その14
リ・リラとエリオは、王族控えの間に入った。
そして、数分と待たないうちに、
「リーラン王国女王リ・リラ陛下、御入来」
と王宮の間から声が掛かった。
すると、両扉がゆっくりと開いた。
それに導かれるように歩み出す2人。
扉を通り過ぎる前から分かる熱気に包まれた会場。
あまりの事に、クラクラしているエリオだが、何とかエスコートはこなしていた。
それに比べて、リ・リラはテンションマックスといった感じだった。
当然、この雰囲気を楽しんでいた。
元々、そういった性格なのだが、今回は戴冠式以外の要素が加わっている事が大きい事は言うまでもなかった。
2人は、ひな壇中央に置かれている王座へと向かって行った。
厳かな空気の中、誰も声を上げてはいなかったが、熱気による空気の対流みたいなものが、起きているようだった。
2人は、王座に着くと、リ・リラはゆっくりと腰掛けた。
それを見届けたエリオは、玉座の右斜め後ろに控えるように立った。
2人が配置に着いたところで、場の空気が一気に静まり返った。
これは、リ・リラのカリスマ性によるものだった。
「戴冠の義」
戴冠式を取り仕切っている神祇庁長官スワリトン伯が式の開会を宣言した。
すると、リ・リラの正面の扉がゆっくりと開かれた。
無論、正面の扉とリ・リラの間には、大勢の家臣達が参列していた。
その家臣達は、ひな壇に続く道の両側に分かれていた。
その通り道を、2列になった巫女達が進んでいった。
巫女達は、片手に鈴が付いた杖を持っており、その鈴を鳴らしながら、一歩歩く毎に、杖で床を付き鳴らしながら進んでいった。
そして、巫女達がひな壇の手前まで来ると、立ち止まった。
巫女達は、リ・リラに一礼すると、通り道の端に分かれると、お互い見合うように正座した。
持っていた杖を立てたまま、お辞儀をしていた。
場の空気が清浄化されたような感じになった。
すると、それを待っていたかのように、王冠を恭しく掲げた巫女を先頭に、年長の巫女がその後に続いた。
年長の巫女と言うよりは、神官と言った方がいいかも知れない。
彼女が、法王の代理として遣わされた神官だった。
2人は厳かに、恭しくリ・リラの方へと歩み寄っていった。
2人が、ひな壇の手前で立ち止まると、先頭の巫女がリ・リラに一礼した。
そして、横に避けて跪き、王冠を掲げた。
神官は一歩前に出て、王冠の前に立つと、リ・リラに一礼した。
そして、両手で王冠を持ち上げると、恭しく掲げたまま、ひな壇を登っていった。
今度は、リ・リラが座っている手前で立ち止まった。
場の空気が緊張と共に、興奮に包まれていた。
「戴冠」
スワリトン伯がそう宣言した。
「この度はおめでとうございます」
神官は一言そう言うと、座ったままのリ・リラの頭に王冠を被せた。
被せ終わると、神官は、エリオとは逆側の左手に退いた。
戴冠したリ・リラは、ゆっくりと立ち上がった。
「わたくし、リ・リラは、第11代女王として、戴冠した事をここに宣言します」
リ・リラは、力強く宣言した。
「女王リ・リラ陛下、万歳!!」
エリオは、間髪入れずに音頭をとり、両手を挙げた。
「女王リ・リラ陛下、万歳!!」
エリオの音頭に、家臣達が続いた。
会場のボルテージは一気に最高潮に達し、短いながら充実した戴冠式は幕を閉じた。




