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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
22.戴冠式

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その6

挿絵(By みてみん)


「それにしても、海軍は羨ましい。

 一族だけで、提督を揃えられるのだから」

 ロジオール公は、更に続けて言った。


 エリオの懸念点は知る由もなかったので、本当に羨ましそうにしていた。


 再従兄であるマキオとサキオを提督、つまり、准将に昇格させた。


 そして、それぞれ父親から男爵を譲り受け、ティセル男爵、アトニント男爵となった。


 任地は、それぞれティセルとアトニント、東方第一艦隊と東方第二艦隊を任せる事になった。


 それに伴い、と言うか、まず、動かしたのは2人の父親達の方だった。


 ティセル男爵マサオは、王都に近いマライカンに任地を移し、少将に昇格。


 爵位は子爵になり、ライヒ子爵となった。


 マライカンは、クライセン公の嫡子が任地とするのが慣わしてある。


 なので、近郊の地名を名乗る事になった。


 また、ライヒ子爵は、海軍の副司令官代理としての責を負う事になった。


 アトニント男爵ササオは、北方艦隊の司令官に転属し、少将に昇格。


 爵位は子爵になり、アスウェル子爵となった。


 アスウェル男爵リンクは、ホルディム家の根拠地であるアリーフへと転属になった。


 ただし、アリーフは反乱軍に最も関わった土地として、都市名をルオーラに変更。


 ルオーラ子爵として、リンクは西方艦隊司令官に就任した。


 ちなみに、エリオは、中将から大将へと昇進し、名実ともに全軍の総指揮を執る事となった。


 ここで、一度まとめておかないと筆者が分からなくなるので、書いたのは内緒である。


「まあ、今回は無理矢理昇格させながら何とかなりましたが、次回はありませんよ」

 エリオは、いつものやれやれと言った感じで、ロジオール公に答えた。


「なあに、貴公はこれからいくらでも人材を増やす事が出来るではないか」

 ロジオール公は、再びニヤリとした。


「はぁ……」

 エリオは、鈍いので何を言っているのか、本当に分からないと言った様子だった。


 その様子の中、2人の会話に加われないヤルスが目に入った。


「まあ、それはともかくとして、ヘーネス公が出てきてくれたお陰で、これでやっと話が進みそうですね」

 エリオは、万事承知といった感じに言ったが、実際の所、やはりよく分かってないなかった。


 とは言え、話を進めなくてはならないので、そういう風に言った。


「はい?」

 話を急に振られた格好になったヤルスは、面を喰らっていた。


「ヘーネス公、貴公が籠もっていたお陰で、人事の内定は出てはいたが、公式には進められなかったのだよ」

 ロジオール公は、これまでの経緯を端的に説明した。


「それは、ご迷惑をおかけいたしました」

 ヤルスは、その端的な説明で全てを悟ったようだった。


 流石に、頭の回転はよい人物だった。


 ヤルスの爵位が定まった後、爵位が下の者の人事が進められる。


 貴族社会は、順番が大事なのである。


 今回は大規模な人事異動であり、3公爵家の一角が含まれているので、順番を無視する事は出来なかった。


「そう言う事ですので、陛下の戴冠式の準備の方の引き継ぎをお願いします」

 エリオは、ヤルスに早速仕事を振った。


 エリオの性格から言うと、仕事を押しつけたように見える。


 だが、これは、本来、内政の長であるヘーネス公の仕事である。


 そう見えてしまうのは、日頃の行いのせいだろう。


「承知しました」

 ヤルスは、特に感情もなくそう言った。


 いつもの冷静な口調とは違っており、まだ本調子といった感じではなかった。


 まあ、色々あったので仕方がない所だ。


「戴冠式の日程は予定通りで?」

 ロジオール公が、エリオに質問してきた。


「はい、予定通り、来月に確定しました」

 エリオは、そう答えた。


 戴冠式は、その国で行われる。


 その際に、教会が法王の代理人を派遣し、神々の名の下に戴冠が行われる。


 その為、教会との日程調整が必要だった。


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