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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
26.幼き時

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その2

「そこのデカブツ!」

 夕日を見詰めていて、いい気分になっていたバンデリックに突然罵声が。


「???」

 バンデリックは、目の前の美しい夕日と罵声のコントラストに戸惑っていた。


 普通ならムッとすると思うのだが、この頃から感性が、と言うより、性格が鈍かったのか、表情一つ変えなかった。


 夕日に見とれた表情のままだったのだった。


「何で、お前はこんな所にいるんだ!」

 銀髪の子は、忌々しそうにそう言い放った。


 罵声に関しては、得意といった感じだった。


「???」

 バンデリックは、まだ戸惑っていた。


 何で罵声を浴びせられているかが分からなかったからだ。


 と言いたい所だが、その子の言っているとおり、自分は何でここで夕日を見詰めていたのだろうか?と言った気持ちになっていたからだ。


「そもそも、お前、誰なの!?」

 反応が薄いバンデリックに対して、益々ヒートアップしていった。


 ある意味、この手の子に対して、一番やってはいけない態度なのかも知れない。


とは言え、鈍い頭の回転の中、バンデリックが何やら導き出していた。


「君、人に名を聞く場合は、自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」

 バンデリックは、やれやれと言った感じでそう言った。


 あまりの態度の悪さに呆れていたのだった。


 とは言え、怒ってはいなかった。


 明らかに自分より年下だったので、ただの礼儀知らずとと感じ、年上の寛大さを見せた格好になった。


 と言うより、明らかにバンデリックの性格がそうさせていたのだった。


 まあ、怒っていると言うより、むくれていて、可愛さもあったのだろう。


「お前、あたしを知らないのか……」

 銀髪の子は、呆れているような、いや、どちらかと言うと、絶望しているような表情をしていた。


「知らないも何も、初対面だよねぇ……」

 バンデリックは、ますますやれやれ度を高めていた。


 まあ、バンデリックの言い分は尤もだ。


 2人は全くの初対面だったからだ。


「なっ……」

 銀髪の子は、絶句していた。


(どういう事?)

 バンデリックは、ここで初めてもの凄い違和感を感じた。


 知っていない方がおかしいのかという衝動に駆られたからだ。


 とは言え、初対面なので、知らないのは当然だという確信も依然強かった。


 ……。


 となると、訪れるのは沈黙。


 ピュー。


 妙な隙間風が絶妙なタイミングで吹いた。


 まるで、2人の気持ちをリセットするかのように。


「成る程……」

 絶句していた銀髪の子は、ニヤリとした。


 悪さを思い付いた表情なのだが、やはり、あどけなさが前面に出ていた。


「……」

 バンデリックの方は、何故か追い込まれた気分になり、沈黙を続けていた。


 それまで明らかに不機嫌だった人間がニヤリとするのは、人生経験が浅いバンデリックでも何となく察しがついたからだ。


 そして、ニヤリとした事で、攻撃性が弱まった訳ではなく、溜め込んでいると言った感じを受けていたので、尚更だった。


 ある意味のバンデリックの察しの良さは、この時から急速に身に付いたのかも知れないですな。


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