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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
24. 西の方向

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その10

「何故、シーサク王国の王都に寄るのですか?

 他の都市の方が、安全な気がしますが……」

 マダックが、ティスザサーに上陸する寸前に、キヘイに質問した。


「木を隠すには森の中ですからね。

 他の都市より、多くの商人が出入りしますので、我々みたいのは、意外と寄港しやすいのですよ」

 キヘイは、笑顔でそう言った。


 と言うより、他の表情はあまりない。


 キヘイは、商人と言っても事務方なので、それ程愛想良くしなくてもいい筈である。


 本人の性格なのだろうか?


「木なのでしょうか?我々は」

 マダックは、リックと顔を見合わせながら、そう言った。


「大丈夫ですよ。

 木と思えば、木になりますから」

 キヘイは、断言した。


 この言葉に、マダックは怪訝そうな表情になり、リックは呆れた様な諦めた様な表情をした。


 そんな2人の気持ちを知ってか知らずか、キヘイは、ゆっくりとタラップを降りていき、上陸した。


「まあ、こんな機会でもない限り、平和裏にここに来る事はないでしょう」

 リックは、前向きのような事を言って、キヘイに続いた。


「……」

 マダックの方は、前向きにも解決にもなっていない事を悟りながら、無言で2人に続いた。


 そして、3人は、荷の搬出作業に立ち会いながら、事務仕事を続けた。


 それが、一段落すると、3人で、市場へと足を運ぶ事になった。


 ティスザサーの第1印象としては、質実剛健な感じがした。


 派手さはないが、やはり、王都である威厳みたいなものは感じられた。


 こうして比べてみると、キンダザゥは、意外と活気があるのだなと、マダックは感じていた。


 マダックが知っている外国の首都としては、ネルホンド連合のブリークワッスとウサス帝国のナラーバラ、それにスワンウォーリア法国のベロウの3つだった。


 それぞれ特徴があり、全て異なる都市だった。


 ブリークワッスは大陸一の商業都市であるので、活気がありすぎていた。


 ナラーバラは、帝都としての威厳があり、国力を誇示するかのように、煌びやかだった。


 ベロウは、特殊すぎてよく分からず、確かに宗教都市である事は認識できた。


(外国、特に、敵国をこうして訪れてみるのも、勉強になるものね)

 マダックは、そう思いながら、周りの雰囲気を味わっていた。


 3人は、市場の奥へと足を向けていた。


 特に、当てがある訳ではなかった。


(敵国とは言え、当たり前だけど、普通に人々が生活しているわね)

 マダックは、当たり前の事をしみじみと感じていた。


 敵国の国民だからと言って、悪鬼やならず者と言った訳ではない。


 ただ、そこに生活している人々がいるだけだった。


 そう、大体は無害な人達である。


 それを市場に来て、思い知らされた感があった。


 そう考えると、戦争しているのが馬鹿馬鹿しくなってきた。


 と同時に、だからと言って、座してやられる訳にも行かないという思いもあった。


(まあ、今はともかく、任務に集中するとしますか……)

 マダックは、慣れない任務に翻弄されている自覚が十二分にあった。


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