて分かるだろうという事だ。


 斯くして、女王の壮大な計画は実行されたのだった。


「どうかなさいましたか?閣下」

 ティセルを出港中に、マイルスターはエリオに聞いてきた。


 エリオが何だか浮かない顔をしていたからだ。


 冴えない顔をしているのはしょっちゅうなのだが、浮かない顔はあまりない。


 区別が付くのかというと、近い人物以外付かないだろう。


「あ、いや、何でもない」

 エリオはそうは言ったが、明らかに浮かない顔をしていた。


「そうですか……」

 マイルスターは、総司令官がそう言った以上、それ以上は聞かなかった。


 「漢のロマン」への旅路だというのに、浮かない顔をしているのは妙だとは思った。


 だが、本当に不味い時は、聞く前に、手を打ってくるので、取りあえずはそのままにした。


 エリオはエリオで、王都を出港する時のことを思い出していた。


 ラ・ライレにしても、リ・リラにしても、妙だった。


(陛下は妙に気合いが入っていて、殿下は何時になくアタリがきつかったような……)

 エリオは、人間関係を気にする質ではなかったが、この2人は別だった。


 頭が上がらない存在ではあるが、特別な存在である。


 ラ・ライレの気合いは、自分の計画に掛けているからである。


 リ・リラのアタリは、自分はその計画に薄々気付いているのも関わらず、エリオの方はその計画に気付かない事に対してだった。


「進路上に、敵影なし。

 周辺海域にも、同じく敵影なし」

 シャルスがそう報告してきた。


 エリオが、色々気にしている間にも、艦隊は進み続けており、全てが順調だった。


 一時はどうなるかと思われたが、事は順調に進み始めていた。


 こうなると、素直に希望を持って、進めばいいものである。


 だが、その辺は、エリオである。


(これから、どうなってしまうのだろうか?)

 気苦労が絶えないエリオだった。


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