思い出を書き留めて
「この部屋でゆっくり過ごしてくださいね」
アクアが眠る寝室の反対側にある一室に案内されたアリア。家政婦が扉を開け招き入れると、アリアの家の寝室の倍はある部屋に戸惑い恐る恐る中に入る。とても大きいベットや大きな机にたくさん本が入った本棚と、見慣れぬ景色に更に戸惑っていると、アリア達を追いかけてきたクリアが、ふぅ。と大きく深呼吸をしてアリアの側に来て声をかけた
「あの……」
クリアが思っていたよりも小声で声をかけると、窓を開け外を見ていたアリアがクリアの声に驚いて、ガタガタと窓を揺らした。窓から落ちると思った家政婦達が慌てて駆け寄り、クリアも驚きつつも、またアリアに声をかける
「何か必要なものはある?ご飯何が好きかしら?何か本か何か読む?アクアので良ければ、まだまだ本がたくさん……」
「クリア様、落ち着いて……」
あと話せる嬉しさから矢継ぎ早に話しかけるクリアに、家政婦ぎ声をかけると、少し我に返ったクリアが返事が出来ず困った顔をしているアリアに気づいてペコリと頭を下げた
「あっ……。ごめんなさいね」
「いえ、私こそ返事をしないでごめんなさい」
アリアもペコリと頭を下げて謝ると、クリアがパタパタと足音をたてながら部屋を出ていった。その後ろ姿を家政婦達が困った顔をして見届け、アリアは首をかしげ見ていると、バタンと勢いよく部屋の扉が閉ざされた
「では、アリア様。ゆっくりおやすみなさいませ」
今度は家政婦達がペコリと頭を下げ部屋を出た。「一人だ、どうしよう」
部屋に残されたアリアが部屋の中をキョロキョロと見渡し、とりあえずベッドに勢いよく倒れた。家にある布団よりも、ふかふかな布団に負けて目を閉じスヤスヤと眠ってしまった
「記録がまだ残っていたか」
その頃、アリアとアクアが出会った場所に戻ってきたユーノが魔術で二人の行動を呼び戻していた。アリアが楽しそうに薬草を拾う姿を見た後、すぐ側に音もなくアクアが現れ、アリアに話しかけた。二人の行動を一通り見終えた後、術を唱え二人の姿を消すと、辺りにある木々を見渡しはじめた
「アリアの魔力ともアクアとも違うな。一体……」
ユーノが一人呟くと、突然ユーノの前に稽古場に隠していたはずの一冊の本が現れバラバラと勢いよくページがめくられていく。ユーノがその様子を見ていると、先ほどユーノが魔術で呼び出し見ていた魔術を使うアクアや戸惑うアリアの姿が現れ、出会った時の行動がまた再現されていく。その間も本はバラバラとページが開いては閉じてを繰り返す。ユーノが現れ二人の動きを止めた術をかけた時、本はバタンと勢いよく閉じ、ゆっくりと姿を消した。それを見て、ユーノが困ったようにため息をついた
「運命は変えないという強い意志か。アリアとアクアには頑張ってもらわないと……」




