その14
その後、サラサは当然ながらオーマに伴われながら、彼の執務室へと入っていった。
メンバーは、サラサ、オーマの他、バンデリック、ヘンデリック、ヤーデンの5人だった。
オーマはソファーに腰掛けると、サラサに目の前の席を勧めた。
サラサは、導かれるままそのソファーに座った。
「さてと、聞きたい事は色々あるだろうが、まずはそれを聞こうか」
オーマは、少し微笑みながらそう言った。
あまりにも優しい微笑みだったので、サラサはドキッとした。
ファザコンなので、単純にそうなったのかも知れなかった。
だが、今回は違っていた。
勿論、ときめいたのだが。
と、話がややこしくなるので、これ以上は書かない。
サラサは、直感的に自分が感じている以上に、やばい状態ではないかと認識し始めていた。
「聞きたい事とはないかと仰いましたが、特に、これと言っては……」
サラサは、何か見落としてはいないかと思いながら、不安に感じながらそう答えた。
「珍しいな。
戦況とか、もっと詳しく説明を求めてくると思ったが」
オーマは、かなり意外な表情になっていた。
「状況は、シルフィラン候の説明で大体は掴めました。
今回、あたしが派遣される理由も想像も付きますし、納得も出来ます」
サラサは、そうは言ったものの、終始探り気味だった。
「流石、我が娘と言った所か」
オーマは、唸るように、感心していた。
「御父様……」
サラサは、唖然としてしまった。
特に、見落とした点はないように感じられたので、虚脱したといった感じだった。
「お前には苦労を掛ける事となり、申し訳なく思っている」
オーマは、今度は真面目な顔つきになっていった。
「いえ、とんでも御座いません」
サラサは、珍しく恐縮した。
と言うより、父親の前だと、意外と恐縮するかも知れない。
「今回の任務は、一筋縄では行かない」
オーマは、真面目な顔つきのまま言葉を続けた。
それに、サラサは黙って頷いた。
「まあ、サラサ、お前にも分かっている事だから、今更指摘するのも何だが……。
まずは、トット連盟へ至るまでの航路だ。
敵国であるシーサク王国の海域を長い間通過しなくてはならない。
そして、交渉相手であるトット連盟の盟主ユリア・リオフリン。
老獪な人物だと聞いている」
オーマは、悩ましい問題だらけといった感じで話していた。
だが、サラサの方は、キョトンとしていた。
困難さを感じてはいたが、恐らくオーマ程ではないことは明らかだった。
周りには、サラサは胆力があると思われている。
そして、正にそれが発揮されているように、取り巻きの3人は感じていた。
とは言え、その3人の内のバンデリックだけは、やらかさないかとヒヤヒヤしている一面を持っていた。
自信があるのは結構だが、頭を抱えたくなる場面に何度かバンデリックは遭遇していたからだ。
「とは言え、その老獪な人物だからこそ、交渉する気になったのではないのですか?」
サラサは、事もなげにそう言ってのけた。
当然、この発言に、一同はポカーンとした。
と同時に、バンデリックは、頭を抱えたのだった。




