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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻  作者: 妄子《もうす》
22.戴冠式

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102/173

その2

「……」

「……」

 ラ・ラミとラ・ミミは、エリオの言葉に互いに不安そうに顔を見合わせた。


 ただ、2人は、元々助命するつもりはなかった。


 事は、王国存亡に関わる事である。


 妥協は許されないのはよく承知していたからだ。


「既に首謀者は全員捕らえ、処刑しました。

 実行犯も粗方捕らえ、残りは探索中です」

 エリオは、淡々と語っていた。


 結構恐ろしい事を実行したのだが、淡々ぶりからその恐ろしさを更に際立たせていた。


 そして、淡々ぶりから察しのとおり、これは全てエリオの名の下で行っていた。


「……」

「……」

 ラ・ラミとラ・ミミは、無言でじっとエリオの言う事を聞いていた。


「ホルディム家は断絶、関わった貴族も同様な沙汰を下しております」

 エリオは、更に続けた。


 ただ、こちらの場合は、リ・リラの裁可が必要なので、許可を貰った上で行った。


 女王の盾としての役割を果たしていると言える。


 ただ、リ・リラが女王でなくとも、汚れ役は進んで引き受けただろう。


「ヘーネス公を始め、殉死者には陛下からは厚く遇するように沙汰を受けております。

 また、今回の功労者にも厚く遇するとのお言葉を賜っております」

 エリオは、最後にそう続けた。


「ふぅ……」

「ふぅ……」

 ラ・ラミとラ・ミミは、エリオの最後の言葉を聞いて、同時に、安堵の溜息が自然に出た。


「陛下には感謝の言葉しかありません。

 クライセン公、あなたもいろいろと動いてくれたのでしょう」

 ラ・ラミは、エリオにそう言ってきた。


「私は何もしていませんが……」

 エリオは言葉を濁すようにそう言った。


 恐縮していったのではなく、殉死者達への配慮は、リ・リラ自身が決めたもので、本当に何もやっていなかったからだ。


 ただ、その様子を見た2人は、エリオを好ましく思っていた事は間違いが無かった。


 エリオは、ちょっと居心地が悪くなった。


 と言うより、最初から居心地が悪かったので、更にと言った感じだろう。


「ただ心配なのは、ヤルス殿が未だに自主的に謹慎を続けている事です」

 エリオは、話題を切り替える為に、ヤルスの事を話題にした。


 とは言え、これは本当に困っている点で有り、ここに来ると決まった時から2人に相談する案件であった。


「あの子らしいですね……」

 ラ・ラミは、微笑んでいるのか、悩んでいるのか、微妙な表情になっていた。


 反乱が始まって以来、ラ・ラミ・ヤルス親子は連絡を取っていないようだ。


 下手に連絡を取って、疑念の種を増やさない為だろう。


 なので、状況を知らないでいた。


「今回の反乱鎮圧に功もあり、ヘーネス公爵位の継承も陛下からお許しが出ています。

 謹慎する理由がないのですが、私では面会すら適わないでいます」

 エリオは、珍しく本当に困った表情でそう言った。


「……」

 ラ・ラミは、エリオの言葉を聞いて、ホッとしたような表情を浮かべていたが、無言だった。


 ヘーネス家の存続が適った事で、安心したのだろう。


 だが、それ以上に、我が子の思いを汲み取ると、すぐには出てくる言葉がなかった。


「姉上、この件はこのまま捨て置くには行かないでしょう」

 ラ・ミミが、助け船を出してくれた。


「!!!」

 ラ・ラミは、母親の顔から王族の顔へと変わった。


「ヤルスの心情はともかく、これ以上、陛下にご迷惑をお掛けする訳には参りません」

 ラ・ミミは、透かさず畳み掛けるように言った。


「!!!」

 ラ・ラミは、確認するかのようにエリオの方を見た。


「はい、既に国政に支障が出ています。

 マルス殿を失っただけではなく、ヤルス殿までいないとなると……。

 このままでは、国が傾きかねません」

 エリオは、ラ・ミミに同調するように言った。


「そうですか……」

 ラ・ラミは、ようやく口を開いた。


 だが、その後の言葉はすぐには出てこなかった。


 しばらく、考え込んでいた。


 エリオとラ・ミミの視線が集中したのは言うまでもなかった。


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