一日を振り返って
「あれ？出られない……」
お城から出ようと部屋から庭に移動してきたアクア。空を飛んで出掛けようと何度も術を唱えてみても術が発動せず、少し不機嫌になりつつもぎゅっと両手に杖を持ち、また術を唱えはじめると、足元に小さな魔方陣が現れた
「アクア、何をしているんだい？」
突然、後ろから声をかけられ驚きつつ術を中断して、振り向くとユーノが勝手に出掛けようとしているアクアを見て少し困った顔をしていた
「えーっと、少し風に当たりたくて、それで……」
「もう暗くなるからお散歩はダメだよ。クリアもみんな心配するよ」
「はい、ごめんなさい……」
ユーノに注意されてしょんぼりとうつ向き謝ると、お城の中からバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた
「アクア様、どこにいるのですか？」
寝ていたはずのアクアを起こしに来た家政婦が居ないことに気づいて慌てふためいていた。あまりにも騒がしいその様子にアクアが顔を引きつらせる。それを見てユーノがフフッと笑った
「探しているね、そろそろ戻ろうか」
ユーノの言葉にまたゆっくりと頷くと、少し空を見上げ名残惜しそうにお城の中に入った
「アリア、まだ調合するの？少しは休まない？」
その頃のアリアの家では、校外学習から帰ってきてからずっと部屋に籠るアリアにミオが声をかけていた。声に気づいたアリアがミオを見た後、窓を見て、いつの間にか真っ暗になっていたことに気づいて、ちょっと驚いた顔でまたミオの方に振り向いた
「あれ？だいぶ時間が経ってる？」
「そうだよ。もうすぐでご飯出来るけど、まだ休憩できない？」
「ううん、ちょうど切りの良いところだから、出来立て食べる」
返事をしながら薬草や本で散らかった机を片付けはじめたアリア。ミオもご飯の用意のためキッチンへと向かう。しばらくして、片付けを終えたアリアがリビングに行くと、テーブルに夕御飯がたくさん置かれていた
「美味しい。ミオが作ったの？」
ご飯を食べはじめてすぐ見慣れない美味しいおかずにアリアが聞くと、
「ううん、校外学習の時に買ってきたんだよ」
「えー、いつの間に」
「アリアが薬草のお店の人と楽しそうに話している間にね」
「そうだったんだ。ごめんね。気づかなくて」
と、楽しく話しているとコンコンと玄関の扉を叩く音が聞こえた。アリアが食べるのを止めて玄関の扉を開けると、お城の警備の女性達が数名立っていた
「アリアさん、こんばんは」
「こんばんは、今日はなんですか？」
ニコッと微笑みながら挨拶をされてアリアも微笑み返事をすると、ミオも少し頭を下げて挨拶をした時
「付近の見回りしていたら、開いてた窓からお二人の楽しそうな声が聞こえてきたので訪ねてみました。お二人、何か変化はありませんか？」
「はい、二人とも変わらずです」
「魔力とか魔術も変わりないですか？」
「はい、私は相変わらず使えないし」
「私もせっかくアクア様の杖を買ってみたのに変わりません」
はぁ。とため息混じりにミオが言うと、アリアや警備の女性達がフフッと笑い、持っていた紙に色々書きはじめ、一通り書き終えるとアリアとミオの顔を見てにこりと微笑んだ
「変わりないのであれば良かったです。では何かあればご連絡くださいね」
