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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
25.死線

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その10

 サラサとバンデリックは、即日カマフィンジィーを出立した。


 再び、マダックとリックに戻ったというか、まあ、それらになって、出立していた。


 来た時の陸路ではなく、ベイジからカマフィンジィーに南下していたボーリックの船と合流しての出立だった。


 進路は、そのまま東に取る訳ではなく、ベイジとは逆回りに当たるブルダニに寄った。


 そして、再びベイジに寄ってから、トット連盟を離れ、東へと進路を取った。


 商売をしながら、順調に航海していたが、ふと、マダックとリックは違和感を感じていた。


 急な進路変更があったからだ。


 船乗りである2人は流石にすぐに気が付いた。


「おかしいですな……」

 リックは、事務仕事の手を止めて、何か言おうとした。


 だが、マダックに睨まれた。


 リックは、すぐに言葉に詰まり、何で睨まれたか、悟った。


「おかしいな、進路が急に変わったな。

 何か、あったのだろうか?」

 リックは、言い直した。


「兄貴、確かに変ですね。

 急に、南に進路を取りましたね」

 マダックは、リックに同調した。


「失礼致します」

 訝しがる2人のところに、キヘイがタイミング良く部屋に入ってきた。


「キヘイさん、何か、ありましたか?」

 リックは、キヘイが2人の前で立ち止まる前に、聞いた。


「ほぅ、流石ですな」

 キヘイは、いつもの丁寧な口調でいたが、流石に感心している様子だった。


 そして、改めて表情を戻して

「寄港地をティスザサーから西隣のシュメリグラズザルに変更しました」

 と続けた。


 表情を戻したのは、商談の癖で、ポーカーフェイスが身に付いているせいだろう。


 口調もいつも通りで、一定であった。


 これも、商談の癖なのだろう。


 マダックは、それを見て、妙に感心していた。


「……」

 リックの方は、一瞬、ポカーンとして黙ってしまった。


 なので、変な間が空いてしまった。


「そうではなく……」

 緊張感がない空気になってしまったので、リックは慌てて何か言おうとした。


 だが、キヘイはそれを手で制した。


「はい、緊急事態です」

 キヘイは、言っている事と態度が大きく異なっていた。


 表情も口調も全く変わっていなかったからだ。


 マダックは、更に感心し、リックは、苦い顔をしていた。


「なんでも、船長が言うには、どうも嫌な雰囲気になっているとの事です」

 キヘイは、進路変更の訳を話し始めた。


「……」

 リックは、黙って聞いてはいたが、どうにもまどろっこしさを感じているらしく更に苦々しいと言った表情になった。


(バンデリックは、商売向きではないな……)

 マダックは、2人を見比べながら、妙な事を考えていた。


「どうやら、トット連盟とバルディオン王国が外交交渉を行ったという情報をシーサク王国が察知したとの事です。

 警戒態勢が敷かれそうなので、面倒に巻き込まれる前に、寄港地を変更した方がいいと船長は判断したようです」

 キヘイは、やはり表情も口調も変わらないので、説明が単調すぎた。


 なので、危機が起きているのか、平常運転なのか、今一判断しかねないと言った雰囲気になっていた。


「……」

 リックは、そういった雰囲気に呑まれているようで言葉が出てこなかった。


「でも、それでしたら、進路を変更した方が、不味いのでは?」

 マダックは、やれやれと言った感じから、質問した。


 当然、これは、お前の役割だろうと言った視線をチラリとリックに送っていた。


「我が船のみですと、そうでしょうが、他の船も王都を避ける船が続出していますから、問題はないでしょう。

 商人は、避けられる面倒事は避けますので」

 キヘイは、一旦頷いてから、そう言った。


 口調や表情はまたまた変わっていなかったが、流石に察しがいいと言った態度を取っていた。


「成る程」

 リックは、納得したように頷いた。


(確かに、船長の判断は正しいのだけど……)

 マダックは、自分に指揮権がない事を痛感せざるを得なかった。


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