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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
23.外患

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その15

「まあ、そうなんだか……」

 オーマは、呆れながら苦笑したが、同時に、安心した。


 流石、我が娘と言った所だろうか……。


 少々、親バカすぎる嫌いがある気がするが……。


 苦笑されたサラサの方が、今度はポカーンとする番だった。


「味方にするには、お前の言うとおり、盆暗では確かに困るのだが、切れすぎるのも困るのだよ」

 オーマは、分かっていないサラサに凡人の懸念を伝えた。


「まあ、そうなんでしょうが、同盟を組むので、能力があるの方がいいと思いますが……」

 サラサは、そうは言っているものの、よく分かっていない様子だった。


 この辺の考えは、エリオに似ているのかも知れない。


 合理的な考えを突き詰めれば、同じ結論が出ると考えているのだろう。


 つまり、バルディオン王国とトット連盟が同盟関係になれば、互いに利があるのは明らかだという考えなのだろう。


 遠交近攻の原則からしても同盟関係になるのは利がある。


 それに加えて、共通の敵国という点もある。


 トット連盟は、大陸に近いワイヴァバリー島を巡って、西大陸の西の端のメジョス王国と対立関係にある。


 そして、このメジョス王国は、シーサク王国とスヴィア王国との3国同盟を結んでいた。


 敵の敵になるので、お互いのメリットは大きい筈である。


 そう、合理的に考えれば、なのだが……。


 サラサもエリオもその考え方から大きく外れる事は、ほぼ皆無だった。


 ある意味、その辺がこの2人の大きな弱点とも言えた。


 なので、オーマは、時よりサラサが心配になる。


 とは言え、合理的な考えでない事を説明して、諭すという事は中々難しい。


 非合理的な考えとは、説明以前の問題で、いきなり結論が出てきてしまうからだ。


 そう、理論も理由もなく、そうなるというものである。


「ただ、老獪な人物というものは、合理的な考えと非合理的な考えを使い分ける。

 それに気を付けなくてはならない」

 オーマは、自分の意図が上手く伝わるか、ちょっと不安だった。


「うーん……」

 サラサは、案の定なのか、首を傾げてしまった。


 とは言え、反論はしなかった。


 何やら、思考している様子だった。


 どうやら、全く通じていないという訳ではなかったので、オーマは安心した。


「成る程、交渉を少しでも有利に進める為に、あらゆる手段を使ってくるという事ですか……」

 サラサは、唸るようにそう言った。


 サラサなりに、納得したようだった。


 オーマは、その様子を見て、少し呆れてしまった。


 自分の意図とは大分違うようだが、上手く行き過ぎるぐらいに、正しい結論へと導かれたようだったからだ。


「ま、そう言う事だ」

 オーマは、正しい結論が得られた事で、この事はこれ以上触れない事にした。


「畏まりました」

 サラサの方は、流石、オーマだと感じで、尊敬の目を向けてきた。


 それを見たオーマは、苦笑する他なかった。


 上手くコミュニケーションが取れているようで、微妙にずれていた。


 だが、話の流れとしては、正しいという何とも奇妙な結果をもたらしたからだ。


「ま、それより、問題なのは、トット連盟までの航路の方だな」

 オーマは、話題をもう一つの懸念に振り向けた。


「はい、仰る通りだと思います」

 サラサは、今度は、いつも通りの素直な受け答えをした。


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