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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
24. 西の方向

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その7

 クラセックは、洋上にいた。


 勿論、自分の商船に乗っていた。


 そして、船団を組んで、ネルホンド連合の首都ブリークワッスに向かっていた。


 クラセックの商船上には、スワンウォーリア法国の旗がはためいていた。


 クラセックは、デウェルを本拠地にした時から、法国の旗を掲げる事を許されていた。


 それは、デウェルの宣伝を兼ねていたからだ。


 クラセックが向かっているネルホンド連合は中立を旨としている


 まあ、その中立地と言うより、貿易地といった方がしっくりくるかも知れない。


 貿易を行う事により、莫大な富を築いている事からそう言った方がしっくりする。


 そして、中立を旨とするのは貿易を盛んにする為でもある。


 そういう方針なので、リーラン王国とネルホンド連合との貿易も盛んである。


 ホルディム家のシェアが非常に高かったが、内乱後は、そのシェアのほとんどが、ネルホンド連合の商人達に持って行かれていた。


 商売では信用が大事であり、新参者扱いのクライセン家系の商人は、すぐには信用される訳ではなかった。


 とは言え、デウェルが商業港として、運用が可能になってきたので、巻き返すチャンスはあるとクラセックは考えていた。


 これまで、西方貿易は、アラスパザを経由しての貿易が主だった。


 それが、デウェルが出現した事により、そこを経由しなくても西方貿易は成り立つ事となった。


 それにより、ネルホンド連合に寄る港の数が減らせる。


 つまり、競争相手に払う経費を抑える事が出来るようになるのである。


 後は、デウェルの港が如何に効率よく整備されるかに掛かっていた。


(なのに、不思議だよな?)

 クラセックは、甲板で離れていく船団を見詰めていた。


 船団は西の方へ向かっていた。


 航路からしてアラスパザを出港して、シーサク王国のどこかの港に向かっている事は明らかだった。


 そして、その中に、デウェルで見掛けた商船を発見していた。


 アラスパザとデウェルは、貿易中継地点であり、比較的近距離にある。


 なので、連続して寄港するのは、あまりない。


 効率性を重んじる商人達は、そんな事をしないからだ。


 まあ、ない訳ではないので、偶然それを見掛けたと言う事もあるが、クラセックにはそうは思えなかった。


 妙な3人組の乗っている商船だったからだ。


 寄港地を増やす事によって、ロンダリングをしているように思えたからだ。


(何をしようとしているか、分からないが、一応、公爵閣下にお知らせしておくか……)

 クラセックは、そう決意するとともに、筆記用具を懐から取り出した。


 そして、その旨を端的に綴ると、近くの者を捕まえて、連絡するように伝えた。


 これは、リーラン王国の諜報網の一端でもあった。


 軍船だけではなく、商船、そして、リーラン王国に関わる外国人までもが、その諜報を担っていた。


 そう考えると、世界最大の諜報網を持っているのも頷けた。


 だが、クラセックには別の意図もあった。


 デウェルとアラスパザは競合関係にある。


 ようやく、デウェルがアラスパザのシェアを奪い始めた段階である。


 これを加速させるために、何でもいいから、色々な要素を必要としていた。


(取り纏め役としては、切っ掛けを多く作らなくては!)

 クラセックの頭の中は、損得勘定で一杯になっていた。


 この辺が、エリオがクラセックを使う理由でもあった。


 損得勘定で動く人間程、エリオみたいな人間にしてみれば、計算しやすい。


 とは言え、今回の事は、デウェルとアラスパザの関係には、影響をほとんど及ぼさないだろう。


(ま、それでも、公爵閣下の覚えをめでたくさせるのは、とてもいい事だ!)

 クラセックは、今度は、別の損得勘定をしながら、笑みを浮かべるのだった。


 クラセックにとって、エリオは孫のような年頃だが、命を助けられていることもあって、完全に主従関係が出来ているようだ。


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