その1
エリオとリ・リラのラブコメが進展があった頃、マダックとリックはこれからという感じだった。
え?誰かさんが匙を投げていたって?
そんな事実はありません。
それはともかくとして、マダックとリックのこれまでの航海は順調そのものだった。
そして、全く問題なく、シーサク王国の王都ティスザサーを出港し、トット連盟の港湾都市ベイジへと向かっていた。
そこから、トット連盟の首都カマフィンジィーへは陸路を使う事となる。
これまで、何もなかった事で、マダックとリックは、些か拍子抜けしていた。
バルディオン王国からトット連盟へ使者が送られる事は、想像できるものである。
ただし、常時監視の対象になるかと言えば、そこまで優先順位が高いものではないので、常時には監視されてはいない。
なので(?)、マダックとリックは、順調に航路を進んでいた。
でも、まあ、仮に邪魔が入った場合、恐らく2人の手に負えない状況になる事は明らかだった。
ので、警戒以上の事は出来ないと自覚はあった。
ある意味、腹を括っていた。
そんな状況の中、2人の乗った商船は、あっさりとベイジへと辿り着いてしまった。
入港もスムーズに済み、入国審査もあっさりと済んでしまった。
これは、マダックとリックの運がいいという訳ではなく、乗っていた商船が、様々な手続きをきちんと行っている証左だろう。
この事は、前回のシーサク王国の時も同様なのだろう。
「ま、日頃から目を付けられないように、気を付けていますからね」
キヘイは、マダックとリックにあっけらかんと言った。
「……」
「……」
マダックとリックは、顔を見合わせる他なかった。
まるで、キヘイを始め、この怪しげな商船の日頃の行いがいいと言われた気になったからだ。
そして、それはともかくとして、3人は、商隊を組んでいる馬車群の中の中央の馬車に乗り込んでいた。
この一行は、ベイジから王都マフィンジィーまで、商売を行いながら向かう予定だった。
船の方は、海路で王都マフィンジィーまで、向かい手筈になっていた。
商隊は、ベイジの城壁を抜けると、荒野を次の街へと進んでいった。
数々の街を回ったが、ここでは特に特筆すべき事はなかった。
マダックとリックは、キヘイの事務補助をこなしながら、淡々と旅をした。
そして、余計な時間は掛かったものの、無事、王都マフィンジィーに入る事が出来た。
「キヘイ殿を始め、色々な方々にお世話になりました。
改めて、お礼を申し上げます」
リックは、キヘイに別れの挨拶をした。
「いえいえ、まだ、行程の半分ですよ」
キヘイは、いつも以上ににこにこしながらそう答えた。
(確かに……)
マダックは、終始笑顔であるが、冷静なキヘイを見て驚いていた。
流石にこの道のプロと言った所なのだろう。
「では、ひとまず、失礼しますよ」
マダックは、キヘイにそう言うと、リックと共に歩みを進めた。
2人は、裏ルートで、連盟本部へと招き入れられた。
裏ルートとは言え、目立たないようにするための措置であるので、正式なルートの一つではある。
そのルートを通り、宛がわれた部屋で、身なりを整えた。
そして、時をあまり置く事なく、サラサとバンデリックは、盟主の執務室へと招かれていった。




