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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
23.外患

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その6

「ならば、その時間を稼ぐためにも、もう少し海からの援護はどうにかなりませんか。

 南方艦隊の動きに大きな制限を掛けているのは、殿下の威光・・と聞いていますが」

 マイラック公は、言いたくはなかったが、現状を打開するためには、言う他ないと決意した。


 援軍の見込みがないとすれば、現状の不満点を改善する他ないと考えたのだろう。


「北方艦隊が壊滅させされた現在、南方艦隊を失う訳にはいかない」

 大公は、直ぐさまそう回答した。


「そうなると、マグロッドが陥落しますが……」

 マイラック公は、大公が現実が見えていないのかと疑問に思わざるを得なかった。


「……」

 大公は、それに対しては珍しく答えなかった。


 特に気まずそうな表情をしている訳ではないが、場の空気は悪くなった。


 と同時に、マイラック公は悟ってしまった。


「マグロッドの陥落は致し方がないと?」

 マイラック公は、自分の結論が間違っていないかどうか、聞いてみた。


 直接的な質問になってしまったのは、彼の性格と言うより、のっぴきならない状況によるものだろう。


「現状を考えてほしい。

 海軍の兵力は足りない。

 陸軍の動員は遅い。

 現在は、貴公とその兵達の頑張りで何とか持っている。

 敵の兵力は更に増していく。

 このままでは、すり潰されていくだけだ。

 ここは、撤退し、態勢を整え直すべきだ」

 大公は、矢継ぎ早に撤退の結論に至った原因を説明した。


 大公は大公なりに気を遣っていたのだろう。


 撤退の方針はここに来る前に決まっていた。


 報告書から上がってくる数値を綿密に積み上げていた。


 そして、どう考えても数値的に見て、割の合わない戦いだという結論を出していた。


 だが、いきなり頭ごなしで命令しても現場は納得しないだろう。


 ならば、兵達に人気がある公爵と相談した上でという形を最低限取りたかったのだ。


 冷血漢みたいに思われているが、意外と気を遣っているのが分かる。


 と言うより、筋を通すといった方が適切かも知れない。


「殿下は、それを告げるために、わざわざ来たのですか?」

 マイラック公は、大公の説明に異を唱えなかった。


 それよりも、大公がわざわざここに来て、説明している事に呆れていた。


 とは言え、この呆れている気持ちは面談前からあったもので、改めて認識されたといった感じだった。


「軍の報告がまどろっこしく、確認しないとよく分からないからだ。

 いや、軍だけではなく、内政他、全部の報告を一々確認しないとならない。

 その為に、余計な時間が掛かり、余計な負担が増大する」

 大公は、苛ついたようにそう言った。


 尤も、普通の人の苛つきとは違い、あまり口調に変化がないようだった。


 とは言え、突然、何もかもぶっちゃけた感じだった。


 まあ、相手が従弟だからだろう。


 ちなみに、公爵の方が1ヶ月程若い。


「ふぅ……」

 マイラック公は、思わず笑いそうになった。


 笑っては失礼なので、思い止まった。


 感情を露わにするのは、いつぶりかと感慨深くも感じていた。


 従兄弟同士なので、幼い頃からの知り合いである。


「何を嬉しそうにしている……」

 大公は、ギロリとマイラック公を睨んだ。


「いえ、殿下も何かとご苦労なさっていますな」

 マイラック公は、敢えて軽口を叩いた。


「そんな事はどうでもいい。

 それより、撤退の準備をせよ」

 大公は、マイラック公の軽口に救われる気分になっていた。


「本当に撤退なさってよろしいのですか?

 敵の援軍があっても、現状の兵力を活用すれば、十分守り切れると思います。

 そして、援軍編成の動員時間ぐらいは稼げますよ」

 マイラック公は、真面目な表情に戻り、再度確認した。


 とは言え、積極的に反対しようという姿勢は見られなかった。


 後悔しませんよねという確認の意味合いが強いのだろう。


「マグロッドの外郭の城壁は突破され、市街戦になっている。

 撃退には成功しているが、それでも被害は増える一方であろう。

 確かに、貴公ならば守り切れるやも知れないが、やはり、損害が馬鹿にならない」

 大公は、いつもの調子に戻り、淡々と反論した。


「まあ、確かにそうでしょうが、都市陥落と言ったら、かなりの痛手ですよ」

 マイラック公は、大公と意見を同じにしながらも、継戦を探っているようだった。


 この辺は、生粋の軍人だからだろう。


 とは言え、手を替え品を替えをしながらも、やっぱり積極的には反対しようとしていなかった。


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