届かぬ声に願いを込めて
アリアを追いかけ次々に木々を倒していくアクア。辺りを一通り倒し終えると、視界も広くなり、少しずつアリアの姿も見えだすと、アクアが出す魔術が段々と当たりはじめた
「ちょっと疲れた……」
使えそうな薬草を拾ったり木に隠れつつ逃げたりし続け、ほんの少し休めそうな所がないか辺りを見渡し走っていると、突然見慣れた風景が現れ足を止めた
「えっ、ここって……」
よくミオと魔術対戦をしていた公園が現れ戸惑い、ゆっくりと歩きながら辺りを見渡す。いつもはたくさんの人が集まる公園に誰一人居らず、静かな風景を歩いていると、ドンッと大きな物音が聞こえアリアのすぐ側にあった建物が崩れ落ちた
「やっと見つけた……」
アリアを見失い、村を迷っていたアリアが疲れた顔でやって来た。息を切らしつつ、術を唱えはじめるアクアを見てアリアがまた走り出した。無造作に建物を壊していくアクアから逃げていると、アリアとミオの家が見えた
「あれ、ミオだ……」
ミオの家を見ると一人、自室の片付けをしていたミオの姿が見えた。声をかけようと家に近づいた時、すぐ後ろまで来ていたアクアが、ふぅ。と一つ息を整え、炎の魔術を唱えはじめた
「ちょっと待って!」
アリアが気づいた時には、アクアの周りに炎が現れ、木々や草花を燃やされていた。今度は水の魔術を唱え、燃やした木々や草花が、ヒラヒラと地面に舞い落ちる。その間にも近づく水を見て、アリアがドンドンと家の窓を叩いた
「ミオ、気づいて!」
何度も声をかけても、ミオがアリアに気づくことなく大量の水がすぐ側まで来ていた。慌てて逃げると、あっという間にミオの家は水に溢れた
「ミオ、大丈夫?」
アクアがすぐに術を解き、家に一杯に溢れていた水が無くなると、アリアが家の中に入ると、水が入り流れた時に当たった家具で体に傷が出来、ぐった りしているミオを見つけた。慌てて体を触り、容態を見るアリアをアクアがクスクスと笑って後ろから声をかけた
「これくらい、お姉ちゃんが得意な薬草で治せるでしょ?結局は薬草なんて、傷を治すくらいしか使い道ないんだから」
「確かに、調合した薬が治せるけれど……」
ミオの家の中を見渡して薬草やアリアが調合した薬が置いてあるか探してみるが、すぐには見当たらずどうしようかと悩みつつ、まだぐったりして動かないミオを見た
「あれ、どこ行くの?」
「私の家。私を倒すのはミオの傷を治してからにして」
アリアがミオをおんぶしようとしていると、アクアがフフッと笑って問いかけると、アリアが少し起こった声で返事をした
「ああ、あのつまんない家?でも、引っ越すって聞いたから、あの家には薬草なんてないでしょ?」
「そうだった……。ほとんど調合した物は新しいお家に運んでもらったんだった」
アクアの言葉を聞いて、家に行こうとしていた足を止めたアリア。少し頭を下げまたどうしようかと悩んでいると、耳元から微かにミオの吐息が聞こえてきた
「あれ、どこに行くの?今度は二人で逃げるの?」
再び歩きだし、玄関の方へと向かうアリアにアクアが声をかけると、アリアがゆっくりと玄関の扉を開けながらアクアの方に振り向き、今度はアリアがフフッと笑った
「そうだね。ミオのためにも早くあなたから逃げないといけないね」




