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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
22.戴冠式

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その4

「あなたは、軍事的才幹は突出していますが、それ以外が本当に残念ですね」

 ラ・ラミは、呆れた表情のままそう言った。


「わたくしもそう思います」

 ラ・ミミも、呆れた表情のままそう続いた。


「はぁ……」

 エリオは、なんと答えていいのか分からないと言った表情になった。


「根回しですよ。

 こう言った事は、いきなり陛下に相談するものではない事は、貴公もお分かりでしょう」

 ラ・ラミは、まだ呆れた表情のままそう続けた。


「根回しをしている事は分かるのですが……?」

 エリオは、歯切れの悪い口調と表情だった。


「まずは自覚をしっかりと持つ事ですね」

 ラ・ラミは、堪らず溜息交じりに言った。


「はぁ……」

 エリオは、釣られるように溜息をついた。


 その様子を見て、2人はこれ以上呆れる事が出来るのかと言った表情になった。


「クライセン公エリオ!

 シャキッとしなさい」

 ラ・ミミが、エリオに活を入れた。


 ラ・ミミもまたラ・ライレの娘だと言う事が分かる事象だった。


 エリオは、驚いてシャキッとなった。


「今回の反乱鎮圧を主導したのは貴公です。

 ですから、貴公が名実ともに国を引っ張っていかなくてはなりません」

 ラ・ミミは、有無を言わせない口調で続けた。


「しかし……」

 エリオは、何とか反論をしようとした。


 性格上、反論したくなるのだろう。


 まあ、謙遜とかならいいのだが、その理由は、あまり褒められたものではない。


「歳は理由になりません」

 ラ・ミミは、ピシャリとエリオの反論を封じた。


 隣のラ・ラミも頷いていた。


 ヘーネス公の事もあるので、言いにくい事を妹が代弁してくれたと言った感じだった。


「あ……」

 エリオは、それでもまだ反論を繰り広げようとした。


「ロジオール公は実直そのもの。

 根回しの相談相手としては、まず選ばれないでしょう。

 相談内容が高度であればある程、貴公が引き受けないといけません。

 貴公は、その地位に就いているのですから」

 ラ・ミミは、一言すら、反論を許さないと言った口調だった。


 そして、それを完璧に実行していた。


 思えば、ラ・ラミとラ・ミミは、エリオの父サリオの従姉である。


 ああいう性格だったので、姉としての教育が何度も入ったのは言うまでもなかった。


 エリオも、それを少なからず目撃していた。


 その矛先が、巡り巡って自分に向かっているようで、理不尽に感じられた。


 そう、ここでもサリオの尻拭いをさせられている気分になったのだった。


 被害者意識も甚だしい。


「いいですね!」

 ラ・ミミは、エリオが理不尽さを噛み締める前に、先手を打つかのように、確認してきた。


 と言うより、確認ではなく、決定事項だということだろう。


「……」

 エリオは、呆然となる他なかった。


 完全に理で上回られたからだ。


 理論的に考えるエリオなので、理で追い詰められると、降参する他なかった。


「わたくしも姉上と共に、出家しようとしました」

 ラ・ミミの口調が急に変わり、しみじみとした感じになった。


「いっ!」

 エリオは、今度は絶句して、青くなった。


「道理が通らないと、姉上に止められました」

 ラ・ミミは、しみじみとした感じを受け継ぎながらそう続けた。


「ふぅ……」

 エリオは、安堵した。


 エリオには珍しく、表情がコロコロと変わった。


 まあ、この状況で、無表情でいられる程、エリオは人間が出来ていなかったし、これからもそうはならないだろう。


「お互い、地位に相応しい責任を果たしましょう」

 ラ・ミミは、優しくエリオに語り掛けてきた。


 エリオは、ラ・ミミを見て、そして、ラ・ラミを見た。


 2人共、清々しい表情になっていた。


(どうやら、これを覆す手段はないようだな……)

 エリオは、諦めたようだった。


 性格上、そう言う言葉にはなるが、どちらかと言うと、決断した事になる。


「両殿下のご高配、痛み入ります。

 ご意向に沿うように、取り計らうつもりです」

 エリオは、2人の意見を全面的に取り入れる事にした。


 武力のみで反乱を鎮圧するのは意外に難しい。


 こうやって王族も配慮を見せたという形にしてくれると、後々の憂いがほぼ無くなる。


 そう考えると、有り難い申し出でもあった。


(とは言え、これで、また人材が……)

 エリオは、頭を抱えたくなった。


「苦労を掛けますが、よろしくお願いします」

 ラ・ラミは、エリオにそう労いの言葉を掛けた。


「そうですね。

 貴公なら大丈夫だと思いますが、よろしくお願いします」

 ラ・ミミも、エリオに労いの言葉を掛けた。


「恐縮です」

 エリオは、そう答えると、席を立った。


「それでは、私はこれにて」

 エリオは、そう言うと、一礼をして、踵を返して、部屋を後にしようとした。


「あ、言い忘れていましたが、王配としての義務もきちんと果たしてくださいね」

 ラ・ラミが、打って変わって、朗らかな口調で出て行こうとしているエリオにそう声を掛けた。


「えっ?」

 エリオは、驚いて振り向くと、2人の満面の笑顔がそこにあった。


 その笑顔は王族のものではなく、お節介焼きの親戚のおばさんの笑顔だった。


 ま、それがエリオが2人を苦手とする理由でもあった。


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