その3
西の方に、問題を抱えているのはサラサも同様だった。
とは言え、全く違う面を持っているのは言うまでもなかった。
艦隊を率いて西方に向かう案もないことはなかった。
が、そうなると、海戦はほぼ避けられないだろうという事で、検討する余地もなかった。
海戦で、シーサク艦隊を壊滅できれば、それもいいのだが、それが出来るなら、トット連盟との同盟という話にはならない。
外交交渉という名目で堂々と、トット連盟へと向かうという事も出来るのかも知れない。
ただ、この場合、不利になるシーサク王国はまず通過は許さないだろう。
それにこう言った事は、成るべく秘密裏に行いたいものである。
なので、諸々の事情を考慮すると、商人一行として、トット連盟に向かうことになったのだった。
サラサとバンデリックの乗せた商船は、4隻の船団を組むことになっていた。
その船団は、サラサ艦隊出港の翌々日に、王都キンダザゥを出港する準備をしていた。
サラサ達は最後尾の商船に乗り込んでいた。
「伯爵閣下、これ以降は、その地位に見合った待遇を致しませんので、よろしくお願いします」
中年男性がサラサにそう言った。
この中年男性は、商船の船長で、名をボーリック。
雇われて色々な積み荷を運んでいるその道のプロだった。
「分かりました、船長」
サラサは、素直にそう答えた。
サラサは男装していた。
身バレを防ぐ為の措置であるのは言うまでもなかった。
普段ドレスとか着ない軍装だったので、特に違和感がなかった。
体のラインとか、まあ、あれなんで、ちびだなぐらいの感覚だろうか?
だが、変装していても纏っている空気そのものは覆い隠せないではいた。
そんなサラサを見て、バンデリックはサラサの後ろで、しきりに首を傾げていた。
いつもとは違う格好しているので、違和感が半端ないのだろう。
バンデリックも普段と違って、商人ぽい格好をしていた。
だが、これはこれで似合う感じだったので、バンデリックの方は違和感がなかった。
表現するのは難しいのだが、特段、サラサの違和感が目立つという訳ではなかった。
まあ、バンデリックに比べてしまうと違和感はある。
その違和感を出さないように、銀髪を黒髪に染めていた。
これで少しは周りに馴染む事は出来てはいた。
しかし、バンデリックから見ると、かなり強烈な違和感を感じざるを得ない。
バンデリックは、その事を気にしていた。
そうなると、サラサの瞳の色だろうか?
ただ、赤銅色の瞳は変えることが出来ない。
こればかりは仕方がない。
それによって、言い知れない雰囲気を醸し出していたのも確かだった。
でも、バンデリックが感じている違和感はそんなものではない事は確かだった。
(なんだろう……?)
バンデリックは、結論を出せないでいた。




