その13
エリオは、何時にない感覚で会議を終える事となった。
まあ、その事に関しては、どうでもいい。
エリオ自身、特に、落ち込んだり、憤慨する気持ちが全くなかったからだ。
なので、意外と淡々と他の面々と、会議室を出ようとした。
「クライセン公は、残るように」
リ・リラは、女王らしい鋭くよく通る声で、エリオを呼び止めた。
「はい……」
エリオは、驚きながら立ち止まり、振り向いた。
その横を、ラ・ミミ、ロジオール公、ヤルスが、何事もなかったように、と言うのは嘘で、謎の笑顔を浮かべながら通り過ぎていった。
そう、あのヤルスでさえ、ちょっと引きつっていたが、謎の笑顔を浮かべていたのだった。
エリオは、訳分からないといった表情になったのは言うまでもなかった。
だが、3人は、エリオ以上、いや、リ・リラを含めて、2人の関係をよく分かっていたのだった。
「非公式な話なので、記録する必要はありません」
リ・リラは、書記官達にも退室を促した。
2人の書記官は、急いで立ち上がると、畏まって、一礼すると、そそくさと退出していった。
……。
会議室の中には、エリオとリ・リラの2人だけになった。
モジモジするリ・リラ、???のエリオ。
いつも通りの対照性であった。
「エリオ……」
リ・リラは、エリオに顔を背けて、そう言った。
「はい……」
エリオは、逆にリ・リラの方に歩み寄った。
ここでも、対照的だった。
「あなたの……申し出を受け入れます」
リ・リラは、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにやっとの思いで言い切った。
こういった決断に至ったのは、エリオがやたらとサラサの事を口にした事に起因する。
まあ、これは蛇足で、ちょっと野暮かも知れない。
とは言え、こんな事がない限り、2人の中が進展しないのは、どうなんだろうか?
そして、さっさと退出していった3人は、漸くかという思いがあったのは言うまでもなかった。
その場にいなくても、分かり切った事である。
「陛下、何の話でしょうか?」
エリオは、大真面目な表情でそう聞いてしまった。
やはり、この男は、只の間抜け者である。
折角の立場逆転の大チャンスをこうやって見逃してしまうのだから……。
そして、この後、リ・リラに締められたのは、言うまでもなかった。
もういい加減にしようよ、2人とも……。




