その12
「船長、これからどうするの?」
サラサは、単刀直入に質問を投げかけた。
「『どうする』って、そりゃ、逃げる他ないでしょう」
船長は、サラサから思わぬ質問を浴びせられたと言った感じだった。
「いえ、そうじゃなくて、我々2人をシーサクに引き渡す事も出来るんじゃない?」
サラサは、悪戯っぽい笑みを浮かべて質問した。
(やれやれ……)
バンデリックは交渉する前に、本音を聞き出そうとしたサラサに呆れた。
とは言え、らしいと言えば、らしいとも思った。
「ああ、そう言う事ですかい……」
船長は、困ったような表情で、頭を掻いた。
サラサとバンデリックは、それをジッと見ていた。
傍にいたキヘイも同じような感じだった。
「その選択肢は、ほぼ無いですな」
船長は、困った表情のままそう言った。
言いにくそうな雰囲気だった。
「どうして?」
サラサは、船長にその先の説明を求めた。
「我々は、捕まったら只では済まされない連中の集まりでしてね。
そして、その多くは絞首刑になりかねない」
船長は、そう言いながら首を絞めるゼスチャーをした。
おどけているつもりだったが、サラサは気にもしないと言った表情をしていた。
「我ら2人を差し出せば、その功績として、罪一等は確実に減じてくれる思うけど」
サラサは、ズバズバと自分の考えを述べた。
バンデリックは、更に呆れていた。
どう見ても、自分達の不利になりかねないからだ。
「そうかも知れないが、そうすると、契約を反故にする事になる。
契約を反故にした商人なんて、もう誰も相手にはしないから、後は野垂れ死にするだけになる。
色々な死に方があるが、俺達にとっては、野垂れ死は一番良くない」
船長は、おどけた表情から真剣な表情に変わっていた。
「成る程ね」
サラサは、考え込むようにそう言った。
ただ、船長の言い分には納得したようだった。
(そうか、彼らは自分達を商人だという認識があるのだな)
バンデリックは、バンデリックで妙な所に感心していた。
「今なら、閣下がいますしね。
それなら、この危機を逃れられる方に掛けた方が、野垂れ死にするよりは遙かにマシだと言うことになります」
船長は、決意を見せた。
「あまり期待されても困るわね」
サラサは、再び悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ご謙遜を……」
今まで黙っていたキヘイが、決意を見せるかのように口を開いた。
これにより、サラサ達はシーサク王国に売られる事は回避できたようだった。
(しかし、いつも率いている艦ではない……)
バンデリックは、一つの懸念事項はなくなったが、根本的な問題を不安視するのだった。




